【2300PV感謝!】 俺の国って絶対に詰んでるでしょ? ☆弱小王国を建て直す若き王の奮闘譚☆
そうじ職人
プロローグ
ロレーヌ王国の日常
Episode.001 俺の国って一体どこに救いがある?
チュン、チュンチュン、チュン、チュチュチュチュチュ……
高級な白い絹糸で編み上げられたレース越しに、
「もう朝か……」
薄く
「お目覚めに成られましたかな?ラウール様」
そこにはグレーの髪に、執事服をパリッと着こなしている初老の男性が、
「おはよう。セバスチャン」
俺は執事に声を掛けた。
「ラウール様。私めの名前は生まれ
「じゃあ、おやすみ。シャラク」
俺は執事に声を掛けると再び、意識が深淵へと沈み込んでいく。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
チュン、チュンチュン、チュン、チュチュチュチュチュ……
(俺の耳元に朝の訪れを知らせる、小鳥のさえずる声が……って!)
「また一段と腕を上げたもんだなぁ!」
俺は怒りと共に、本日もシッカリと不機嫌な朝を迎えた。
執事は薄手のガウンを手渡しながら、
「この鳥はヤマシジュウカラの
「別に小鳥の特徴なんて聞いてないから!」
俺は薄手のガウンに袖を通しながら、シッカリと釘を刺した。
遥か南方の通商連合では、ツッコミともいう。
お約束らしいのでここら辺りで簡単に自己紹介すると、俺の名前はラウールと言う。
今年で19歳だ。以上。
すかさず執事のシャラクが、口を挟んできた。
「ラウール様のお名前だけは、先程から連呼しておりますぞ。本名を『ラウール・ドゥ・ロレーヌ』と仰る、若きロレーヌ国王よ」
(こんのーぉ! また勝手に心を読みやがったな。この老いぼれ執事め!)
すかさずシャラクが、口を挟んできた。
「ロレーヌ国には優秀な読心魔法の達人にして、ニヒルでダンディーな執事のシャラクが、長年仕えている」
「どこがダンディーだ!
そういう事で自己紹介は、ジジィが不在の折りに改めて行いたいと思う。
「そうは言っても、ラウール様。読心魔法は相手の思考を読み取る魔法。繊細な魔法制御と燃費の悪い膨大な
「アッパラパーって……朝っぱらから俺に対して、危険な魔法を使ってんじゃねーよ! っていうか『アッパラパー』の件は初めて聞いたぞ?」
急にモジモジしながら、シャラクは言った。
「だって。いきなりこんな話をして執事に雇って貰えなかったら大変じゃもん」
「ツンデレかよ! ってより、俺の年齢の三倍は長く生きて居ながら、何故に今更言うかなぁ?」
俺は執事としての手腕も確かだが、元どこぞの国の宮廷魔導師だったことを思い出した。
(アッパラパーって……ひょっとして、本当にどこぞの国でやらかしたのか?)
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
暫らくすると、静かに扉をノックする音が聞こえた。
俺は目線でシャラクを
「おはよう、クリスティーナ。入ってくれ」
その言葉に合わせて、シャラクが扉を開いた。
「おはようございます。旦那様」
外出用の聖職服の上から聖女のローブで身を包んだ、婚約者のクリスティーナが静かに入室してきた。
「クリスティーナ。今日もこんな時間から外出かい?」
クリスティーナは、シルクの様に滑らかで腰まで届く金髪を、
顔立ちは元々童顔ではあるが、こうして聖女
すると聖職者のみが行える、
「わたしは聖女ですから、朝のミサから教会に居なければなりませんわ」
彼女の使う聖魔法は、特別なのだそうだ。
今の
しかし彼女が、毎日祝福の
(クリスティーナが居なかったら、とっくに
「俺は、このロレーヌ国をまともな国に再建してみせるぞ!」
ついつい抑えがたい衝動が、言葉になって盛大に漏れ出てしまった。
「健全な財政の国の王に、俺はなる!」
「そんなこと改めて宣言なさらなくっても、
クリスティーナは軽く
「ところでクリスティーナって、婚約者としてお城に入って二年経つんだっけ?」
クリスティーナは、優し気な微笑みを
「もう間もなく三年目になりますわ」
「ところで
クリスティーナは、コロコロと笑い掛けた。
「旦那様ってば、冗談ばっかり。聖女が結婚できる訳がございませんわ」
「あはははは……そうだよね知ってたよ。ところでクリスティーナは、婚約者って意味知ってる?」
「もちろんですわ。将来を
(絶対に分かってない!)
俺は心の声をそっと胸に秘めて、クリスティーナに言った。
「そろそろ朝のミサの時間だね。行ってらっしゃい」
俺の心の中では、滝の様な涙で
何やら
きっと、読心魔法を使っていたに違いない。
「それでは今日も、聖女の務めを果たして参りますわ」
クリスティーナは聖女らしく優しく微笑みながら、王妃らしく優雅にカーテシーを取り一礼して外出して行った。
「なぁ、俺って結婚出来るのかな?」
俺は誰に問うでも無く、
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
昼を迎える頃になると、又も扉をノックする音がする。
朝とは一味違う、元気いっぱいな調子だ。
俺は執務の筆を止めると、
シャラクが扉を開くと、いつもの様に妹のサーシャが飛び込んで来た。
俺の座る執務机に近づくと、広げられた政務の書類を
「お兄様、あたしの婚約の話って決まりましたか?」
サーシャも今年で16歳だ。
良く亡き母親に似ていると言われている。
銀髪に薄茶色の瞳は
アルビノが持つ特徴であるそうで、黒髪黒瞳の俺とは印象からして真逆な
本当に血が繋がっているのか? と疑いたくなるような、お
少なくとも去年までは。
しかし最近は、ほぼ毎日の様に押しかけてくる。
もはや
「昨日から進展なんて望めないぞ。それでも一件だけ縁談の話が来ていたな」
サーシャは前のめりになって、見合い写真に手を伸ばした。
もっとも写真と云っても、魔法使いが
まぁ、結局のところ
全くの別人とまではいかないものの、大抵のお見合い写真は
そしてお見合い写真には、
サーシャは顔写真は
「通商連合の有力商会って? こんなお店、名前も聞いたことが無いじゃない! しかも三男なんて、仕事の手伝いで苦労する未来しか思い浮かばないわ」
俺もさすがに、その点には同意した。
「だから期待するなって言ってるだろ?」
俺の言葉に詰め寄るように、サーシャは
「お兄様は、このロレーヌ王国の国王なんですのよ。その妹に
俺はサーシャに訊いた。
「じゃあサーシャは、
ちょっと小首を傾げて、
「やっぱり、イケメンは最低条件ね。背はお兄様くらいあれば十分だけど、もう少し高いくらいがベストね。それから一番大事なのは、裕福な資産家ってことかしら? 通商連合ならミツコーシとか? パロッズとかの
この手の話題では珍しく、サーシャが
俺は気軽に続きを促した。
「うん。お兄様には悪いんですが、神聖教国もパスさせて頂くわ。あのクリスティーナ
「残るのは魔法王国か。あそこは絶対に無理だろうなぁ」
俺の言葉に、サーシャも素直に
(俺の国って一体どこに救いがある?)
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