第6話
「カイン様。あの、私を助けて下さった時に、どこか怪我などされなかったでしょうか? なにぶん古い家で…」
家の周りに罠があり軟禁されているなんて、とても言えない。
軟禁って、ひくよね。
「いや、なんともない」
(怪我? そうか、罠のことだな⁉︎ 私の怪我の心配をしてくれるのか?リィーン、あなたはなんて優しい人なんだ。
すまない!心配無用だ。
罠の場所は把握してある。それに……)
「リィーン、私は、今はこんな格好だが、騎士団の治安部隊に所属している。人々の治安を守るのも仕事だ。良ければ、回復するまでここにいさせてもらえないだろうか?
もちろん、夜は外で寝るし、
その、女性の一人暮らしは心細いと思い…」
「どうして私が一人暮らしだと?」
(しまった!つい気が緩んでしまった。なんとか誤魔化せねば)
「リィーンが昨日倒れてから、い、いままで誰も帰ってこなかったもので…多分、おそらく、一人暮らしではと、そ、そう思ったが…違ったのか?
べ、別にリィーンが一人暮らしだからといって不埒なことなど決してしない‼︎
約束する! 不安ならば、寝る時は私を、縛ってくれてもいい!あ、縛られたら護衛できないか……でも、リィーンが安心するなら……」
ごにょごにょと言い淀むので、最後の方は聞き取れなかった。
カインの慌てた様子や、必死に弁解する姿を見て、リィーンの緊張の糸が解れていった。
黙っていると威圧感のある人なのに、中身はどこかかわいく思える男性。
自分の直感を信じて、この人は悪い人ではないとリィーンは思った。
「ふふっ、私みたいなのが、そんな心配なんてしていません。
訳あって、一人で暮らしていますが、助けなど必要ありません。お気遣いありがとうございます」
突然マリア嬢が来るかもしれない。
それに、何かのゲーム補正で助けてくれたカイン様を危険な目にあわせたくない。
どうか、このまま穏便に帰られますように。
リィーンは祈るような気持ちで、カインに手助け不要だと告げる。
「リィーン、
そうか、わかった。勝手に押しかけてすまなかった」
「本当にありがとうございました。どうか、お気をつけて」
リィーンは上体を起こして、ベッドの上からカインに頭を深々と下げる。
カインは、わびしげな顔をしていた。
何か言葉を口にしようとしては止め、何度も振り返りつつ、部屋を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます