二 ガラスの靴の持ち主2

 カンッカンッカンッ


「失礼します。視察に来ました。王子です」


 上流市民の女性というのは色々面倒臭く、急に訪れても対応出来ない事が多く、王子は先に街の早馬で伝達をしていた。以前ここに来たときは、確か二人の娘がいて、一人は履けたが少しスカスカで、もう一人は履くことが出来なかったと記憶している。二人の娘の顔は記憶にない。

 因みにオーナーは訳があるらしく、馬車で待機している。


「これはこれは王子様。ご足労何よりです。今回はどんな視察なのでしょうか」


 メルトが出てきて対応する。


「名簿をよく見たら、以前来たときに一人会えていない人物がいたようなので、その人物に会いに来ました。確かアイシャという人物だったと思います」


 王子は名前を告げ様子を見る。


「ああ、アイシャ様ですか。そう言えば、あの時はお会いできていませんでしたね。遠出されていたもので」


 王子はメルトの目が泳ぐのを見逃さなかった。


「ともかく、中にお入り下さい」


 そう言って、メルトは応接間に王子を招き入れた。


「ここでお待ち下さい。すぐに連れてきます」


 メルトはそう言って、奥へと引っ込んでいった。

 しばらくして現れたのは艶やかな姿をした女性だった。


「王子様お初にお目にかかります」

「ああ、君のことは良く覚えているよ。舞踏会の時シンデレラを追いかけていた僕を王子ではないと言った女性だね」

「えっ、ああ、その、その節は大変無礼を働きました。何卒寛大なお心でご慈悲をお願いします」

「ああ、気にしてないさ。それより早くアイシャに会わせてくれ」

「すぐに」


 エラは赤い顔をしながら出ていった。

 そして、しばらくして今度は別の艶やかな女性が出てくる。


「王子様お初にお目にかかります。アイシャです」


 そう言って出てきたのは、今度はテラだ。トーラも一緒に来ている。


「王子様お待たせしました、先日会えなかったアイシャになります」


 トーラが口を添える。


「君が、アイシャかい」


 王子は座ったまま首を傾ける。先ほどの絵と、自分の記憶とは違う女性がそこにいるからだ。しかし、家主も本人もアイシャと言っている。どういう事だろうと王子は考える。


「初めまして、かな。まあいい。靴を持ってこい」


 王子が従者に指示を出す。従者はすぐに靴を履かせる準備をした。


「王子様申し訳ありません。今アイシャは足に怪我をしておりまして、包帯のせいでとても、その靴は履けないと思います」


 トーラがそう説明する。


「そうか、それは残念だ。そう言えば、ここにいる娘は三人だと聞いていたが、もう一人はどこですか」


 王子がトーラに聞く。トーラは顔を背けながらこう言った。


「実は以前、お会いしたときから色々ありまして、一人はもう勘当しております。私の娘は今はエラとこのアイシャのみです」

「そうでしたか、短い間に色々あるのですね。しかし、その娘にも会いたい。どこにいる」

「申し訳ありません。何分ひどい喧嘩での勘当となったもので、場所までは」

「わかりました。では、今日の所は断念しまししょう」


 そう言って、王子は馬車まで戻りました。馬車まで戻ると、オーナーに事情を説明します。


「家の隅々まで調べましたかな。特に怪しいのはあの家には地下室があります。そこを良くお調べになって下さい」


 オーナーはそう言った。


「では、あなたの見立てでは勘当はしておらず、あの家に隠されていると言うことですね」


 王子が確認する。


「はい。間違いなくあの家にいます」

「わかった。あなたを信じよう」

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