第32話 非常事態の夜

強硬派が非常事態宣言を準備しているとの情報が広まる中、せりちゃんたちは緊張の中で動き続けていた。民衆の声は各地で高まりを見せ、支配者たちに対する抗議は全国的な運動へと発展していた。穏健派もまた、強硬派の動きを内部から食い止めようと試みていたが、結果はまだ見えていなかった。


宣言の発表


ついにその時が訪れた。政府が非常事態宣言を正式に発表したのだ。


「この国の平和と秩序を守るために、非常事態を宣言します。」強硬派の代表がテレビに映り、冷徹な表情で語った。「暴力的な行為を助長する動きや、国家の安定を脅かす行為を徹底的に取り締まる。」


この発表は瞬く間に全国に広がり、動揺と恐怖を呼び起こした。しかし、その一方で、この宣言が支配者たちの弱さを露呈したものだと考える者も多かった。


民衆の反応


SNS上では「#非常事態宣言反対」の声が爆発的に増え、街頭では宣言に反対する人々が集まっていた。地域リーダーたちは宣言を受けてすぐに民衆を励まし、抗議行動を平和的に続けるよう呼びかけた。


「彼らが非常事態を宣言したということは、私たちが勝ちつつある証拠だ!」あるリーダーが語った。「私たちは平和を保ちながら、声を上げ続ける。これが彼らの嘘を完全に暴く鍵だ!」


せりちゃんの配信


非常事態宣言が発表された直後、せりちゃんは緊急配信を開始した。画面越しに映る彼女の表情は決然としていた。


「皆さん、支配者たちが非常事態を宣言しました。しかし、私たちは恐れる必要はありません。彼らはこの運動を抑え込むために必死です。なぜなら、私たちの声が彼らの支配を揺るがしているからです。」


コメント欄には「私たちは負けない」「平和的に声を上げ続けます」という言葉が溢れ、民衆の結束が感じられた。


さらに、せりちゃんは穏健派から得た内部情報を公開し、非常事態宣言が計画的なものであり、民衆を抑え込むための策略であることを証明した。


「彼らが言う非常事態とは、私たちが真実を求める声を封じるための口実です。私たちはこれに屈しません。どうか、冷静に、そして力強く行動を続けてください。」


運動の新たな波


その配信をきっかけに、民衆の間では「#真実のための抵抗」という新たなハッシュタグが広まり、抗議の声がさらに強まった。SNSでは非常事態宣言の矛盾や支配者たちの不正が次々と暴かれ、民衆の支持はさらに高まっていった。


集会の参加者も急増し、抗議は平和的ながらも力強い形で全国的に広がっていった。


穏健派の行動


一方、穏健派は非常事態宣言が国際的な批判を呼び、支配者たち全体の信用を失う可能性があることを察知し、強硬派に対する反対を強めていた。彼らはせりちゃんたちとの対話を再開する道を模索しつつ、強硬派の策を内部から崩そうとしていた。


「この非常事態は我々全体を危険にさらしている。」穏健派の一人が声を上げた。「強硬派を止めなければ、全てが崩壊する。」


最後の準備


秘密基地で、せりちゃんと仲間たちは次の一手を議論していた。影の住人は非常事態宣言を無力化するためのデータ収集を続け、フェニックスは穏健派との接触を再び試みていた。


「私たちができることは、真実を伝え続けることだけだ。」せりちゃんは静かに語った。「非常事態宣言を逆手に取り、彼らの矛盾をすべて暴き出す。」


仲間たちは彼女の言葉に頷き、それぞれの役割を確認した。彼らにとって、これが最大の試練であることは間違いなかった。


月夜の光を信じて


非常事態宣言の夜、せりちゃんは配信の最後にこう語った。


「私たちは、この偽りの非常事態を乗り越えます。真実を求める私たちの声は止まりません。月夜の光を信じて、一緒に進んでいきましょう。」


視聴者たちのコメント欄には希望と決意の言葉が溢れた。


その夜、運動はさらに大きなうねりとなり、偽りの支配を揺るがす最後の戦いへと向かっていた。

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