15日目3 防衛マシーン

「木本町居住区で市民が襲われています! 敵性鳥人2ないし3!」


「全員を屋内に避難させろ! 市民自警団CT各隊で鳥を追い払え! 空に上げれば撃てるぞ! 記念通り方面はパトカーPT1を回せ!」



 熊野市街地南東区画の路地を駆け巡る自衛隊高機動車。


 後部座席の石井三曹が操作する無線機にはひっきりなしに悲痛な救援要請が届き、笠松が指示を出せば青山二曹が右に左にハンドルを切る。


 その平時の交通法規を完全度外視した掟破りの市内ドリフト走行は、高機動車が走り去った後に焦げた臭いと白煙だけを残していた。



「いたぞ!」


「了解!」


 路地を曲がるとそこには、市民自警団に追い払われて低空に遊弋していた飛行モンスターの姿があった。


 それを見た瞬間に青山二曹がさらに大きくハンドルを切って車体をスピンさせ、片輪が浮き上がった自衛隊高機動車に搭載されたタイプABの両タレットが最適な射界を得て一斉に火を噴いた。


 タタタタタタタン!

 ダダダダッ!



「キー!?」


「ギャー!!」


「よし、次だ! 哨戒報告!」


「は、はひっ…! し、自警団CT各隊、状況報告せよ!」



 青山二曹の猛烈なドライビングで目を回した石井三曹であったが、それでもズレた眼鏡を直しながら必死に無線機にかじりついた。



 こうして笠松たちは必死に走り回りながらモンスター掃討にあたっているが、被害報告はなおもあとを絶たない。


 熊野市市街地に生存圏を構築したこのコミュニティにおいて、防衛線から奥まった位置にあり従来非戦闘員の居住区としていた区域が、今や防衛ラインを飛び越えて飛来する怪鳥の脅威に晒されているのだ。


 正午の脳内アナウンスで新モンスターの出現は予告されていたものの、防衛ラインの警戒を高めていた笠松らを嘲笑あざわらうかのように頭上を飛び越え市民を襲う怪鳥どもに、自衛隊と警官からなる熊野市暫定防衛戦隊は全員がほぞむ思いでいた。


 特に全体の防衛指揮を執る笠松の胸には、メラメラと燃え盛る炎が揺らめいている。


 …周辺では最も防衛態勢が整った熊野市を目指して、家族の無事生存のために命からがら避難してきた多数の避難民たち。


 出迎える笠松の手を取って涙を流す家族も多くあった…その避難民たちが、今まさに怪鳥に襲われ血を流していることに、笠松の全身から激怒の炎が立ち昇っているのだ。



「撃ち落とせ! 撃ち落とせ! 撃ち落とせぇええ!」



口角泡を飛ばしながら叫ぶ笠松、その熱狂する指揮ぶりにつられて青山二曹のドライビングもますます加速していく…と、その時。



「な…!? もう一度報告せよ! 正確に!」



 後部座席から石井三曹の慌てた声が聴こえてきた。


 …その瞬間、逆に笠松の心は急速に冷静を取り戻していく。

 

 これは良くない報告だろうな。

 激昂している場合じゃあないぞ。


 落ち着け…俺は防衛機械マシーンだ。


 最大効率を作り出す機械マシーンに…一人でも多く救う機械マシーンになるんだ。



「報告! 南西病院前ラインが新規の敵性飛行体を視認! 数30以上!」


「30だって!? ふざけるな!」



 石井三曹が告げる絶望的な報告に思わず運転席の青山二曹が振り返って怒鳴るが、笠松はその肩にそっと手を置き、なだめるように穏やかな声で語りかける。



「…青山、こいつは長期戦だ。安全運転で行こうや」



 そのあまりにも落ち着いた声色に驚いた青山二曹が笠松を見上げるが、やがてその表情に込められた覚悟を察して何も言えない。


 …たかが10匹未満の数の怪鳥が飛来しただけでこの有様なのだから、今後は市民にも自警団にも死傷者が多く出ることは免れないだろう。


 もちろんその事実は青山二曹の激情を刺激するが、しかしイチイチ興奮していては持つまい。


 そして指揮官である笠松がその全てを引き受け、自らの責任とすることを静かに…しかし有無を言わさぬ強い決意を表情にたたえているのだ。



「…了解」



 笠松の手を通して伝わった覚悟が、徐々に青山二曹の内面世界をも静かな炎で埋め尽くしていく。


 血みどろの激戦になるだろうが…任務を果たすしかない。

 一人でも多く護るしかないのだ。



「続報! 救援のAPCピラーニャが南西ゲートから入りました! PT2の先導でこちらに向かっています!」


「「 救援だと!? 」」



 静まりかけていた二人が急に激昂して石井三曹の報告に喰いつく。



「ひっ! 二人とも落ち着いてください! 青山さん、前見て! 前見て運転してください!!」



 一瞬緩みかけた高機動車のアクセルが再び強く踏み込まれて、乱暴にアスファルトを切りつけるタイヤがもうもうと白煙を上げるのだった。












 …いやぁ、なんとかなったか。


 ソファーにどっかりと腰を下ろした俺は、目まぐるしかった午後の攻防戦の気疲れを癒すためにまぶたを閉じて眼球を指で揉んでいた。



「アハッ、やだ~誠一せーいちおじいちゃんみた~い。孫娘がお肩揉んであげるね ♪ 」



 そんな俺の様子を茶化す孫娘ギャルがソファーの後ろから両肩を揉んでくるが、実際これがとても気持ちいいので俺も歳をとったらしいな…


 いや、歳のせいとだけも言えまい。


 なにしろ、正午からの新怪物モンスターー…掲示板ではさっそく「邪鳥ハーピー」と命名された飛行モンスターの襲来は実に面倒だった。


 この拠点の設備に直接被害があったのは、災害発生以来初めてではなかろうか?


