『怪獣 ジセーのクー』 中の1


 海岸沿いを、秘書を連れてお散歩している、とある議員さんがいた。


 『きみなあ。立身出世は、世の習いだ。立身出世なくして、正しい政治などできない。まずは、立身出世が一番。』


 『はっ。せんせ。がんばります。』


 『よっしゃよっしゃよっしゃ。』


 すると、ぱり!、とスーツを着た、やたら黒い影の人物が近寄ってきて、言った。


 『こんばんは。良い夜でしな。』


 秘書は、緊張したが、議員さんは、たじろぎもしない。


 『いかにも。良い夜ですな。では。』


 議員さんは通過しようとした。


 すると、その、人物が、真っ赤なながい舌を付き出して、まずは、秘書を昏倒させた。


 『な、な、なんと。』


 と、老年期の政治家が、さすがに驚いた瞬間に、その舌が、身体に巻き付いてきた。


 『く、く、く。や、や、や、』


 『失礼します。わらしは、時空間を旅しながら、その地その時のご飯を、必要なだけいただきながら、ささやかに生きてきております。名を、クー、と申します。あなたが、大将とみました。ぜひ、辞世の句をひとつ、聴かせてください。気に入ったら、こちらの方は、お助けいたします。あなたは、食べますが。気に入らなければ、おふたりとも、いただきます。では、どうぞ。制限時間は、60秒れす。』


 『わ、わ、わ、なんだかよくわからんが、わ、わ、わ、くるし。わかったわかった。 


 〽️タラリラー~ ‘’立身出世がこのよのすべてぞ。われ、政治に命を捧げんかな、もちづきのごと。‘’』


 『ふん。ちまらないな。却下。では、いただきます。』



  🙅🙅🙅🙅🙅🙅🙅🙅



 その30分後、すでに食いかねて、身投げしようかと悩みながら歩いてきた、この作者は、再び、その黒い影と、赤い舌を見た!


 『はい。わらしは、時空間を旅しながら生きる、クー。辞世の句をひとつ、聴かせてください。気に入ったら、助けましょう。気に入らなければ、食べます。はい。制限時間は60秒れす。』


 『なんと? これは、やはり、天恵か? もはや、これまでよ。


〽️ タラリラー ‘’ジセーのクも

   セージのクも

    おわってみれば

     ただの、くよ。

      なげくにもあらず

       秋の浜辺かな。』



 『おー、いや、なんかよくわからないが、へたくそだけど、いいね。味がある。みのがすから、立ち去りなはれ。』


 早い話し、さっき、二人も食べたから、クーは、お腹がふとっていたのではないかと、思われた。


 作者は、ただ、運が良かったのである。



     🚚ウン,ソウ











 

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