第130話 ピンチが訪れます2

ちょっと戦いが続きすぎてダレている気がするので、早めに投稿します。


戦い続きなので、箸休め的な話「第127話 涼姫とお昼ごはんを食べるのです」という話を挿入しました。


戦いに疲れた、あなたに。


https://kakuyomu.jp/my/works/16818093088310646980/episodes/16818093090590417117


~~~


 スウが左側の透明板を叩き割って、リミッターを外す。

 スロットルを全開に。


『速くなったか――だが、無駄だ!!』


 ユーも、フラグメントのリミッターを外してしまう。

 スウは、追い迫るフラグメントを何とか振り切ろうとするが――どの様に飛んでもユーは、スウを捉えてついてくる。


「くっ、Gがっ―――! もう〖伝説〗を使うしか――でも、〖伝説〗を使ってでも、あの3人相手じゃ勝てる方法が思いつかない――」


 ユーが優しく語りかけて来た。


『スウ。一世代も前の機体な上に、最弱である量産機でよく頑張った。お前は凄いよ、人々の期待を背負って疲れただろう。レース大会の時もそうだ、あんなに皆の期待を受けて重荷も感じただろう。だが俺達三人に負けてしまっても誰も文句謂わない。敗北して、楽になっていいんだ。俺ならお前を倒してやれる』


 スウが稲妻のように飛んでも、急旋回しても、後ろ向きに逃げても、


「振り切れない!!」


 フラグメントが肩から放ったキャノンが、スウに直撃する。スワローテイルのシールドが破壊された。

 スウが弾かれてコントロールを失い、宇宙空間でビリヤードの玉のように転がった。

 フラグメントが、転がるスウに回り込んだ。


『スウ。俺が今、楽にしてやる』




◆◇◆◇◆




『面ェェェェェェェェェェェェン!!』


 フラグメントがスワローテイルを蹴り上げようとした刹那、〖重力操作〗で、フラグメントを引き寄せながら〈ソード・リボルバー〉を振り降ろすナイト・アリス。

 宇宙空間なので、スキルでも機体を引き寄せられた。


 アリスが〖重力操作〗を〈ソード・リボルバー〉に切り替えたことで、莫大な重量と化した一撃が、フラグメントの頭に叩き込まれた。

 フラグメントのまだ回復しきっていないバリアが砕かれ、シールドまで砕かれた。


『邪魔をするな、雑魚!』

『変形、ムシャ・リッカ! ――――雑魚? 誰に向かって口を利いているッ!』


 ムシャ・リッカが一回転。


『消え――た?』

『下だ、躱せユー!』

『見えねえのか!? ブラザー!』

『立花放神捨刀流――七教ななつのおしえ――天燕あまつばめ」』


 ジョセフはギリギリで足を使い、リッカの攻撃を受け止めた。

 フラグメントの特殊能力で強化されている蹴り。

 だがリッカは相手のパワーを物ともせずに受け流し、返す刀を相手に走らせる。


 スナークが腕で防ごうとする。スナークは、鼻で笑う――


『ただの燕返つばめがえしだろ!』


 ――が、


『アマツバメは、天空にて最速なり! 小手ェッ!』


 廻る太刀が真っ直ぐに迫るという、手品のような一撃がフラグメントに迫る。


『なん――』


 腕で止めようとしたが、スナークは武術家ではない。正しい受け流しの仕方など知らない。

 切り飛ばされる、フラグメントの腕。


『なんだ、この女――剣道家か!?』

『Damn!!』


❝まじかよ・・・・相手はFPSプロとカポイラ世界3位と、スウ並の操縦者だぞ・・・!?❞


立花たちばなは地上最強也。我らに挑みたくば、世界一になってから出直してこい!」


 アリスが乾いた声を出す。


『ふふふ・・・リッカを普通の女の子とか思ってると、酷い目にあいますよ・・・』


 スウが間一髪で救い出されて、逃げながら喜んだ。


「さ、流石リッカ!」


 リッカが、背後を飛ぶスウに振り向かずに声をかける。


『スウは空母の援護に回って。合体メカは、合体メカで相手をする』

「うん、ありがと!」


 しかしユーはスウにしか興味がない、遠ざかろうとする蝶に手を伸ばして追いかけようとした。


『まて、スウ! 俺以外を相手にするな!』


 そのユーの前に立ち塞がる、リッカとアリス。


『行かせない』

『女の子1人に、男性や大人が3人も寄ってたかって、お仕置きしてあげますよ』


 ユーが、憎々しげにムシャ・リッカを睨んだ。


『邪魔する気か』


 アリスが朗らかに尋ねる。


『あら、やっと私の声が聞こえたみたいですね』

『ああ、敵だと認識した』

『自分勝手な耳をしてますね、本当に』


 ユーは事もなげに返す。


『当然だ、俺は我儘を通す力を持っているからな』

『この人は本当に気に食わない』


 アリスがと叫ぶと、リッカがムシャ・リッカを回転させて姿を霞に変えた。




 空母ティンクルスターは星の騎士団のクランマスターウェンターを始め、火力×3人、ヒーラー×3人――計7機にかこまれていた。


 そして左舷から炎を吹き出していた。

 コハクが、呆然と呟く。


『もうだめ・・・・』


 轟沈していくクレイジーギークスの空母。

 リあンが肩をすくめた。


『まあ、アリスさんやリッカさんと協力して、トップクランの人達を6人も落としたんだから』


 星ノ空が、頷く。


『よくやったほうかな。さくらが操舵手じゃなかったら、ここまでもたなかったよ』

『すみません、力及ばず』

 

さくらがうなだれると、星の騎士団のクランマスター・ウェンターから通信が入ってきた。


『強かったです。こちらは16人なのにそちらは9人。戦力差を感じさせませんでした』

『言ってくれる』


 マッドオックスが、悔しそうに笑った。


 5人の視界に全速力でこちらに向かってくる、単葉形態のスワローテイルが映る。

 必死な彼女を見つめながら、5人は轟沈判定を受けた。

 コハクから、最後の通信が入った。


『スウさん、あとはお願いします・・・』

「うん! 任せてみんな!」


 スウがオープン通信で、星の騎士団に挑戦状を叩きつける。


「ウェンターさんたち、私が相手ですっ!!」

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