第34話 トレジャー売却!

 

 わたしとダリヤさんは、冒険者ギルドへ到着した。

 相変わらず冒険者でごった返しているエントランスを通って、受付カウンターまでたどり着く。


 カウンターに座っていたのは、色々とお世話になったグランドさん……ではなく、別の職員さん。

 グランドさんには、帰還報告と色々とアドバイスをもらったお礼を、直接言いたかったところだけど、仕方がない。


 わたし達は、パパッと帰還報告を済ませることにした。

 

「かくかくしかじか、というわけで、トバリの森のゴミ拾いクエスト、完了しました!」

「了解しました、では拾ってきたゴミの重量を計測しますので、少々お待ちください。あ、バッグごとで結構ですよ」


 言われるがままに、わたしはダンジョンで拾ったゴミをマジックバッグごと職員さんに手渡す。

 職員さんは、そのまま受付カウンターの奥に引っ込むと、しばらくしてから戻ってきた。


「お待たせしました、こちら拾ってもらったゴミの査定結果です」


 職員さんから一枚のメモ切れを渡される。

 メモ内容を覗き込むと、それは見積書のようだった。


「銅貨10枚……けっこう頑張って拾いましたけど、寂しい報酬ですね」


 わたしはちょっとだけガッカリしながら、そうつぶやく。

 ダリヤさんは「しょうがない」と、軽く首をふった。


「ゴミ拾いクエストの報酬、それ自体はそれほど大きなものじゃない。ゴミの重量単価はダンジョンの難易度で変わるし、低ランクダンジョンだったら、こんなもの」

「なるほど……」


 ダンジョンでのゴミ拾い。

 苦労するわりには、報酬がシブい。

 なかなかに世知辛い仕事である。

 

 

 ……ここまでなら、ね。


 

 わたしはギルドから提示された見積額に同意して、報酬の銅貨を受け取った。


「……それでは、回収したゴミの引き取らせていただきます」


 職員さんは続けて、おそらくいつものルーティンなのだろう、拾ったゴミの引き取り手続きに移ろうとした。

 

「あ、それは結構です!」


 わたしはそれを静止する。

 職員さんは手を止めて、「え?」という顔をした。

 

「引き取り不要って……持ち帰るんですか? ゴミを??」

「はい、持ち帰ります!」

「全部?」

「イエス!」


 職員さんは不思議そうに何度も首を傾げながらも、言われたとおり、マジックバッグごと、ゴミを返却してくれた。

 わたしはマジックバッグを肩から斜めにかけ直すと、職員さんに向かって笑顔で挨拶をした。


「どうもありがとうございました!」


 そのまま、わたし達は冒険者ギルドを後にした。


***

 

 さて、ギルドでの手続きを終えたわたし達が、次に向かっている場所はどこなのか。

 

 本来であれば、そのままギルドにゴミを預けておしまいだけど、わたし達が拾ったゴミは、スキル《ゴミ》の力によって、ほぼすべてが新品同様の状態にリサイクルされている。


 つまりフツーに売れるわけ。

 

 このままギルドに預けてしまうのは、あまりにもったいないのだ。


 というわけで、わたし達はギルドへの報告を終えた後、その足で向かった先は、ゴッズさんのアイテム屋である。

 


「ゴッズさーん! こんにちはー!」


 スイングドアを押し開いて店内に入ると、雑多なアイテムが所狭しと並ぶ店内の一番奥のカウンター席に、この店の店主であるゴッズさんが座っていた。


「よう嬢ちゃん……久しぶりだな」

「はい! ゴッズさんにアドバイスをいただいたとおり、ダンジョンでゴミ拾いをしてきました! おかげさまで、たっぷりトレジャーをゲットです!」

「そうかよ」


 相変わらずコワモテ顔のゴッズさんは、ニンマリ笑うわたしに無愛想な返事をひとつ返してから、その鋭い視線を、わたしの隣に立つダリヤさんに向ける。


「アンタは……嬢ちゃんのお仲間か」

「……ん」


 ダリヤさんはゴッズさんを一瞥して、ぺこりと頭を下げた。

 ゴッズさんは視線をわたしに戻すと、口ひげをいじりながら、ニヤリと笑った。


「どうやらオレの言ったことを素直に守ったようだな」

「はい! ゴッズさんのアドバイスのおかげで、心強い仲間もできました! その節は大変お世話になりました!」

「ふん、別に対したこたぁしてねえよ。どれ、さっそく拾ってきたブツを見せてみな」

「わかりました!」


 わたしは肩から掛けていたマジックバッグをカウンターの上に置くと、その口を開いて、中に手を突っ込んだ。


「ホホイのホイの、よいしょっとー!」


 トバリの森で拾った戦利品を次々と取り出して、カウンターの上に並べていく。


「おいおい……ずいぶん多いんだな……」


 ゴッズさんは半分呆れたような顔でそうつぶやくと、片眼鏡モノクルをかけて、わたしが並べた戦利品を査定しはじめた。


回復薬ポーション魔力回復薬マナポーション解毒薬アンチドート……こいつは上級回復薬ハイポーションか……? 魔符に、ケムリ玉……おいおい、各種属性の魔晶石まで拾いやがって……」

「えへへ、がんばりました」

「これが元は全部使い終わったゴミだっていうのかよ、まったくとんでもねえスキルだな……」

「いやあ、それほどでも」


 わたしがデレデレになっている間も、ゴッズさんの査定は続いた。

 しばらくして、あらかたの査定を終えたらしいゴッズさんは、カウンターに並べられた戦利品を数えながら算盤をはじく。


「ざっと見積もって、これくらいだな」


 ゴッズさんは査定結果を紙に書き出すと、わたしに差し出した。


「え……」


 紙に書かれた金額を見たわたしは、思わず息をのむ。


「金貨……十、え? こんなに……!?」


 そこには、さっきギルドで提示された報酬とは、文字通りケタが違う、わたしがこれまで見たことも聞いたこともない金額が書かれていた。

 これはこれで、違う意味で予想外の金額だったので、わたしはフリーズしてしまう。


「……あの、これ……間違ってません?」

「あ、なんでだよ?」

「だってこの金額って……お店で売ってるアイテムの相場より、かなり高いじゃないですか」


 ダリヤさんもわたしの肩越しに紙を覗き込む。

 唖然としたように「マジか」とつぶやく声が耳に届く。


 ゴッズさんは、そんなわたし達を眺めながら、さも当然といわんばかりに言葉を続ける。


「前に言ったか覚えてねえが、俺は商いに関しては一切の忖度はナシだ。ダメなもんに値はつけないし、良いもんには正当な対価を払う」


 ゴッズさんは、太い胸板の前で腕組みし、フンと鼻を鳴らす。


「嬢ちゃんの持ってきたアイテム、全部が全部、Sランクだ。んだよ」

「そ、そうなんですか……?」

「店で売っているアイテムのほとんどがC~Dランク。高級店でもSなんてそうそう拝めねえ。だから、こんだけの値がつくのは当たり前だ。正直、これが全部元はゴミだったなんて、到底信じられねえよ」


 わたしは改めて紙に書かれた金額に目を落とす。

 たった一回のゴミ拾いでこんなに稼いでしまえるのなら、これを繰り返していけばあっという間に大金持ちだ。


 お金ってこんなに簡単に稼いでしまっていいものなのだろうか。


「んで、どうするんだ。ウチで売るのか、売らねえのか」

「はい、はい! 売ります! 売らせていただきます!」


 わたしは飛びつくようにそう答えると、いそいそと金貨袋を取り出し、ゴッズさんからアイテム引き換えの代金を受け取った。


「まいどありよ」

「ありがとうございました、ゴッズさん! また来ます!」


 こうして無事に、アイテムの換金も成功。

 いや、その収入は予想以上だった。

 

 金貨でずっしりと重くなった袋を、マジックバッグの中に放り込んでから、わたしはホクホク顔でゴッズさんのお店を後にした。



 

――――――――――――

 ステータス

――――――――――――

ミユル(本名:フレデリカ・ミュルグレイス)

性別/女

冒険者等級:星なし

称号/ゴミ令嬢、ソロ討伐者、ホームレス、不審者、他力本願、人助け初心者、お酒初心者

好き/クー、食べもの全般、お風呂、ハチミツ酒、かわいいもの

嫌い/虫

スキル/《ゴミ》

効果:ゴミをリサイクルする能力

   弱い仲間を強化する能力(?)

――――――――――――

――――――――――――

ダリヤ

性別/女

冒険者等級:三つ星

称号/魔法使い、セイバー、ベテラン冒険者

好き/ハチミツ酒

嫌い/実家

スキル/黒魔法

効果:攻撃系魔法を使いこなす能力

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