夜明け前、世界
せなみあお
プロローグ
現実か、夢か。分からないまま目を開ける。夜明け前。何時かも分からないけれど、直感的にそう思う。
『夜明け前がいちばん、暗いんだよ。』
誰かから聞いたその言葉が、ずっと頭の中をぐるぐるとしている。世界ごとまわるみたいに、ふわふわとした感覚に陥る。そこでいつも、私は目を開ける。きっと、ここは現実だ。
誰かに呼ばれた気がして、体を起こそうと力を入れる。けれど自分の腕では耐えきれないほどに体が重く感じて、そのまま布団に倒れ込む。
「まお、起きなさい。学校は?」
やっぱり、呼ばれていたみたいだ。お母さんの声が、扉の向こうからする。届くか届かないかくらいの声量でなんとか、声を絞り出す。
「いけない、」
届いたのか届かなかったのか分からないけれどお母さんの気配が部屋の前から無くなった。きっと、学校に休みの連絡を入れに行ったのだろう。学校に行けなくなってから、何日経っただろう。
私の世界は、真っ暗だ。北も南も分からない。ずっとずっと、夜明け前みたいだ。
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