【コトノハなごや落選作品×2】『アディショナル・タイム』『矢印』

くいな/しがてら

写真A『アディショナル・タイム』

 ここを抜けたら、おしまい。

 口に出さずとも、それが共通認識であることは明白だった。

 あと一分ほどだろうか。出口が見通せる。白い光が、大きくなる。

 言い出しっぺは誰だったか。最後に、だとか心残りが無いように、といった言葉を無理に飲み込んだ気持ち悪さを仲良く共有したことは確かだった。

「グルメばっかで観光地がないなんて揶揄される名古屋に、今更俺らが見るものも無いだろ」とヒロが耐え切れず茶化したのは覚えている。

 終わりは少しずつ近づいてくるものではなく、初めからそこにじっと待っていて、僕たちこそが抗いようもなくそこへ向かわされるだけである‥‥‥なんて、浸った言葉は口に出さない。

 昔の面影を残す商店街を置き去りに、僕らはついに十字路に出た。摩天楼が、車両の群れが、現れた。

 示し合わせた訳でもなく、そこで僕らは一斉に足を止めた。これ以上進んだら、いよいよ戻れないとでも言うように。

「こんなものか」「まあ、良かったよ。ハンバーグ美味しかった」「道は三択だな。どうするよ、カラオケ?」「それもなんか違うだろ」「あのさ」

 気づけば口を開いていた。

「ボルダリング、やってみたいんだけど」

「うっそ、そんな施設あった?」「あったよ」「うわ見逃してた」「俺も気になってた」「三択じゃなくて四択だったな」

 早く言えよ、とは誰も言わなかった。

 終わりは初めからそこにじっと待っていて、僕たちは抗いようもなくそこへ向かわされるけれど。

 拍手喝采のゴールに背を向けて、切ったばかりの真っ白のゴールテープの間を悠々と逆走し、僕らは在って無いようなどうでもいい時間を引き延ばす。

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