第36話 鑑定をしよう
こうして、わたしとダリヤさんが挑んだ初クエスト――トバリの森でのゴミ拾いは大成功に終わった。
それからも、わたし達は色々なクエストに挑戦していった。
ゴミ拾いはもちろんのこと、
ダンジョンで
当然ダンジョンの中では、モンスターとの
だけど、わたしとダリヤさんは、うまく役割分担をしながら、立ちはだかるモンスターを倒していった。
「ミユル、敵とエンカウント。数は三体、グリーンゴブリンだと思われ。魔法でまとめてやっちゃうから、ミユルは下がってて」
「オッケーです!」
わたしが物陰に身を隠したタイミングで、ダリヤさんが言ったとおり、物陰からモンスターが登場した。
子供くらいの背丈で、緑色の肌をした、醜い顔をした小鬼のモンスター――グリーンゴブリン。
手には棍棒を持ち、ギイギイと耳障りな奇声を上げながら、ダリヤさんを取り囲む。
だけどダリヤさんは、ちっとも怯む様子はない。
落ち着き払った感じで、手にした杖を天に掲げる。
ぼんやりとその杖先が赤色に染まり、やがて空中に魔法陣が展開された。
「
ダリヤさんの詠唱と同時に、魔法陣から赤色があふれだす。
中から、巨大な炎の渦が出現し、うねりをあげてハイゴブリンたちを取り囲んだ。
その様は、詠唱のとおり、火の精霊が腕を伸ばして、ゴブリンを抱き抱えているようだった。
獄炎に取り込まれた哀れなハイゴブリンたちは、断末魔の悲鳴を上げる間もなく、一瞬にして炭の塊となってしまった。
「一丁上がり」
ダリヤさんは杖を下ろして、危なげなくそう言った。
「さすがダリヤさんです!」
わたしは物陰から飛び出して、ダリヤさんのところまで駆け寄ると、マジックバッグの中から、小瓶を取り出す。
「どうぞ、こちらお飲みください! 拾いたてホヤホヤの
「ん」
ダリヤさんは、わたしからマナポーションを受け取ると、くいっと一気に飲み干した。
するとダリヤさんの全身が淡く青色に輝く。
薬の効能で、ダリヤさんの魔力が回復しているのだ。
「ありがと、ミユルのおかげで魔力切れを気にしないで、思いっきり魔法を打てる」
「えへへ、どういたしましてです」
……と、こんな感じで、わたしがスキルの力でリサイクルした回復アイテムがあるかぎり、ダリヤさんは魔法を打ち放題なのである。
なので、大抵のモンスターは、一撃で片付いてしまうのだ。
もちろん、たまには魔法攻撃が効きづらいタイプのモンスターとエンカウントすることもある。
「む、サンドゴーレム。あいつは魔法が効きづらい」
敵の姿を確認したダリヤさんは、構えていた杖を下げると、わたしを見た。
「ミユル、ウルルンの出番」
「わかりました! よろしく、ウルルン!」
わたしは自分の肩の上に乗っているウルルンに呼びかける。
「うっるる~ん!」
ウルルンは元気よく鳴いてから、わたしの肩から飛び降りた。
そして、サンドゴーレムの前にぴょんぴょん駆けていく。
至近距離で対峙するサンドゴーレムとウルルン。
サンドゴーレムの体は、小さなウルルンと比べると、まるで山のようだ。
端から見ていて、ウルルンに勝ち目はない。
だけど……
「うっるる~ん!」
鳴き声と共に、ウルルンの体がまばゆく輝き出した。
その光の中で、ウルルンの体がどんどん大きく膨れ上がっていく。
やがて、サンドゴーレムをも上回る大きさになったウルルンは、そのまま覆いかぶさるようにサンドゴーレムに組み付いた。
ウルルンの体にすっぽりと包みこまれたサンドゴーレムは、当然その中で暴れまくるが、時すでに遅しである。
サンドゴーレムの体は、まるで氷が熱で溶けていくように、みるみる小さくなっていき……やがて消えてしまった。
戦い……というか、おもいっきり捕食を終えたウルルンは、みるみるうちにもとの大きさに戻って、わたしの肩の上に飛び乗った。
「よしよし、さすがウルルン! よくできました!」
わたしはウルルンの頭をなでてあげる。
ウルルンは気持ちよさげに「うるん!」と一声鳴くと、わたしの頬にすり寄ってきた。
大変に可愛らしい。
とまあ、こんな感じで。
魔法が効く相手はダリヤさんが。
効かない相手はウルルンが。
敵モンスターをつつがなくやっつけてくれる。
わたしはそのサポートだ。
こんな感じで、わたし達パーティーは、危なげなく日々のクエストをこなしていた。
***
そんな冒険者としての生活にも慣れてきた、とある日のこと。
いつもどおりダンジョンでゴミ拾いを終えたわたしは、ルーティンに従って、ギルドへの報告を終えた後、リサイクルしたアイテムをゴッズさんのお店で査定してもらうことにした。
ちなみに今日はダリヤさんは別行動だ。
魔法の杖のメンテナンスをするとのことで、ゴッズさんのお店に足を運んだのは、私一人である。
戦利品のアイテムをマジックバッグごとゴッズさんに手渡した後、査定が終わるまでの間、手持ち無沙汰になってしまったので、わたしは店内を冷やかしながら時間をつぶす。
そんなわたしに、ゴッズさんが声をかけてきた。
「……嬢ちゃん、このアイテムの査定には、《鑑定》が必要だぜ」
「え、鑑定?」
カウンターまで戻って、ゴッズさんに聞き返す。
ゴッズさんはモノクルを外すと、手にしたアイテムを私に差し出してきた。
わたしそれを受け取って、じっと見つめる。
小瓶に詰められた、半透明の紫色の液体。
てっきり、ポーションかなにかだと思ったけれど、何か特別なアイテムなのだろうか。
「アイテムの中には、効果がわからないアイテムもある。それを調べるためには、色々と方法はあるんだが、基本的には《鑑定》スキルが必要になる」
「ゴッズさんは出来ないんですか?」
わたしの問いに、ゴッズさんは首を横にふった。
「簡単なアイテムだったら、出来ないこともないが……コイツは無理だな」
「じゃあ、ちょびっと飲んでみて、アイテムの効果を確かめてみるってのは?」
「仮にコイツが猛毒だった場合、嬢ちゃんはオダブツだが、それでもいいなら止めはしねえよ」
「や、やめときます……」
「賢明だ」
そう言って、ゴッズさんはニヤリと笑う。
「まあ、丁度いい機会だと思うぜ。嬢ちゃんが、これからもダンジョンでゴミ拾いをしていくつもりなら、鑑定が必要なアイテムを拾う機会もそれなりに増えてくるだろう。ここらでちゃんとした《鑑定士》と、パイプを作っておくのがいいんじゃねえか」
「鑑定士さん?」
「スキル《鑑定》を持っていて、アイテムの鑑定を生業にしている連中のことだ」
「へえ、そんな職業もあるんですね」
「冒険者とアイテム鑑定は切っても切り離せねえからな。リーフダムの街中に鑑定士のアトリエがあるぜ」
ゴッズさんはそう言うと、背後の本棚から、一冊の本を取り出してきた。
「ちょっと古いかもしれねえが、鑑定アトリエの店舗録だ、嬢ちゃんに貸してやるよ」
「あ、ありがとうございます」
わたしはゴッズさんにお礼を言ってから、店舗録を受け取った。
パラパラとページをめくってみる。
五十音順に、鑑定アトリエの名前と所在地が載っていた。
「沢山ありますねえ……ゴッズさんのおすすめのお店とか……」
早々に自分で探すことを諦め、ゴッズさんを頼るわたし。
ゴッズさんは「貸してみな」と言って、店舗録をわたしから受け取った。
「ここなんかどうだ」
ゴッズさんはそう言って、ページを開いてわたしに見せてくれる。
ゴッズさんが指さした先に記されていた名前は『ミネルヴァ商会』だった。
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ステータス
――――――――――――
ミユル(本名:フレデリカ・ミュルグレイス)
性別/女
冒険者等級:星なし
称号/ゴミ令嬢、ソロ討伐者、ホームレス、不審者、他力本願、人助け初心者、お酒初心者
好き/クー、食べもの全般、お風呂、ハチミツ酒、かわいいもの
嫌い/虫
スキル/《ゴミ》
効果:ゴミをリサイクルする能力
弱い仲間を強化する能力(?)
ゴミの品質をあげる能力(?)
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――――――――――――
ダリヤ
性別/女
冒険者等級:三つ星
称号/魔法使い、セイバー、ベテラン冒険者
好き/ハチミツ酒
嫌い/実家
スキル/黒魔法
効果:攻撃系魔法を使いこなす能力
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