第8話:ウィッカの魔法。
「この通り、車は通行禁止だよね・・・だけどあの車・・・侵入して来てるけど」
「本当だ・・・けっこうスピード出てるよ」
その車、軽四の乗用車は徐行することなくどんどんスピードを上げてこっちのほうへ
向かって走って来ていた。
「あの車、止めないとヤバいよ、ウィッカちゃん」
「大ちゃん、見える?運転席に人がいないよ・・・」
軽四がやって来るその先には、店から店に通りを横切って行く親子連れがいた。
「ヤバい・・・このままじゃあの親子連れ車に轢かれちゃうよ」
って俺が言うが早いかウィッカちゃんが飛び出すのが早いか?
ウィッカちゃんは暴走して来る車に向かって両手を前に差し出した。
で、なにか言葉を発すると軽四は急ブレーキをかけたみたいにウィッカちゃんの
前で止まった。
いや、それはまるでウィッカちゃんが念力かなんかで軽四を止めてみたいに見えた。
そしてウィッカちゃんは店と店の間に歯抜けになっている売り土地の雑草が生えた
土地に軽トラを宙に浮かせたまま追いやった。
軽トラは雑草が生えた土地に運ばれて行ってそこにドスンって降ろされた。
一連の出来事がまるで嘘みたいに綺麗にかたずいた。
横断していた親子もその光景を見ていたし商店街の店の人も、歩いていた人たち
も、そして俺も、みんなウィッカちゃんの不思議な行動を見ていた。
どうやら軽トラを運転していた人はご高齢で心臓に持病があったらしいとこが
あとで分かった、
「危なかった・・・」
「大ちゃん・・・あのさ・・・今の見ちゃったよね・・・」
「見ちゃったね・・・ウィッカちゃん、今の何?」
「商店街のみんなにも見られちゃったね・・・しょうがないかな・・・」
「大ちゃん、ちょっと待ってね」
そう言うとウィッカちゃんは空に向かって、また何かを叫んだ。
「アエリオル!!出てきて!!」
ウィッカちゃんがそう言うと商店街に一陣の風が吹いてその風がウィッカちゃん
の前で竜巻みたいに渦巻いていた。
「アエリオル・・・この書店街にいる人全員の記憶を消して」
それを聞いた風は、俺の前で一吹きすると渦を巻いたまま商店街の中をあっち
こっち吹きまくった。
「これで、さっきの出来事を覚えてる人はいないでしょ?」
「ウィッカちゃん・・・俺は・・・俺は覚えてるよ」
「え?大ちゃんの記憶は一番に消えてるはずだけど・・・」
「あのさ・・・どうなってるか教えてくれないかな?」
「何が起こったかはこの目でしっかり見たよ・・・だけどなんでウィッカちゃん
は、あんなことができるの?それに今の風は?・・・ウィッカちゃんって?」
「何者?」
「ただの売れっ子メイドじゃないよね」
「驚かないから、ちゃんと俺にだけは説明してよ?」
「分かった・・・でもその前に大ちゃん、もしかして魔法効かないの?」
「魔法?・・・分かんないけど・・・」
「魔法が効かない体質の人もいるの・・・きっと大ちゃんはそうなんだね」
「魔法って・・・まさかだけど、ウィッカ・・・魔法使いとか?」
「あ〜俺、なに言ってんだろ・・・」
「そうだよ・・・でも魔法使いじゃなくて私、女だから魔女だよ」
「まじで?・・・本気で言ってる?・・・この世に魔女なんているの?」
「ここじゃ、落ち着いて話せないね・・・ソルシエールに帰りましょ?」
「大ちゃんにだけは全部、説明するから・・・」
普通ならありえないような出来事を見にした俺・・・未だに信じ難かった。
ソルシエールに帰ると、レイちゃんが顔を出して俺に言った。
「大福〜どうした?浮かない顔して・・・ウィッカちゃんにフラれたか?」
「フラれたらもっと悲惨な顔してるよ・・・そんなことより・・・」
「レイちゃんもアンちゃんもソルシエールのメイドさんは全員魔女なのか?」
「なに言ってんの?・・・」
「ウィッカ・・・なにかあったの?」
「うん、大ちゃんに私が魔法使うところ見られちゃった」
つづく。
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