 まあ、太陽光パネルをほとんど全て割られてしまったが、ガス燃料による発動機を稼働させることで電力には全く問題がないし、拠点陥落の危機というわけでは全く無かったのだが。


 そして、銃身がひしゃげてしまったタレットも仕方ないので消してスキルポイントに回収している。


 これは再配置に半日ほどの制約があるだけで復活可能なので、実質的な被害はやはりパネル類だけだろう。


 ちなみに、あれだけバキバキに壊されると現状の『修理』スキルでは対処できそうにないが、討伐ポイントが腐る程あまっているので新規に購入することも可能である。


 でもまあ、また壊されてもしゃくなのでこれを機に屋上スペースはタレット専用にしてしまおうか。


 と言うわけで、大慌てした割にはこちらの被害は軽微であったと評価して問題あるまい。



 あの後、防空分隊を急行させたダミー車庫ガレージでも屋上の太陽光パネルが全損状態だったが、いち早く俺がPC間通話で幸人氏に「自力防衛を諦めて一切外に出ない」ように指示したので、人的な被害は無かったのはよかった。


 穂積一家が住むダミー拠点はコチラと電気系統がつながっているので、今後はコチラのガス発動機で穂積一家の生活電力も賄っていこう。


 …というか、この山中にはまだまだ無傷の発電設備とダミー車庫ガレージのネットワークが多数張り巡らされているし、それらは完全に無人なので怪物モンスターどもの標的にならないから、電力周りは元から心配するにはあたらないのだ。



 一方で、熊野市生存者コミュニティの方では複数人の死傷者が出てしまったようだ。


 防空分隊を急行させてみるとすぐに目が血走った笠松二等陸尉に出迎えられてビビったが、居住区の交差点ごとにタレットウォーカーを降ろして対空警戒させることでその後の被害拡大は抑えられたと思う。


 …まあまあ、よくやったと考えておこうか。



 ちなみに、穂積家の防衛部隊も半数のタレットウォーカーで十分と判断した俺は、残りの半数を乗せて2台目のタレットAPCも熊野市に配備している。


 熊野市の生存者コミュニティでは邪鳥ハーピーによる居住区被害も深刻だったが、タレット搭載の高機動車やパトカーが市内の掃討に回ったせいで、特に南西病院側の防衛ラインが脆弱化していたからな。


 そちらもタレットAPCを2台並べて重機関銃ブローニングの掃射を行い、小鬼ゴブリン戦士鬼ホブゴブリンも、豚鬼オークすらも微塵に引き裂くことで完全に安定化させておいたぞ。


 これで熊野市に投入する戦力が一気に倍増どころでなく増えたわけだが…まあ、スキルポイントの心配はない。


 毎日の怪物掃討で使い切れないほどレベルも上昇しているし、なにより本日の過去最大襲来によってまた劇的にレベルが上昇しているからな。



 …そして、まあ。

 ある種の問題と言うか…なんというか。


 ともかく、これを見て欲しい。



─────────────────────

甍部誠一いらかべせいいち

討伐Lv131

討伐ポイント 249872


《コモンスキル》

棒術26

┗硬質化

┗乱れ突き 《NEW》

射撃23

┗再装填

┗強装弾

操縦23

┗自動操縦

┗精密操作 《NEW》


《レアスキル》

修理11

DIY14


《ユニークスキル》

タレット107

自動オートモード

┗タイプBタレット

┗タイプCタレット

┗タイプDタレット 《NEW》

直接照準ダイレクトサイト

┗タレットドローン

┗タレットウォーカー

┗タレットAPC

┗タレットSPAAG 《NEW》 ←注目!!

掲示板64

┗分析AI

┗ライブストリーム

┗スキル連動

─────────────────────



 …あのさぁ。


 自走対空砲SPAAGくんはさ…キミが不在の間に行われた本日の激しい防空戦闘について、それが終わってからノコノコ現れたことについてさ、なにか言うべきことはないのかな…?


 そういうあからさまに対空防御向けのスキル派生は、今日の午前中の時点で出しておいてくれないかな…?



 そしていざ拠点屋上に新型のタイプDタレットを設置してみると、それはもう…本日のドタバタ騒ぎが馬鹿らしくなるくらいの対空性能だったぞ(呆れ)



 まあそのへんの様子は明日以降説明しようか、今日はもう疲れたぜ。



「…ん」



 肩揉みに飽きたのかソファーの前方に回り込んで俺の膝の上に腰を降ろした孫娘ギャルに、俺は感謝の意味を込めてお返しの揉み揉みを行う。



「やだ…スケベおじいちゃん…w」



 …孫娘ギャルは気持ちよくしてくれたからな。

 お返しに俺も…



「あっ…ヤダ、おじいちゃん、エッチ。…あっ」





 その後は、孫娘ギャルのけしからん発育を隅々まで確かめることに俺は夢中になってしまうのだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る