前世異世界出身害悪キャラは女神の怒りを買いTS転生されました~魔力量が全ての世界で彼女は最高の召喚獣を召喚して成り上がりを期待したのに、どうやらこの世界はゲーム?らしい~

蒼本栗谷

第一話

「アンタ、転生者でしょ」

「え……? てん、せいしゃ? それは、一体……」

「ずるい。どうして『主人公』を選んだの。アンタが選んだから、アタシ『モブ』にしかなれなかった」

「えっ、と……」

「ずるい、ずるい、ずるい、ずるいずるいずるいずるい!!! 折角異世界転生で逆ハーレムが出来るはずだったのに! ”アンリ―ナ”になってイケメンにちやほやしてもらえるはずだったのに!!!! アンタが、アンタが先に”アンリ―ナ”になるから、アタシ主人公になれなかった!!!!」

「————ハァ?? 俺は好きでこの体になったわけじゃねぇんだがァ?? 頭、大丈夫ですかぁぁ??? 難癖キチガイ女」


 女に難癖をつけられたアンリ―ナは演技を忘れ本音をぶちまけた。









 ガタガタと馬車に揺られる感覚がゆりかごのように感じ、夢心地となっている少女の耳に大声が聞こえた。


「おい嬢ちゃん、もうすぐ着くぞ!!!」

「……ん、んんぅ? んーぅ、もう、着いたんだ……」


 意識が落ちる瞬間で呼び起こされた少女はふわぁと欠伸をして軽く伸びをした。そして客席から見える窓の外に視線を向けた。


「——あれが、グロリア学園……?」

「おっ見えたか! あれが最新の召喚儀式を取り入れた世界一の名門校! あそこで嬢ちