影の一族と呼ばれる一家の令嬢ですがこの度、女嫌いの粗暴令息と婚約する事となりました
斎之 灰
序章
第1話
「はい……?婚約、ですか?」
口をポカンと開けたままシャルロットはその場に立ち尽くした。『婚約』それは、シャルロットが十九年間ずっと見て見ぬフリをしてきた貴族令嬢の責務であった。
そんなシャルロットの様子に父、ハリスもまた悲痛な面持ちで頷いた。
「相手はラフレシア侯爵家のご子息だそうだ」
「だそうだって……お父様がお決めになったことではないのですか??」
「いや、国王からのお達しだ」
「そんな……」
王命ともなれば、婚約を考え直すことは位の高い公爵家ならまだしもシャルロットの生家である辺境の伯爵家では到底不可能であった。
「このお話はお相手の家にも伝わっていますよね?」
「あぁ、それが婚約を前向きに検討しているそうで」
「そ、そんな」
婚約がほぼ確定している現状にシャルロットの顔はみるみる青ざめてゆく。
本来の貴族であれば位の高い家へと輿入れする事は誰もが望む喜ばしいことであるのだが、この辺境伯爵家の血筋の者は皆内気な性格をしていることもあり、貴族らしい付き合いが苦手であった。
王都の社交界は基本的に欠席、領地の改革、開拓に勤しみ領地から出ることは早々なく、魔術及び呪術の研究に明け暮れる。そんな暮らしをしていた。
そのためかシャルロットの一族は呪術の家系とあることもあり『影の一族』と、社交界では呼ばれている。
「いいかいシャルロット、王都の貴族はそれはそれは怖くてマナーにも厳しい……心して準備をしておくように」
「は、はいお父様」
取り敢えず両家の顔合わせの日程はまだ決まってはいないとの事であった。
シャルロットは侯爵家の婚約者としての立ち居振る舞いを身につけるべく、花嫁教育を受ける事となった。
――それから一ヶ月後。
父のハリスから侯爵家から手紙が来たと知らされた。
「両家の顔合わせがしたいとの事らしい。また婚約についての経緯も説明したいと……ふむ、」
「顔合わせ、ということはあちらの家で行うのでしょうか」
「恐らくそうだろうな」
ハリスとシャルロットがやつれた表情をしているのに対して、ハリスの傍にいた夫人、シャルロットの母であるマーガレットは嬉しそうに頬を染めさせていた。
マーガレットは我が家では珍しい正反対な気質の持ち主で、シャルロットの婚約が決まってからというもの王都の流行やら恋愛小説やら毎日聞かされている。
流行や恋愛というものとは縁遠かったシャルロットからしてみれば新鮮な反面よく分からなかった。
「王都に行くのなら針子を呼びましょうか。折角ですし新品のドレスを何着か仕立てましょうね。勿論貴方の分も♡」
「う……っま、まぁその辺はマーガレットの方が詳しいだろうから今回も任せるよ」
上機嫌な様子で早速部屋を出て行ってしまったマーガレットにほっと息をつきながら、シャルロットは婚約者となる人物を思い浮かべた。
( 王都の人間ということは綺麗な人なのかしら……厳しかったり怖い人だったらどうしましょう…… )
普通の常識的な人がいい。シャルロットはそう強く願うのであった。
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