第6話:まじでデートの約束。

「いくらだったの?」


「え〜と・・・それ、違うって言うか・・・300円・・・とか・・・」


大福がウィッカに渡したのは300円のイヤリングだった。

2,000円のイヤリングを渡すつもりが間違って300円のイヤリングを渡してしまった。


大福は終わったって思った・・・。


「あはは・・・あは・・・300円?・・・せめてもう少し・・・まあいいよ」


「ごめん、本当はあの、そのイヤリングじゃ・・・どっちにしたって、もらっても

嬉しくなかったよね、ごめんね」


「いいよ・・・喜んでもらっちゃう」

「それと、大福ちゃんとデートしてあげてもいいかも・・・」


「え?・・・今なんて言った?」


「デートしてあげるって言ったの、して欲しんでしょ?デート」


「そうだけど・・・まじで?・・・・え?でもなんで?急に」


「私に高級ブランドなんかプレゼントに持って来ないから」


「持って来ないって・・・て言うか買えないだけなんだけど・・・」

「ジャンクショップの店員になんかに高級ブランドは買えないからね」


「私イヤなの、高いモノで人の心を持て遊ぶ人って・・・・

そう言う人に限って釣った魚に餌をやらないタイプって思うのね」


(つうか、俺も金があり余るほど持てったら今頃ウィッカちゃんに高級

ブランドプレゼントしてたと思うけど ・・・)


「そ、そうだね・・・俺はそんなこと考えもしてなかったかな、あはは」


「私は心が籠ってたら300円のイヤリングでも嬉しいよ」

「それに、こんな安物のイヤリング持ってきたの大福ちゃん、大ちゃんだけだもん」

「ウケちゃう・・・」

「だから大ちゃんとデートしてあげてもいいかなって思ったの」


「よ、よ、よ、よ、よろしくお願いします」

「あの、あとであれは冗談でした〜なんて言わないよね」


「言わないよ・・・魔法使いはウソつかない」


「魔法使い????」


「あ、間違ったメイドはウソつかない・・・魔法使いってなんのよね」


「まあ、どっちでもいいけど・・・でも約束だよ?デート」


「はいっ、約束ね」


そう言ってウィッカちゃんは俺があげた安物の赤いイヤリングを耳に

つけてくれた?


「どう?似合ってる?」


「うん、めっちゃ似合ってる・・・超絶可愛い」


そのとおりだったから他に表現のしようがなかった。


って、ことでソルシエールが休みの時、俺はウィッカちゃんとデートできる

ことになった。

百万年口説いてもダメなんじゃないかって思ってたから、デートしても

いいって言われてびっくりした。


予想外の出来事ってやつ・・・なんでも姑息に計算しちゃいけないんだって

ことをつくづく思った。

そこに私利私欲、打算が働くと、きっと相手に見透かされてしまう。

素直に正直にウソ偽りなく正面から接していれば相手はちゃん見ててくれて

誠意でもって答えてくる。


俺もいい加減な生き方はやめないと、ウィッカちゃんに嫌われちゃうよな。

ひとつ賢くなった。

ウィッカちゃんの前では素直で正直でいよう。

かっこつけないこと、自然体でいること・・・それだな。


たまたま渡すイヤリングを間違えたのが功を制しただけなのに・・・。

まあ、でもそれが成功したのはウィッカが素直な子だったからなんだろう。


ウィッカちゃんとのデートが決まって俺はもう舞い上がりっぱなしだった。

彼女にバイバイしてカフェを出る時、レイちゃんに声をかけられた。


「なに嬉しそうな顔してるの?大福」


「ウィッカちゃんとデート・・・」


「あ〜誘ったけど断られちゃったか?」


「俺のこの顔見て分かんない?」


「ウソ・・・まじで?」

「百万年口説いても無理だって思ってたけど・・・なにが起こったの?」


「少なくともウィッカちゃんは俺のことが嫌いじゃないってことだよ」


「まあ、タデ食う虫も好き好きって言うからね」

「でもよかったじゃん・・・まあせいぜい頑張って楽しんで・・・バカやって

ウィッカちゃんにフラれないようにね、あんたドジだから・・・」


まじでレイと付き合ったほうがいいんじゃいかって思うくらいレイは大福の

ことをよく分かっていた。

でも、皮肉なことに大福はレイの好みのタイプじゃない。

だから大福とレイはメイドと客の関係以上にはならないのだ。


仲が良くても恋人にならない子、幼馴染とか・・・だけど、なぜか切っても

切れない腐れ縁・・・そう言う関係、世の中には多々あるもんだ。


「あ、そうだ、レイちゃんよかったらこれあげるよ」


そう言って大福は2,000年のイヤリングをレイに渡した。


つづく。










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