学校の池に雑巾を落としたら、女神さまが現れた
@JULIA_JULIA
第1話
昼休みが終わり、掃除の時間になった。ここから十五分間は労働の時間だ。だけどそんなことは、お構いなし。昼休みのロスタイムとばかりに、俺は友達と遊んでいた。
雑巾を使ってのドッジボール。ルールは簡単。相手と五メートルほどの距離を取り、濡らした雑巾を投げて、ぶつける。そうして相手に、より多くぶつけた方が勝ち。たったの、それだけ。もしも誰かに『中学二年生にもなって、するようなことか?』と問われれば、『面白いからイイんだよ』と返すしかない。
そうして教室内でいつものように雑巾ドッジボールをしていると、俺と友達のあいだを行き交っていた雑巾が開いている窓から家出をしてしまった。投げたのは俺、つまり雑巾を取りに行かないといけないのは俺だ。
校舎を出て、裏庭へと向かう。すると程なくして雑巾を発見。探し回らずに済んだのは、運が良い。しかし運が悪いことに、雑巾は池の中央付近で浮かんでいた。さて、どうしよう。
裏庭にある池はとても大きく、その縁からでは手が届かない。かといって池の中に入るのは避けたい。暫く悩んでいると、池の表面に波が立ち始めた。始めのうちは小さく、次第に大きく。池は完全に独立していて、川や水路と繋がっているワケではない。だから流れ込む水なんてない。そして強風が吹き荒れているワケでもない。それなのに、どうしたことか波が立っている。なんとも不思議な現象。しかしその後、もっと不思議なことが起きる。
なんとなんと、池の中から一人の女性が現れたのだ。その女性は湧き出るように───いや、湧き立つように、池の中央付近からズボッと出てきた。輝くような金髪のロングヘアに、真っ白な衣を身に纏う美女。そんな女性の右手には、雑巾が握られている。
「この雑巾を落としたのは、アナタですか?」
穏やかな笑みを浮かべて問い掛けてきた美女。そんな光景に、俺の脳内はフル回転。これはもしかして、童話だかにある『金の斧、銀の斧』と同じ状況なのでは・・・。だとすると、目の前の美女は女神さまなのでは・・・。
ここで正直に答えれば、おそらくは金の雑巾と銀の雑巾が手に入る。たとえ雑巾だとしても、金と銀でできているなら相当な金額で売れる筈だ。よって俺は、正直に答える。
「はい、そうです! その雑巾は、俺が落としました!」
俺がそう言い終えるや、女神さまは見事な投球フォームを見せ、俺の顔面に雑巾を叩きつけた。
「ふざけんな、クソガキ!! 人ん
そう叫ぶと、女神さまは池の中へと姿を消した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます