第7話 初めての大都市

剣士アレクは、辺境伯令嬢であるエストレア・ゼノスからしてみれば全てが未知であった


彼の全てに初めて見る「何か」があった。


例えば剣術、

剣術を使う剣士を幾人も見たことがあるが、

アレクが使う「入魔剣」はその全てと違った、彼らは木を切れないし、アーマードボアなんてもってのほかだ、あれで未完成というのだから恐ろしい


他にもアレクには今までに見たことがない「何か」がある、全て語ると一日はかかるだろう


でも、、


「でも貴方がこんな人だとは思いませんでした!」


アレクは一日迷子になった


昨日散々宿の位置を言ったのに、忘れたのだ


「私がどれほど心配したか!」


せっかくの優秀な駒が何か事件に巻き込まれたのかと思って、夜も眠れなかった


「すいません、、」


「それとお嬢様、実は、、」


優秀な執事であるアルフレッドが口を開く

—————


エストレアが俺のしたことを聞いて顔面蒼白になっている


少し、大規模な賊に喧嘩を売っただけなのに、、、、少し?


やばい、確かにやばい、アルフレッドさんに話した時はそんなに驚かれなかったから感覚が麻痺していたが、やばい


アルフレッドさんが、俺には聞こえない程度にエストレア様に耳打ちする


エストレアの顔に血の気が戻るそして、何か閃いたような顔になった


「分かりました、つまりアレクは人攫いをしていた賊からクイントさんを救ったのですね?」


「はい」


俺が救った人はクイントと言うらしい、まるで顔見知りかのような言い方だ


「我が騎士アレクよ!よくやりました!貴方はゼノスの騎士に相応しい行動をしました!

後の事は私たちに任せてください!」


明らかに、俺を褒める状況ではないのは俺でも分かる、

俺が喧嘩を売ったのはここら一帯を支配している、面子を重視するタイプの賊なのだ


正義の行動とはいえ、俺を見捨てることも視野に入るレベルだ


「あ、あの、エストレアさん、お久しぶりです」


俺が助けた女の子が、部屋に入ってくる


(知り合いだったのか)


「えぇ、お久しぶりです、クイント・サクスム様」


ん?サクスム?

あれ、もしかして俺助けたの、ここの領主の娘?


「今回は、どうなされたのですか?侯爵令嬢が

人攫いに会うなんて」


「それが、今サクスムはかの賊、クロッカスファミリーと争っていまして。」


それで攫われたわけか


「それはそれは、今サクスムは大変なのですね、」


「は、はい!それで、その、、、、」


サクスムの令嬢が俺やアルフレッドをチラチラと見る

そしてはっきりと言った


「サクスムを助けてくれませんか!」


—————


迷子になったアレクが、人助けをしたしかも、侯爵令嬢ときた


(これは使える、サクスム家に恩を売れる!)


やはりアレクは使える駒だ、

意図したことかは知らないがこんな美味しい話を持ってきてくれるなんて!


それにサクスム家から救援を要請してくるなんて!

これはもう神が、さらに恩を売れと言っているよなものだ!


「もちろんです、クイント様、我がゼノス家の精鋭が必ずやサクスム家の力となりましょう」


目的地に到着するのは遅れるだろうが、

それを差し引いても余るぐらいの利益がこれにはある!


「ありがとうございます!エストレアさん!」


「はい、それで詳しい情報を話してくれませんか?私の騎士を動かすにも情報が必要ですし」


「は、はい」


クイントは恐らく、政治に疎いのだろう、

今まで会話をしてわかった、この子はアレクと同じタイプだ、

他人の悪意に疎い、ずくに騙される人間だ


(だから攫われるんだろうな)


クイントの話を整理すると、こういうことがわかった


一つ、クロッカスファミリーはこの辺を縄張りにしている賊で、構成員は大体200から300ほど


(うちの騎士団の大体半分くらいか)


二つ、クロッカスファミリーとの争いが最近始まったこと


(争いは最近始まったのか、確かにそれなら私が知らなくても無理はない)


三つ、クロッカスファミリーのゲリラ戦術で騎士団に対抗していて、騎士団は殲滅に苦労しているとの事


四つ、クイントが都市内だからと油断して攫われそうになったこと


四つ目はどうでもいいが、それ以外は有益な情報だった


(この条件下で我が精鋭がどうやって侯爵家に恩を売るか、考えなければ)


前線に参加は、、、、論外だな、不必要な犠牲が増えるだけだ


父上に援軍を要請は、、、確かにいいが到着する頃には戦いが終わっている可能性がある、だが要請しただけでも、侯爵家に恩は売れるだろう

最後の手段だな


やはり、私が今使える駒は全員戦いにおいて精鋭だが(アレクを除く)如何せん数が少ない、ここはやはり、どうやるかは置いといて、ボスの首をだけ取るのが一番安全だな


「クイント様、敵のボス、クロッカスの位置は分かりますか?」


「はい大体は、ですがそこは守りが固く、攻めるのが困難で」


「いえ、問題ないです、私の騎士は精鋭ですから!」


やることは決まった、あとは実行するだけだ

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