第534話 拠点づくりを開始します

「編み編み~♪」


 私は歌いながら、割った竹を地面に突き刺して、横向きにも割った竹を波々に刺す。

 出来ていく、おっきい籠。


「竹みたいな植物のある場所に転送されて、ラッキーだったなあ」

「ですねえ」


 私がオックスさんに答えていると、アリスが笑う。


「私達的には、オックスさんとスウさんと一緒に来れて良かったなあ。って感じです」

「んだ。二人が全部考えてくれる上に、鉄の武器が手に入ったし」


 リッカが、籠を編みながらアリスに同意。


 コハクさんとリあンさんも、私達とは別の場所でかごを編んでいる。


 男性組と、星ノ空さんは泥を準備中。穴を掘ってそこに私の作った銅のバケツで水を運んできてダバー。土を入れてコネコネ。銅も私の作れる第一遷移金属でございます。


 男性組の中でオックスさんはだけは籠達の中央に、焚き火用に石を並べている。


 小屋は、あんまり大きなモノは作れないので3つ作る事になった。


 小屋分けは、


 私、アリス、リッカ、リイム。


 コハクさん、リあンさん、星ノ空さん、綺雪ちゃん。


 オックスさん、さくらくん、綺怜くん。


 という感じ。

 最悪、私が鉄筋で骨組みを組んでもいいんだけどね。ちょっと体力持ちそうに無いんで、籠で許して。


 オックスさんが焚き火の準備をしながら、みんなに言う。


「後で炉を作って鋼を作るぞ。必要になるだろうと思って、一応鋼の作り方は調べてきた」

「あ、私高炉を作るの手伝った経験があるんで、手伝いますね」

「高炉を作ったのか!? どこで・・・」


 するとなんか、リッカとメープルちゃんに遠い目をされた。


「ファンタシアだなあ」

「もうあれから一年ですか。――あの時もスウさん、絶賛チートしてたみたいですね」


   ◆◇◆◇◆


「さて、特別な炉がいるな」


 アリスが疑問を口にする。


「分厚い鉄の炉とかじゃだめなんですか?」

「鉄を溶かす作業をするし、何日も火を絶やさない訳だから、鉄では駄目だな。鋼ができる前に炉の形が変わってしまう」

「あ・・・そうですね」

「まあ、炉の周囲は鉄で作ったりするが」


 私はオックスさんに頷いて言う。


「量産するわけじゃないから、耐熱レンガまでは要らないですよね。私が魔術で作れるコバルトと鉄を合金にすれば現代の溶鉱炉に使えるような、耐熱性のある炉が確保できるけど」

「え、そうなんですか!?」

「でも合金は魔術じゃ作れないんだよね。だから結局、鉄を溶かす必要があるから、耐熱粘土がいるんだよね。えっと――じゃあオックスさん。毎回壊さなくていいように筒状にした鉄の内部に、耐熱粘土を塗る形にしましょう。少量の鋼を作るだけなら、これで十分のはずです」

「なるほど、」


 オックスさんが顎に手を当てる。


「で、耐熱粘土をどうやって作るか。陶器用の粘土は耐熱粘土に使えるらしいが、その辺に落ちてればいいんだが、そんな都合のいい事はないよな。焼いて、使えるか調べないといけないし手間がかかるな」


 私は思い出そうと、高炉を作った時の記憶を探ってみる――うーん駄目だ〖サイコメトリー〗を使おう。


「えっと鉄でなく、鋼を作る炉は、鉄の融点よりちょっと高温になるので。必要な耐熱粘土の材料は、粘土、ケイ素、アルミ。あとはカルシウムが欲しいですね。――アルミは天然に有るのはボーキサイトですが・・・ボーキサイトは見つけにくいですし、この大陸にない可能性すら微レ存です。なので赤土粘土を探しましょう。こっちならちょっと探せばある可能性が高いです。アルミと鉄は一緒に存在する可能性が高いので、赤土粘土にもアルミが含まれる可能性が高いです。十分な含有量がなかったら別の赤土を探しましょう。ケイ素は石英、黒曜石、チャートなど、要は水晶やガラス系の石を細かく砕いて加えれば良いですね。石英辺りは川を探せばありそうです」


 オックスさんが眼を丸くしている。


「すごいな、俺はそこまで詳しく分からなかった。とにかく粘土で釜を作ればいいのかと思っていたぞ。・・・・耐熱粘土の作り方をポンポン答えられる女子高生がこの世にいるとは思いもよらなかった」

「・・・ファンタシアの時に、一生懸命調べたので」


 オックスさんがリッカを見る。


「あとは、作った鋼の品質とか、刀にしたりする作業なんだが――ここはもう職人の技なんで、すまんリッカ」

「分かってる。そこまで求めない。玉鋼の刀というだけでこの惑星なら、それはもう伝説の武具クラスだろう」


 私はリッカに一応尋ねる。


「リッカ、私が魔術で作れる、バナジウムやコバルトを鋼に混ぜれば、鋼が固くなったりするけどどうする? 〝バナジウム鋼〟は工具や刃物なんかに、〝コバルト鋼〟はカミソリやレールに使われていたりするんだよね」

「ふむ――だけど、下手なことをして変な刀が出来ても嫌だしな――わたしが握り慣れた、昔ながらの刀が良い」

「OK――っじゃあまずは飛んだりしながら、赤い地面を探そう。あとは海の近くとかで灰色の岩が一杯ある場所とか、その辺りはサンゴとかが堆積して出来た石灰岩の地形だと思う――流石にイギリスのホワイトクリフみたいに白い崖とかはないと思うし」

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