第5話

そうは思うけれど、よく考える。



死体を前にして、本当にその人はそこに居るのだろうか?と。



その日もそう思っていた。

口には出さないけれど、空っぽのご遺体を前にして誰もが正座し。



なんの疑問もなく手を合わせているのかと思うとゾッとする。



もぬけの殻である人だったモノに、何故涙なんか流せるのかわからなくなる。



大切な人を失う悲しみは壮絶だと、小説にだって描かれてはいるけれど。



実際のところ、それはもう隣に居ないことへの悲しみであって。



思い出が鮮明に蘇るからのものであって。

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