最強

『トート』は手に魔法陣を展開し、遥に向ける。

遥は『トート』を睨みつける。

『トート』の手から魔法が放たれようとするその時だった。

何か蛇の様なものが当たり、『トート』の右手が切られる。

『トート』が何事とそちらに目を向けた瞬間、『トート』の顔面に蹴りが当たり、『トート』の首が飛ぶ。

蹴りを入れた人物は遥を安全な場所に運び、床に寝かせた。


「遥、大丈夫?」


その声はいつもの海野の温かみのある声。あまり緊張感のない声に一瞬、遥の力が抜ける。


「だ、大丈夫……それより……」


「安心して。君たちのことは、」


海野は立ち上がると、『トート』の方へと向き直る。

海野は手から『フラジェルム』捨て、拳銃を一丁、懐から取り出す。

無音の空間にカチャッという無機質な音が響く。

そして吐き捨てるように、いつもよりも一段低い声で、


「僕が守る。」


海野は余分な息を吐き、足に力を貯める。


「遥に手出した覚悟、出来てるよな?」


その人物は左手に拳銃を握っており、スーツを着ている男。顔は普段の温厚な笑顔が消え、無表情になっていた。

『トート』は本能的な恐怖を感じた。

海野は『トート』が反応するよりも速く距離を詰め、腹に右腕で突きを入れた。

突きは『トート』の斥力バリアを貫通し、『トート』の腹を貫く。

そして『トート』が回復を始めた瞬間、左手で首元に二発発砲。さらに、銃身で顔を思い切り殴る。


「確か心臓を潰せばいいんだっけ?」


更に左胸に五発発砲してから、右腕で心臓の辺りに一発。突きが入った。

『トート』の身体が重力に逆らう事をやめた。

海野は銃弾を再装填して、動かなくなった『トート』に七発発砲。

これが『二代目最強』海野源が生まれた瞬間であった。



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