大人のデート(?)
「その……この後どうする?」
「どうしよ。この辺だと水族館とかが近いかな。魚好き?」
「まあ、そこそこかしら。」
「わかった。それじゃ行こっか。」
僕は遥の手を引いて水族館へと向かった。
水族館受付にて。僕らはチケットを購入する。
「学生二人で。」
「お二人はカップルですか?カップルの場合、料金が2割引となるのですが……」
「僕らはカ……」「カップルです。」
僕が否定をする前に遥が言い切る。
「でしたら、カップルである証明が必要になるのですが……」
「えっと、それは……大丈夫?遥。」
「大丈夫よ。少し両手を広げてくれるかしら。」
「うん。いいけど。」
僕が腕を広げた瞬間、遥が僕に飛び込んでくる。紫色の塊が思い切りぶつかって来た。
「ちょ、ちょっと遥⁉︎」
「これでいいかしら?」
「ありがとうございました。それではどうぞ。」
チケットを渡された。遥は真顔に戻ってチケットを受け取ると、「さ、行くわよ」と僕の手を引く。あんまり動揺してないんだ。慣れてるのかな。
僕の手を引く遥の後ろ姿を見れば、耳が赤く染まっていた。
水族館に入ってしばらく見て回った後、少し広めの水槽があるところに着く。看板を見ればどうやら深海の水槽らしい。
「あ、クラゲ……」
丁度その時間はイルカショーをやるとかで人が一気に減っていた。
「海野、ちょっといいかしら?」
遥は3歩前に歩いた後、こちらを振り向く。部屋の暗さと照明によって、紫色の髪が良く映えていた。
「どうしたの?」
「その……私のことなんだけど……私は冒険者を辞めようと思う。」
突然だ。だが無理もない。それほど遥は今まで大きな責任を負い続けて来たのだ。
「いいんじゃない?まあ今まで頑張ってたんだし。あれは高校生が負うべき責任でもないし。」
「やめるなーとか言わないの?」
「というか、子供を最強とか囃し立てて色々責任負わせてるこの社会に問題がある。遥は誰よりも頑張ってたんだ。もう肩の荷を下ろしてもいいと思うよ。」
「でも……」
「まあ、最後の判断は遥に任せるよ。遥の人生だからね。もし遥が辞めるならもう一度僕に言って。」
「うん……」
ぶっちゃけ言って、僕はまだ子供。僕の言葉がちゃんと合っているのか、そもそも、遥に寄り添えているのか。わからない。それでも、
「最後には、僕がどうにかするから。」
僕は師匠が示してくれた、自分が正しいと思う事をいう。
「わかった……」
「それじゃ、この話は終わり。この後、ペンギンでも見に行かない?」
僕はわざと声のトーンをあげて遥にそう言った。
夜9時。鍛冶屋に行くと、そこにはなんかかっこいい感じの黒い日本刀が一本置かれていた。柄の部分には赤い刺繍が入っており、持ち手も黒、刀身も黒、鞘も黒。全体的に黒く統一されている。
だが、その黒色はどこか夜空を感じさせるような紫色が少し混じっているような感じがした。
僕はそれを少し振ってみる。身体にいい感じに馴染むのを感じた。
「どう……かしら。」
「すっごい!振りやすい!こんなの初めて持ったわ!流石遥が紹介してくれた人だ!」
「もっと褒めて!結構頑張ったんだから!遥ちゃんがなんか君の身長体重だののデータ持って来たり、自分の髪……モゴッ」
遥は店員さんの口を手で塞いだ。
「それ以上は……メッよ?」
異常な遥の圧に店員さんは顔を青くしながらコクコクと頷く。
そういえば、遥の髪が少し短いような……
「そういえば遥、髪切った?」
「あ、そ、そうね。うん。」
どこか曖昧というかぎくしゃくした返事。
そういえば刀から心なしかいい匂いがする気も……
「海野⁉︎ちょ、何刀の匂い嗅いでるの?」
「なんかいい匂いするなって。なんだろ。この匂い、まるで遥の……」
「さ、もう帰るわよ!」
「ありがとうございましたー!」
僕が言い終わるよりも先に、遥は顔を真っ赤にしながら僕の手を引き、店から去ろうとする。
「ちなみにいい匂いって感じる異性とは遺伝子的に相性がいいらしいよー!」
「うるさい!バカ!」
店員さんの言葉に半ばキレながら遥は僕の手を引くのだった。
その頃、『トート』。
『トート』は、一部逃しておいた肉片から再生していた。
「それにしても、ここまでやられるとは……まあ、第一目標は達成できたからいいか。神々達からはもう死んだって思われただろうし、ここからは好きに動ける。」
『トート』は完全に再生すると、魔法で服を作り、それを着て歩き出す。
「メジェド様は復活させてはいけない。そのためには……」
「弟子達に頑張って貰わないと。『予知夢』は上手く起動したかな……」
人物紹介
メジェド
『打ち倒す者』
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