終末世界に備えるプレッパーがデスゲームで本領発揮する物語! 〜タレット設置のユニークスキルを添えて〜
左兵衛佐
第1話 デスゲーム開幕
熊野市内のスーパーで日用品と生鮮品の買い出しを終えた俺は、4ドアピックアップトラックの後部座席にそれらを積み込むと運転席に座り、タバコを咥えてジッポライターを擦る。
…ライターオイルの香りが染み付いたこの一口目が、一番旨い。
さて、市内での補給も済んだことだし、これでまた10日くらいは拠点に籠もれるな。
俺はピックアップトラックを走らせ奈良県方面へと北上する。
熊野市内を抜けるとあっという間に、周囲は木々が生い茂る山深い光景へと変化していった。
うーん、さすがは豊かな自然が魅力(婉曲表現)の国立公園地域だぜ、マジでちょっと車を走らせるだけで道路以外は人間の活動の様子が消え去っていく。
まあ、こういうところだからこそ、俺の拠点を置くのに相応しいんだけどな。
さて、ここでさっきから言っている『拠点』について説明しようか。
俺はまあ、いわゆるプレッパーである。
いわゆると言われても、日本ではあんまり馴染みのある言葉では無いだろうが…プレッパーとは要するに、世界規模の破滅的災害やその他の終末現象に備えて自宅を要塞化する趣味の人種のことで、これの本場は何と言ってもアメリカやスイスだろう。
アメリカ型のプレッパーは核戦争や内戦に備えるタイプが主流派らしいが、俺は日本の環境も鑑みて核終末・自然災害シナリオの混合型拠点を構築しているぞ。
だから、今年でまだ30でしか無い若者(重要)の俺が、親父から相続した財産のほぼ全てを投入して構築した拠点は、耐爆扉を備えた地上構造物の地下に生活空間を…いや、詳しい話は拠点に到着してから説明しようか。
ともかく、親父の遺産のうちいくつかの駐車場やマンションと言った現金収入源からのアガリを使って、こうしてたまに買い物をしては生活の大部分を拠点で一人過ごす日々なのである。
…いや、分かるよ。
ちょっと頭のネジがアレなのは自分でも自覚しているところだからな。
でもこれが、一度始めてしまうともう戻れない深い沼と言うか…
まあ、ともかく俺は面倒な人付き合いもない山中奥深くの拠点で、これと言って何をするでもなく時間を過ごしては、ありもしない核戦争や大噴火、はたまた巨大隕石の到来に備えているんだ。
客観的に見たら頭のアレな世捨て人に見えるだろうし、強く否定するつもりもない。
こういう暮らしに至った経緯も説明しようと思えば出来るが、それをすると大して面白くもない俺の半生についてダラダラと語ることに…えっ!?
『正午になりました。サバイバル一日目を開始します』
突然、頭の中に直接響くような無機質なアナウンスが聴こえて、俺は思わずハンドルを握る手を離して両耳を抑えてしまう。
そして、視界に飛び込む小柄な人影
マズい…!!
俺がブレーキペダルを思い切り踏み込んだのは、しかし車体が人影を撥ね上げた直後だった。
…やってしまった。
ついに本当に頭がおかしくなってしまったらしい俺は、自分一人が破滅するだけならまだしも、他人に取り返しのつかない被害を…
いや、ともかく救命措置だ。
時速60km/hでまともに撥ねられた被害者が存命する確率は高くないだろうが、それでも俺の責任を果たさなくてはなるまい。
そのあとに、罪を償う中で俺の頭を少しでもマトモにする時間を持とう。
数十mの制動距離でやっと停止したピックアップトラックのサイドブレーキを引くと、俺は運転席の扉を開いて後方へと駆け出す。
被害者の様子は…遠目にも無残に手脚がひしゃげていて、これはダメだろうな。
その身体からは
…この、緑色の体液を撒き散らしている小鬼のような怪物は、なんだ…?
てっきり人間を轢いてしまったかと思ったのだが、こりゃあ…んがっ!?
奇妙な怪物の死体の前で立ち尽くす俺の脳内に、またあの無機質なアナウンスが、それも立て続けに響き渡る。
『討伐ポイントを獲得しました』
『初回討伐によりコモンスキルを獲得します』
『全体100000位以内の討伐速度ボーナスにより追加コモンスキルを獲得します』
『全体10000位以内の討伐速度ボーナスにより追加コモンスキルを獲得します』
『全体1000位以内の討伐速度ボーナスによりレアスキルを獲得します』
『全体100位以内の討伐速度ボーナスにより追加レアスキルを獲得します』
『全体10位以内の討伐速度ボーナスによりユニークスキルを獲得します』
『全体1位の討伐速度ボーナスにより追加ユニークスキルを獲得します』
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討伐Lv1
討伐ポイント 1Pt
《コモンスキル》
棒術1
射撃1
操縦1
《レアスキル》
修理1
DIY1
《ユニークスキル》
タレット1
掲示板1
─────────────────────
…なるほど、これはあれだな。
さてはデスゲーム型災害だな?
俺が終末環境での生存を目指すプレッパーであることは既に述べたが、プレッパーの中には多数のゾンビが人類を襲うゾンビ災害に対して、大真面目に対策するタイプなんかもいるのだ。
俺はもっと現実よりの災害対策を重視するタイプではあるが、それでも世界中のプレッパーたちの考えや対策アイデアを紹介するネット記事はよく見ているし、このタイプのプレッパーからもいくつかのアイデアは仕入れている。
そして、各国のプレッパーたちもまたお国柄と言うか文化の影響を受けるわけで、このサブカルチャー全盛の日本ではデスゲーム型災害…すなわち、超常的な存在によって仕組まれたモンスターが
…俺の数少ない交流相手(と言ってもネット上限定だが)である、彼らサブカルプレッパーたちはこの状況にうまく対処出来ているだろうか?
どうやら、先のアナウンスを聴くに俺はゲーム開始と同時にブッチギリのスタートダッシュを偶然キメたらしいが…
ともかく、このタイプの災害ならば周囲には他にもモンスターが
一刻も早く拠点に帰還しなくては…!
俺はこの終末世界に対して、思う存分
プレッパー魂に火のついた俺は、謎の興奮に包まれながらアスファルトを走っていた。
…まったく意味のないことだと、自分でもどこかで自嘲してもいた俺の終末対策が、まさかまさか陽の目を見る時が来たんだ。
災害に晒される人類全体のことを考えれば不謹慎極まりない事なのだが…しかし、これを興奮せずには居られようか。
再びピックアップトラックのもとまで駆け戻った俺は、ここで明らかに人間の物と判別できる悲鳴を耳に捉えていた。
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