第12話 やべー奴

時刻は昼過ぎ、六時には帰ってこいと言われている、場所は聖都の数ある大通りの一つ、

帰る場所はわかるがどうやって帰るかは分からない、簡単に言うとまずい状況である。


どうにかして帰らないといけないが、どうやってここに来たかは覚えていない


色々考えて閃いたのが、

「とりあえず走って見覚えがあるところを見つけよう作戦」だ。

これはサクスムでも使った、迷子になった時の解決策だ、運が良ければ侯爵令嬢を助けることが出来る。


走りながら聖都の街並みを見る、やはり都市の至るところに人がいて、なおかつ清潔だ、白い家屋には綻びがないし、街灯は均一に並んでいる。


(美しい都市だ)


と思いながら走っていると鉄格子が見える、明らかに見た事のない場所だ


俺は宿屋とは逆向きに走っていたみたいだ


(ん?)


鉄格子向こうから異臭がする、汚物のような何かの匂い


近ずいて見るととそこには沢山のボロ小屋があった、白い都市とは対称的にそこは薄暗く、汚く、黒かった


不均一に並んだ街灯とも呼べないような松明、木製の小屋が密集している


よく周りを見ればさっきまで沢山いた人がいない


全員ここ避けているのだ


「貴様、ここで何をしている」


「あっ、実は迷子になってしまって」


衛兵のような人に呼び止められる


「迷子?貴様ここの住民じゃなのか?」


こことは、おそらく聖都のことだろう


「はい、オストレートの方から来ました」


「そうか、宿屋の名前はなんだ、道を教えてやろう」


優しい人だったようだ


「太陽の盃という場所です」


「そうか、それなら——


親切な衛兵さんは道を丁寧に教えてくれた


「ありがとうございます!」


「どういたしまして、それとここにはあまり近ずかない方がいい、お前の場合脱走したスラムの住民だと思われかねない」


服装を指して言われた、何か悪いのだろうか?


「わかりました!さようならー」


今日はいい収穫があった、甘味処の注文方法に、刺激のありそうな場所の情報まで


———


何とか宿に着き、自分の部屋に入る


「おかえり!アレク今回はちゃんと帰ってこれたのね!」


エストレア様直々のお出迎えだ、どうしたのだろう、淑女が男の部屋に入った訳を聞きたい


「ただいまです、エストレア様、本日はどうして俺の部屋に?」


「貴方が帰ってくるか心配で待っていたのよ、ついでに探検の成果も聞きに来たわ」


「そういう事ですか」


「ではっ」と甘味処での出来事だったり、街にあった様々な店のことだったりを話す


エストレア様はとても楽しそうだった


———


翌日、一日自由にしていいとのことなので、俺はスラムに来ていた


辺りには、聖都とは打って変わって貧相な体と服をした人が寝転がっている、生きているのか死んでいるのかも分からない


漂う匂いに鼻をつまんで歩くと、まるでおかしな人を見るような目で見られる


スラムは思ったより平穏としていた、こういう雰囲気の場所だからもっと喧嘩とか起きるのかと思っていたら、全然なかった


これでは刺激不足だ


「おい、そこの坊や」


坊や?マントを被った黒髪ロング黒目の女がこちらを指さしている、年齢は40歳ぐらいだろうか


「お前、剣士か?」


「そうですが?」


「私と勝負しないか、私も剣士だ」


女が自分の剣を見せる、良く手入れされていることが分かる良い剣だ


それにしても、勝負か俺としちゃあ万々歳だが

殺してしまうかもれない


「いいですが、間違って殺すかもしれませんよ?」


「ハッ!できるもんならやってみろ」


そう言うと、女は剣を構えた


つられて俺も剣を構える


「あ!?貴様入魔剣をどこで覚えた!」


びっくりして、気を抜いたところで女に胸倉を掴まれる


「それは!!私の物だぞ!」


??何を言っているんだこの人?


「いや!これは師匠に教わったもので、」


「そいつの名は?」


ガン開きになった瞼から、充血した目が見える、正直めっちゃ怖い


「フィリップでス」


そういうと女は手を離した、そして叫んだ


「あいつぅ!!私の剣術を勝手に広めやがってぇ!!!!!!」


そして倒れた、お腹が鳴っている


「腹が減って倒れた?」


とりあえず放っておくのもなんなので、宿屋に連れて帰ることにする



———


宿屋に変な女を、連れて帰るとたいそう驚かれた


「アレク、その女はなんですか?」


一番驚いていたエストレア様が真剣な表情で聞いてくる


「喧嘩を売ってきたチンピラです、なんか俺の剣術を知っているみたいなんで連れ帰ってきました」


「まさか殺したんですか?」


今度は一番驚いていないアルフレッドさんが、聞いてくる


「なんか腹減って倒れました、飯作ってやってくれません?」


「簡単なスープを作ります」


アルフレッドさんが動く、やはり有能執事は違うな


「で、アレクそれはどこから連れてきたんですか?」


「スラムっていう場所です」


「スラムっことは、、異教徒!?」


「えぇ?」


どうやら、スラムはエウリア様以外の神を信仰する者を閉じ込める為にある場所らしい


あれ、俺もエウリア教徒じゃないぞ?

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