俺は追加戦士じゃねぇって!!
恋愛を知らぬ怪物
プロローグ
―――世界に危機が訪れる時、五人の戦士が立ち上がり、悪を討つ―――。
「チャーッカッカッカ!!燃えろ、燃えてしまえ~い!!」
昼下がりの街中を、堂々と闊歩する怪人。ライターのような右腕から炎を噴出し、建物や街路樹、人々を燃やしていく。
背後には黒いボディスーツを着て、幾何学模様の描かれた仮面をつけた雑兵たちが整列して付き従っており、まさに『侵略』というべき光景がそこに広がっていた。
怯え、逃げ惑う人々は、しかし希望を捨てていない。
なぜなら彼らには、頼れるヒーローがいるのだから。
「―――助けてぇえええええッ、『ソルジャーズ』!!」
少年が叫ぶ。
涙を流し、全身を恐怖に震わせていても、勇気をもって『彼ら』を呼ぶ。
「ソルジャーズぅ?チャーッカッカ!残念だったな小僧!奴らは来ない!奴らは今頃、この『チャッカージャビル』様の仕掛けた火柱爆弾の解除に奔走している!万が一解除できたところで、この場所に来るにはまだまだ時間がかかる!その前に、お前たちは死ぬのだ!!チャーッカッカッカ!チャーッカッカッカ!!」
「誰が来ないって?」
「んなっ、その声は!?」
嘲笑を遮り、高台から声をかける青年。
彼は不敵に笑って跳躍し、チャッカージャビルと少年の間に割って入る。
そのまま片手に持った、柄の部分に鎖が巻き付いた剣を振るって、チャッカージャビルを吹き飛ばした。
「ぎゃぁッ!な、なぜお前がここに居るんだ!ソルジャーレッド!!」
「へへっ、頼れる仲間達のおかげだぜ!―――剣気解放!!」
『レッドソルジャー!!』
青年が錠前に赤い鍵を差し込み、捻ると、剣から力強い声が響き、全身真っ赤なスーツ姿に変身する。
聖剣ブレイブレードと聖なる鍵の力を操る五人の戦士、ザ・ソルジャーのリーダー。
彼こそが勇気と情熱の赤き戦士、レッドソルジャーなのだ!!
「くそっ、やれぃ!イッペソーツ!」
「ジャコッ!!」
幾何学模様の雑兵たちが、三叉の槍を手に襲い掛かる。
レッドソルジャーは少年に逃げるように言い聞かせ、容赦なくイッペソーツ達を蹴り飛ばし、斬り捨てる。
イッペソーツでは傷一つ付けられないと悟ったチャッカージャビルは「どけぃ!」と怒鳴って、レッドへ攻撃する。
腕から噴出した炎をバックステップで回避し、ブレイブレードをクルクルと回転させる。
「あちちっ、その炎、ヤベェな!だが、炎には―――」
『ウォーターパワー!!』
「水だよな!!」
「な、なにぃ!?」
青い鍵を錠前に差し込むと、刀身から大量の水が噴き出し、襲い掛かる炎を吞み込んだ。
チャッカージャビルはたまらず後退し、地団太を踏む。
「なぜお前が水の力を使っている!?レッドソルジャーは炎の力しか使えないはずでは!?」
「残念!炎が一番使いこなせるってだけで、他の力も使えるんだぜ!」
「ぐ、ぐぬぬぅ~!!ブルーがいないなら、まだ対処可能だと思ったのにぃ~!!」
「へへっ!じゃあ、これで終わりに―――」
「させると思うか?」
「ぐわぁっ!?」
必殺技の構えを見せたレッドだったが、意識の外からの攻撃に地面を転がる。
起き上がった彼の前には、テンガロンハットを目深に被った紫色の戦士が。
「お前は!」
「ネガソルジャー様!」
「残念だったなレッド。お前一人でコイツを止めに来る事は予測済みだ」
銃口をレッドへ向け、引き金を引く。
拳銃と呼ぶには少々大きすぎるソレは、戦士の鎧であっても防ぎきれないダメージをレッドへ与えた。
さらに地面を転がる彼を、ネガソルジャーとチャッカージャビルが嘲笑する。
「チャーッカッカ!形勢逆転だなレッドソルジャー!」
「二対一だが、卑怯と言ってくれるなよ?」
『ジャークチャージ!』
「ぐっ………!!」
マガジン部分に鍵を差し込み、捻る。
不安感を煽る音楽と共に、紫色のエネルギーが銃口に集う。
レッドは迎撃しようとブレイブレードを構えるが、痛みのせいで動きが遅れ、間に合わない。
『ジャークシュート!!』
「終わりだ、レッドソルジャー!」
極太のレーザービームがレッドを襲う。
紫色のレーザーは無防備な彼を容赦なく呑み込み、大爆発を起こした。
―――が。
「ギリギリ、間に合ったな」
「ッ、お前は!!」
爆炎の中には、無傷のレッド。
聞こえてきた声にネガソルジャーが振り向くと、そこには五つの人影が。
「皆!爆弾を解除できたんだな!」
「ああ。少々苦戦したが、問題ない」
「待たせてごめんねっ、レッド!」
「私たち六人が揃ったなら、もう大丈夫です!」
「絶対に勝つ」
「―――や、やってやろうぜ!」
『ZASTERDRIVER……!!』
青、黄、桃、黒の服を着た四人が剣を構え、良い感じのセリフを言えずにどもった少年が機械的なバックルを腰にあてがう。
四人がレッドのように鍵を構え、錠前に差し込むと同時、少年は懐からカセットテープのようなモノを取り出し、ベルトに装填した。
『SET、ZASTERD』
「「「「剣気解放!!」」」」
「変身」
『ブルーソルジャー!』
『イエローソルジャー!』
『ピンクソルジャー!』
『ブラックソルジャー!』
『BREAK………!』
『Get a Forbidden power! ZASTERD!!』
四人がレッドのようなスーツを身に纏う中、一人だけベルトの上部を叩き、瘴気に包まれ変身する。
その姿は歪で禍々しく、どこか神々しささえ感じさせた。
「ほら、名乗るぞレッド」
「おう!―――勇気と情熱の戦士!レッドソルジャー!!」
「知略と冷徹の戦士、ブルーソルジャー!」
「陽気と元気の戦士!イエローソルジャー!」
「魅惑と慈愛の戦士。ピンクソルジャー!」
「強靭と無敵の戦士………ブラックソルジャー!」
駆け寄ってきたレッドを中心に、横一列に並ぶ五人。
各々がオリジナルのポーズを取り、勇ましく剣を構えるが、一向に名乗りが終わらない。
我関せず、と言った姿勢を取っていた最後の一人へ、全員から非難の視線が突き刺さる。
俺は別に……と、最後まで抵抗した彼だったが、渋々ポーズを取り、名乗る。
「……さ、災厄の戦士。ザスタード」
「「「「「我らッ、戦士戦隊!ソルジャーズ!!」」」」」
六人の背後が爆発し、名乗りが終わる。
爆炎が収まったと同時に、レッドがザスタードの肩を叩いた。
「なーに名乗りを恥ずかしがってんだよっ!」
「いや、恥ずかしがるとかじゃなくって、俺戦士じゃない……」
「おっしゃァッ!全員揃った事だし、行くぜぇええええっ!!」
「全く。後先考えずに突撃とは」
「でもでも、それがレッドの良いところだよね!」
「私たちだけでは、つい一歩引いてしまいますから」
「………とにかく、倒す」
一人、また一人と駆け出し、チャッカージャビルとネガソルジャーの下へ向かう。
怪人と戦う五人の戦士。この世界では当たり前の光景。
それを遠巻きに眺めていたザスタードは、深く溜息を吐いて、仲間達に加勢した。
(………どうしてこうなったんだか)
辟易したように心の内で呟きながら、しかし彼の口角は、確かに上がっていた。
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