激チョロ乙女ゲームの世界で、推し悪役令嬢の身代わりになりました
砥石 莞次
第1話 命に感謝した瞬間、裏切られる
生まれてきて良かった! 心の底の底の底からそう思えたのは初めてだった。まさか、『Sweet Happy Destiny』の2が出るなんて。捨てたもんじゃないね、この人生。世界はこんなにも優しい!
ずっとずーっと待っていた。
いつかリメイクが、欲を言えばファンディスクが発売されて、甘くて幸せで運命的(そう、まさに『Sweet Happy Destiny』!)な恋がまた体験できることを。不思議なことに人気がなかった作品だから、半ば諦めていたんだけど。もう一度言うね。捨てたもんじゃないよ、人生! 首にかけていた社員証を外し、スカートのポケットにねじ込む。代わりにスマホを取り出して、早速公式からの情報を漁る。数年前に夢中になったあの一枚絵が、こりゃまた随分とキレイになって……。天使のように可愛らしいヒロイン、個性豊かな王子たち。それから我が推し、悪役令嬢レゾイア様! キャラクターのページを開き、彼女の名前をタップする。
「新規の立ち絵も良い、良すぎる」
無印時代よりドレスのフリルがボリューミーで、ゴージャスさがマシマシ。艶やかな黒髪はご健在のようで、彼女の象徴と言われる薔薇の髪飾りが映えている。力強い瞳には、何者にも屈しないという意思が宿っていて……。すみません、涙が。歪む視界も気にせずに、推しの凛々しい姿を拝む。すれ違った誰かからの怪訝な視線を浴びながら、私は家路を急いでいた。早く帰って、ファンアートを描きたい。投稿したい。同志たちとこの喜びを分かち合いたい。
……ああ、本当に生きていて良かった。今ある命に感謝、ありがとう。頬を伝う涙を拭おうと、服のすそを引っ張ったときだった。階段を踏み外したのは。あれ、もしかして今、結構ヤバい状況? やけに冷静な頭の中で、私は『Sweet Happy Destiny』に思いを馳せた。
やりたかったなあ、2。
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