第543話 塩対応されます
まあもう一面の塩の地面なんだから当たり前か。
塩湖の周りには塩が結晶化してるので、それをバケツに入れておく。
でもこのまま使ったら汚いんで煮沸する。
岩塩は一旦水溶液にして、煮沸する。
そうして再び岩塩状にして、砕くという工程を経ている。
私は岩塩をバケツに放り込む。
そうして塩湖の干上がった場所に穴を掘り、ホウ砂を探して緑の炎色反応で調べている時に、硬い石を砕いて燃やすと。
「黄色かぁ、緑を探してるんだよなぁ」
ナトリウムは黄色く炎色反応する。だけどなんだろう、このピンクの硬い石は・・・。
まさか――
私は焚き火を初め、炭と石の粉を混ぜて、火に当てないように熱した。
すると激しい燃焼。
これは、この鉱石に酸素が多量に含まれている証拠だ。
・・・・やっぱりそうだ、塩湖の下では――ヤツが存在する可能性がある! 多分、ここはかつて、沢山の生命活動があった塩湖!
そうしてできるのが、〝硝酸〟ナトリウム――これがあれば、〝硝酸〟カリウムに出来る!
硝酸カリウム、つまり硝石は火薬の材料だ!
そうだ、この湖の真ん中の方の赤いのは微生物の活動のあとだ。
昔、ナトロン湖があったんだろう。トロンかナトロンの鉱床が有る可能性がある。
まあ、ガラスの釉薬とかみたいな使い道だけど憶えておこう。
硝石が手に入らない場合、最悪おしっこから硝酸を作るのも予定してたから・・・・見つかって良かった。
多分自分のを使わないと駄目だったけど――そんな事、恥ずかしさで悶死しかねない。
そもそも尿から硝酸を作るには――超、探すのが困難なプラチナがいる。プラチナが一番程よく酸素をくっつけるんだよね。
私の作れる第一遷移金属にあるバナジウムでも代用できるかもしれないけど。――いや無理か?
化学でアンモニアを作ればいじゃんって思うかも知れないけど、アンモニアって、生命体では簡単に生成できるくせに、科学的に作ろうと思ったら大変ったらありゃしないんだよ。作った人はノーベル賞貰ったし。ハーバーさんとボッシュさん。
「空気をパンに変えた男たち」と言われている。
空気はパンに変えるのではなく、読むものだと思います
私は、
「アンモニアなんか簡単に作れるでしょ~」って調べた時、大変さに腰抜かしたね。
高圧が必要なのがマジ勘弁。
圧力がかかる部分は、多分鉄ではなく純鉄、クロム鋼、マンガン鋼で多重構造にして作らないといけないから、未だ鋼すら出来てないのにムリゲー過ぎる。
だいたい、30気圧なんてどうやって作るの。コンプレッサー作れってか・・・スクリューコンプレッサーとかナノ単位の工作が必要だよ。
作れるのは、何処のドワーフだよ。
ロイトさんなら作れるかもだけど、でもそしたらコランダムとかダイヤのグラインダーが必要でしょ?
あと、ロイトさんはデータノイドだからここに来れないし。
ムリムリ。
「とりあえず、あとはこちらも塩湖にある、塩化カリウムを採集して、これらを化学反応させれば硝石が作れる!」
しかもやり方は、超簡単。
とにかくお宝と必要な物を見つけた私は、拠点に戻った。
その後、オックスさんが「酸化鉄もまぶしたいとい」うので、私がスチールウールみたいに細い鉄をいっぱい作って、丸めて燃やして、酸化鉄を作った。
こうしてさらに次の日、鍛造用の炉の本格的製作に入った。
前回の炉と違って、オーブンみたいな形。
今回は全体を粘土で作ることになったので、材料をみんなで〖飛行〗で採取しにいっては帰って来るを繰り返した。
やがて鍛造用の炉も出来て、さらに次の日から、オックスさんが鍛造を始める。
オックスさんは、「見様見真似だが」と苦笑いしていたけど、はたから見れば本格的だった。
まず鋼を選別。簡単に折れる硬い部分は外側に、粘りのある柔らかい部分は真ん中に。
刃が柔らかい鉄とかじゃなくて、芯が柔らかい鉄なんだって。
柔らかい鉄を、硬い鉄で包みこんで折れない曲がらないってのが日本刀。
で、鋼を焼いて叩いて平たくして、平たくしたのを小さめに割って積み重ねる。
さらにホウ砂を混ぜた粘土水を掛けて、焼いて叩いて長方形の一塊にすれば、準備完了。
長方形な鋼に、また粘土水(アルミとホウ砂を混ぜた物)を塗り、酸化鉄をまぶし、高温にした炉にくべて赤熱させ取り出す。
そこに灰をまぶし、アンビル(ワシが作った)の上に乗せたら、私達がスキルで自己強化しながらハンマーを振り上げ叩く。
そうして鋼を折り重ねていく。
この時、空気を吹き付けるのは、酸素に炭素を二酸化炭素とかにして持ってって貰うんだ。そうして、炭素のレベルを調節。
あと、酸化鉄も炭素と結合して二酸化炭素とかになって出ていく。
炭と一緒に砂鉄を熱するなんて方法で作ってるから、スラグとしてかなりすてたとはいえ、炭素量が相当多いだろうからね。
ここは流石に刀鍛冶の達人にしか分からないだろうって感じなんで、オックスさんの野生の勘頼り。
煌々と輝く鋼が、まるでミルフィーユのように重なっていく。
灰は、枯れていたイネ科の植物(エノコログサみたいなの)を燃やして作った。
取りに行った時はアリスが「幸せの白いエノコログサを探して」という歌を作詞・作曲した。
―――ああいう歌なら、いつでも大歓迎なんだけども。
で、白いエノコログサは見つからなかったけど、別のものが見つかった。
なんと、黄色い硫黄。
――キタコレ。
カルデラの近くに煙を吹いている場所があって、
「大丈夫かなぁ噴火したりしないよね・・・こんな大きなカルデラが噴火したら、大災害になりかねないよ」
と、――アリスとリッカに言いながら、確認の為に煙に近寄ってみたら、煙じゃなくて湯気だった。
温泉が沸いていて、周りに黄色い結晶。
すぐさま飛びついた。
アリスとリッカの女子勢が温泉に飛びつく中、私だけ黄色い臭い石に飛びついて、女子力を揮発してみました。
「揺れるエノコロ♪ ――リ、リッカ、見て下さい! お、温泉ですよ! ここなら何時でも温かい温泉があります!」
「う、うおおお!! あとで絶対入りに来るぞ!!」
「一緒に来ましょうね! スウさんも――スウさん・・・・?」
「見てみて、アリス硫黄だよ! 硫黄があるよ!」
「・・・・そんな悪臭を放つだけの石がどうしたんですか、それさえ無ければ素敵な温泉ですのに」
「な、なに言ってるの!? 硫黄だよ!? ――黒色火薬の材料だよ!?」
「えぇ・・・・そんな常識でしょ!? みたいに言われましても・・・」
なんてドン引きされた。
ただ、硫黄温泉の近くは一呼吸で人間を死に至らしめる恐怖の毒ガス――卵の腐った匂いで有名な、硫化水素ガスが集まってる危険な場所も有るかも。
なので、一応注意喚起しておいた。
硫化水素ガスは、一呼吸で人間を死に至らしめる危険なガス。
まあ私等、〖毒無効〗なんですけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます