異世界は物語のような綺麗な場所ではない。

田んぼの左上

第1話「異世界」

 今日俺、いや俺を含めた中学校の全校生徒が異世界に転移した。学校ごとだ。俺はたまたまトイレにいたが、学校中から悲鳴が聞こえてきて悟った。今何かが高校を襲撃していると。その次に女子生徒の喘ぎ声、鳴き声、やめて!と懇願する声でやばい奴らだと分かった。そして窓から見えた空にドラゴンが飛んでいた。


 そして俺は1人トイレの中で思考を巡らせた。おそらく学校を襲っているのはゴブリンやオークのような魔物であること。女を嬲る魔物はこの辺りだというのは異世界モノでは普通であると思う。それから異世界に来たからには少なからず何かしら戦う方法があるはず。自分の能力を確かめたい。そう思ったところ、目の前にステータスが現れた。普通ではあるが称号に冷徹、とある。あらゆる場面でも冷静に思考を巡らせることができるという補正がかかる。次にスキル、祝異世界という文字と共に3つまで好きなスキルを選べるというモノだった。


 1つ目に選んだのはコピー、目の前で使われた魔法、技術をコピーし一回まだ使う能力。2つ目にストック、本来魔法陣や使い捨ての魔法また、覚えたての動きを何回でも使えるようにするスキルだがコピーした魔法や技術にも対応しているらしい。3つ目が隠密、3つの中で唯一の生存スキル。他が優秀でもいきなり対面でコピーしてすぐに戦えるわけがないからな。それから襲ってきた何かは女子生徒を襲ったからか男子は逃げ出せたらしい。そいつらと安全に合流するたまにも必要だと思ったからだ。


 一通りの情報整理、準備が終わったからトイレを出て男たちのところへ集合した。隠密は思っていたよりも万能で斥候のようなゴブリンも見張のゴブリンも俺には気付いていないみたいだった。


 合流した俺らは学校を探索することにした。4人1組のチームに分かれそれぞれのフロアを探索する。俺らは同学年のいる3階だ。おそらく相当惨いモノを見ることになるだろう。俺は称号の効果で大丈夫だろうが、他の3名は知らない。


 探索を初めて3分後手前から3つ目のクラスに差し当たったところで声が聞こえる。女子生徒の声だ。その声を聞いた1人の男が言った。


「助けよう」


と、俺は反対した。


「反対だ、先を急ぐ」


他の奴らは黙っている。


「俺の彼女なんだ、助けさせてくれ」


「ダメだ、危険だ」


「敵は一体じゃないか!」


「それでもだ」


「なんでだよ!」


物分かりの悪いバカはこれだから嫌いだ。冷静に考えればわかることを考えようとしない。物語の主人公にでもなった思い上がりをして甚だしい。


「第一にメリットがない。助けたところで心は病みきっている、戦力にならない。第二に負傷している人間を連れて魔物の群れと遭遇すれば俺らが危険だ。第三に、どうせ自分から命を断つ。よって時間の無駄、次のクラスを見に行く」


「じゃこれはなんのための探索だよ!生存者を探すんじゃねぇのか!」


「そんなわけないだろう?目的は敵の調査だ、生存者がいたとして俺らにそいつらまで守る力はない」


「俺は行くぞ」 


おそらくこいつはきっと物語の主人公なんだろう。仲間を見捨てられない、困ってる人を見捨てられない。すぐに騙されて失敗するか、自身の力を過剰に信じて無様に死ぬタイプだが味方との対立はこの状況ではあまりよろしくない。


「1分だ、お前1人で救ってこい。時間内に出来なかった場合、お前が死んだ場合、俺らは先に行く。」


「え…お前にはクラスメイトを思う心はないのか!」


「ない。」


「お前…ッ!」


相当頭に血が昇っているな。


「いいか?俺らは中学生で数年前までランドセル背負ってたんだぞ?そんな奴らがいきなりレイプなんてされてみろ、立ち直れるわけがない、立ち直れたとしていざという時にトラウマを思い出してどうせ死ぬ。それに彼女だけ生き残っても自分を責めてしまう。ここで救うことは絶対に間違いであるとは言わないが最適解ではない。お前らのカップルごっこで関係ない人を殺そうとするな」


「う…1分で助ければいいんだろうな」


こいつはバカなのか?なぜのそんな流暢にしてられるんだ?


「もうその発言から1分はたっている。もし本気で助けたいならすでに助けている。まぁ一度は見捨てたお前らが死に物狂いで助けるなんてはなから思ってないがな」

 

 俺はこの探索でたまたま見つけたゴブリンメイジの基礎攻撃魔法を取得した。これでしばらくさ生き残れるだろう。女性はほば死んだと考えていいだろう。



              次回「管理人」

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異世界は物語のような綺麗な場所ではない。 田んぼの左上 @tanbonohidariue

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