第8話 疑惑の種を蒔く
せりちゃんは、仲間たちとの作戦会議で決めた通り、視聴者に少しずつ疑惑を抱かせるための配信を準備していた。視聴者に急激な事実を突きつけるのではなく、彼らが自ら疑問を持つように誘導することが、せりちゃんたちの狙いだった。
その夜、配信が始まると、せりちゃんは柔らかいが力強い声で語りかけた。
「皆さん、私たちは日常生活の中で“これはおかしい”と感じることがありませんか?例えば、どこに使われているのかわからない税金や、私たちの暮らしの向上にどうつながっているのか不明な政策。そうした疑問が少しでもあるなら、私たちは声を上げるべきだと思います。」
せりちゃんは、具体的な事実には触れずに、視聴者が感じる違和感や不安を丁寧に言葉にしていった。その言葉は、視聴者一人ひとりの心に静かに響き、彼らの中に眠っていた疑問の種を蒔いていった。
コメント欄には「確かに最近、納得いかないことが多い」「何か裏がありそう」といった反応が次々に表示され、せりちゃんはその反応に微かな手応えを感じた。
「私たち一人ひとりの疑問が、やがて大きな声となり、変化を生むかもしれません。だから、皆さんもどうか、自分の目で周りを見て、自分の頭で考えてみてください。そして、おかしいと感じることがあれば、私と一緒に声を上げましょう。」
せりちゃんの言葉は、人々に「気づき」を促す力を持っていた。視聴者たちはただ聞くだけでなく、彼女の言葉をきっかけに自分たちの生活を見つめ直し始めていた。その変化を感じ取ったせりちゃんは、仲間たちと共に進んでいることを再確認した。
その夜、せりちゃんの配信は多くの人々にシェアされ、「支配者たちの真実に目を向けよう」というメッセージが徐々に広がりを見せ始めた。匿名であっても、彼女の声は確かに人々の間で共鳴していたのだ。
配信を終えた後、せりちゃんは画面を見つめて微笑んだ。彼女はすでに一人ではなく、多くの仲間が自分の背後に立っていることを感じていた。そして、支配者たちに揺さぶりをかけるための最初のステップが確実に進んでいることを実感していた。
その夜の空には、次第に大きくなる反抗の火が静かに燃え始めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます