ギターバトル!
YOUTHCAKE
第1話 夢劇場
俺は、京都府右京区は梅津段町に住んでいるギタリスト。寺町秋生(てらまちあきお)。35歳。プロギタリストとして、京都府内で活躍しているインディーズミュージシャンのオケ用レコーディングギタリストを行う傍ら、今日のような休日には、京都市内の某所に現れ、ギターを演奏する。
今俺は、音楽スタジオ兼自宅であるレコーディングルームにて、今日のストリート演奏のギターをセレクト中。今日はどれにしようかなあ。
俺が手に取ったのは、ドリームシアターというアメリカのプログレメタルバンドが擁する、超絶ギタリスト、ジョンペトルーシのシグネチャーギター。JP60のマジョーラカラーだ。もちろん、アーニーボールミュージックマン製。スターリングじゃない。
メサブギーのレクチファイアのヘッドに、4発のキャビネット。そして、モニタースピーカーを2発。それにPAとPC、ペダルボードをトヨタのTANKに載せて、走り出す。いっけね、ギターを乗せ忘れたと、一度家に戻ったのは、ココだけの話だ。
鴨川デルタといえば、鴨川が二手に分かれ、三角州をつくる土地になっており、その場所には、トランぺッターやドラム奏者他沢山の音楽家がストリートで演奏をしている区域になる。
俺はそこに車を運び、駐車場からほど近い広場に、台車で機材を運んで、ポータブル電源で、アンプを起動させた。
アンプをスタンバイ状態からオンにすると、「ジョア~ん」という束感のある歪みの音がした。ロケーションに合わせて、パラメーターを微調整し、心地の良い音を模索する。
ここだというところで、ノブを止め、PAと接続し、PCのDTMもリンクさせる。電源の順序を間違えて、爆音で「ボォン!」と音が鳴るのは、俺がまだまだ未熟である証拠だ。しかし故障したことはない。さすがジャパンクオリティ。ONKYOのPAだ。
さて、さっそく、DTMで打ち込んだドラムとベースとが錯綜し、ジョンペトルーシのアルバム、「サスペンデッド・アニメーション」の超絶技巧曲、「トンネルビジョン」の冒頭部分が京都の町に放たれる。
俺は、曲の始まりからしばらくして、弾き始めた。テレレレ~という音は、少しチャルメラを思い起こさせる音の組み合わせだ。
すると、開放弦の部分を弾いている時に、通りがかったアメリカ人とみられるもじゃもじゃ頭の若い白人男性が、僕のギター演奏を食い入るように見ていた。
後で聞いてみると、彼はその曲がどう展開するのかが気になっていたらしい。かれにとってみれば、知らない曲だったのだ。
俺は、タッピングがふんだんにちりばめられた指板を縦横無尽に走るフレーズを走り切ると、まだ曲が終る前に、彼からの熱烈な拍手を浴びた。
曲を弾き切ると、彼は、俺の弾いていたギター(このときにはスタンドにたてかけていた。)に手を伸ばし、「弾いてみたい。」と言うではないか。
俺は、彼にギターを渡し、「自由に弾いてみな」とばかりに、「FREEDOM!」と言って見せると、途端に彼の眼はさらに輝きだした。
彼は、俺のJP60の5,6弦にピックスクラッチをすると、「Overture1928」のメロディ部分を弾き出した。
俺はさっそく拍手喝采。彼のまだ粗削りだが、俺と趣味が似通っているセンスの良さ、そして、これからまだ技巧がどんどん備わっていく希望に、胸躍らせ、興奮した。
彼は、もたったり、はしったり、ビビったりしながらも、曲を弾き切った。
「Great!Awesome!Handsome!」と知っている誉め言葉を並べ立てた俺は、さぞ楽しそうにしていただろう、彼とは、肩を抱き合い、「yeah!」といって別れた。最高の一日だった。
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