第37話 真実の炎

非常事態宣言が民衆の怒りをさらに煽る結果となり、全国の抗議運動は完全にピークに達していた。支配者たちは事態を制御する術を失い、強硬派と穏健派の対立は組織全体を崩壊寸前に追い込んでいた。その中で、せりちゃんたちは最後の一撃となる配信を計画していた。


穏健派からの最後の提案


穏健派の一人からせりちゃんに極秘の連絡が入った。それは、強硬派の計画と非常事態宣言を撤回するための交渉を持ちかける内容だった。


「我々は強硬派の行動をこれ以上支持することはできない。非常事態宣言を撤回する代わりに、運動を平和的に終結させる方法を模索したい。」


せりちゃんはその申し出に対し、一瞬考え込んだ。そして、静かに答えた。


「私たちは真実を求めているだけです。それを犠牲にした妥協はできません。もしあなたたちが本当に変わるつもりなら、非常事態宣言を撤回し、支配者たちの不正をすべて明らかにしてください。それが条件です。」


穏健派はその言葉に動揺を見せながらも、退路がないことを理解していた。


「検討する時間をください。」彼らはそう言い残し、連絡を断った。


配信の準備


影の住人とフェニックスは、穏健派の動きを見守る一方で、支配者たちの嘘を完全に崩壊させるための最後の配信の準備を進めていた。


「今回の配信は、これまでで最も重要だ。」影の住人が冷静に言った。「彼らの体制を完全に崩すために、全ての証拠を一度に公開する。」


フェニックスもまた、内部からの最新情報を提供し、非常事態宣言がいかに不正なものであったかを証明する新たな資料を追加した。


「彼らが最後に何を仕掛けてきても、私たちが先手を打てるはずだ。」フェニックスの声には確信があった。


配信開始


その夜、せりちゃんの配信が始まると、これまでにない視聴者数が集まり、コメント欄には「真実を見届けます」「最後まで信じています」というメッセージが溢れた。


画面越しに映るせりちゃんは、静かながらも力強い声で語り始めた。


「皆さん、今夜は私たちが求めてきた真実をすべてお伝えします。これが、非常事態宣言の裏に隠された全貌です。そして、支配者たちがどれほど私たちを欺き続けてきたかを明らかにします。」


彼女は、フェニックスが提供した資料を順に説明しながら、支配者たちが非常事態宣言を利用して自分たちの権力を守るために民衆を犠牲にしていた事実を暴露した。


画面には、強硬派が内部で計画していた抑圧策や、穏健派との対立の詳細が映し出され、視聴者たちはその衝撃的な内容に目を見張った。


民衆の反応


配信が進むにつれて、SNS上では「#真実の炎」「#偽りの非常事態」が急速に広まり、視聴者たちの間で怒りと希望が同時に燃え上がった。


「これが私たちを抑え込もうとした彼らのやり方か!」「もう黙っていられない!」という声が全国から寄せられ、抗議運動はさらに活発化した。


街頭では「非常事態宣言の撤回を求める!」「真実を隠すな!」という声が響き渡り、抗議の規模はこれまで以上に大きくなっていった。


支配者たちの最期の足掻き


強硬派は配信を妨害しようと最後の手段を講じたが、影の住人がすでにすべての対策を講じていたため、彼らの攻撃は無力化された。


「これ以上は持たない…」強硬派のリーダーは崩れ落ちるように椅子に座り込んだ。


穏健派はその瞬間を見計らい、強硬派を組織から排除する動きを開始した。そして、非常事態宣言の撤回を提案するための準備を進めていた。


配信の終わりに


配信の最後に、せりちゃんは視聴者に向けて静かに語りかけた。


「皆さん、これが私たちが求め続けてきた真実です。支配者たちの偽りの支配を終わらせるのは、あなたたち一人ひとりの声です。どうか、最後まで諦めないでください。私たちには、未来を変える力があります。」


コメント欄には「せりちゃん、ありがとう!」「最後まで戦います!」という言葉が溢れ、視聴者たちの決意が画面越しに伝わってきた。


新たな光


配信が終わったその夜、全国でさらに大規模な抗議活動が行われ、支配者たちはもはや抗う術を失いつつあった。民衆の力が一つとなり、真実を求める声は国中に響き渡っていた。


せりちゃんは月を見上げながら静かに呟いた。


「月夜の光を信じて…」


真実を求めるその声が、偽りの支配を終わらせる新たな未来への扉を開けようとしていた。

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