どうやら俺の青春は普通じゃない

@sink2525

第1話 どうやら俺の青春は普通じゃないらしい

 春と言えばやっぱり、綺麗な桜とかだよな。まぁ、もちろん違うが。


 そう出会いの季節だ。そんなことを考える俺の名は九条裕也。


 俺は由比ガ浜高校の校門前に立ち。高校を見渡す。


 これが俺の通う高校か。


 由比ガ浜高校は名門校であり難関校でもある。


 ここの生徒会長は頭が良すぎるあまり友達がいないと聞く。なんで俺が知っているかって? 姉から聞いたからだ。


 俺の姉はこの高校に通っている。どうやらモテすぎて困っているとか言っていたが本当だろうか。


 空を眺める。春が始まったばかりなのに散っている桜。


 待ってけよ俺の青春。期待を秘め歩き始める。


 ここだよな、張り紙を確認した後俺は教室に向かっていた。


 てかこの高校でかすぎだろ。道に迷いそうになったんだが、てか迷ったし。


 1年3組と書いてある教室に入る。


 足を踏み入れるが、その足は止まる。


 やば。


 窓側の席で、背筋を伸ばしていて、長くて整っている髪を垂らし読書している美少女が座っていた。


 もちろん、クラスの連中はみんな釘付けになっていた。


 目の保養だ。


「ちょっと、通ってもいいかな」


 ふと後ろから声をかけられる。


 俺は後ろを向き、さっと退く。


「ありがと」


 ニッコリと笑う彼女に俺も自然と笑みが零れる。


 って、何してるんだよ、俺普通にキモい事してるぞ。自虐をして俺は教室に入る。


 そして、神様は俺に味方をしているみたいだ。


 俺の席はあの美少女の隣だった。これって青春が始まる予感がするぞ。ワクワクが止まらない。


「キモいんだけど」


「へ?」


 俺は横に鞄をかけ座ろうとしていた時だった。


「だから、キモいんだけど」


「へ?」


「だってその席って環奈の場所だと思うんだけど、そこに座るのってキモくない?」


「あのー多分、君の右側の席だと思うんだけど」


 俺は窓側の席で、彼女の席は俺の右側の席。


「ふん」


 あれ、なんか怒ってない? 俺が被害者だと思うんだけどな。


 俺は自分の席に座る。


 左側を向く。


 窓から見える景色に驚く。なんて綺麗なんだよ。ここは世界で一番綺麗な場所だと思う。そう思ってしまうほど綺麗だ。


 やっと俺の高校生ライフが始まるぞ。


「黄昏るのやめてくれない? 気が散るんだけど」


 あのーまだ登校初日ですよ? この子はあれか、人に気を遣わないタイプか。 そういう子ちょっと苦手だな。


 昔苦い体験をしたんだよな~。


「いや、ただ外の景色を眺めていただけなんですけど」


「ふん」


 俺の顔を一瞬見て本を読み始める。


 俺って前世でなにか悪い事したのか? いや、確実にしてるな。


 これが初日かよ。


「ねえって、ねえって、聞いてる?」


「いや、聞いてないな」


 突然、前に座っていて、可愛いって言われるために生まれてきたであろう彼女は喋りかけてくる。


 俺は咄嗟に返事をする。


「ちょっとー聞いてるじゃん」


 明るい声で彼女は言う。まだ名前も知らないのに親しそうに。


「だから、明日遊びに行かない?」


「?」


 彼女は何を言ってるんだ? 明日遊びに行かない? 今日ってエイプリルフールじゃないよな。


「誘う人間違っていませんか?」


「いや、君に言ってるんだけど」


 口を尖らしながら言う。


「俺たちって初対面ですよね」


「うん、そうだけど」


「いや、その」


「否定権ないから、大丈夫だよ」


 うん、何も大丈夫じゃないよ。それになんで初日で否定権を失うんだよ。


「イチャイチャは外でやってくれないかしら?」


「イチャイチャではないよ、これはあれだコミュニケーションだ」


 胸を張れないけど、胸を張って言う。


「ふん」


 俺はなんか言うと必ずふんって言うのやめません? その傷つくので。


「じゃあ、後でね~」


 それだけ言いまだ、名前も知らない彼女はスマホを取り出し前を向く。


 これは、なんて言えばいいんだよ。


 そう思い再度、窓をから見える景色を眺める。


 ここ一番綺麗な場所じゃないな。



 「では、明日」


 先生の一言でみんなは教室を出て行く。


 初日ってこともあって、みんなはスマホをすぐに取り出し。新しくできた友達と連絡先を交換している。


 青春してるな~。


 ちなみに俺は、あれだ。交換とかめんどくさいことはしたくないから―自分で思って恥ずかしくなる。


「裕也~連絡先交換しよ」


 俺の名前を言甘い声で囁く、水樹沙也加。そう、俺の前に座っていて明日一緒に遊びに行く人だ。


「いいよー」


 明るい声で俺は返事をする。


 スマホを取り出し、連絡先を交換する。


「ちょー可愛いーこのアイコン」


 どうみても、このアイコンより沙也加の方が可愛いと思うが気にしないでおこう。


「じゃあ、夜に連絡するねー」


 そう言い、教室の外で待っている友達に向かって歩き始める。


 俺は今夢でも見ているのか、あの可愛い子の連絡先がこのスマホに入っている。


「さすがにキモすぎるわ」


 俺の隣の席の涼森彩音が言う。今日だけで10回は言ってるよな多分。


「俺ってそんなにキモそうに見えるか?」


「うん、キモすぎて本読めないレベル」


 冗談であってくれ、てか冗談だよな。


 俺たちはまだ知り合って数時間程度なのにもう、仲良く? なっていた。俺の勘違いかもしれないが。


 彩音は立ち上がり、俺のスマホを奪う。


 数秒程して、俺に渡す。


 連絡先が増えていた。涼森彩音と書かれて初期アイコンだった。


 そして俺に指を指す。


「地獄に落としてやる」


 そう言い、教室を出る。


 俺は数秒程固まり、考える。


 もしかして、俺の青春って普通じゃなくね。


 

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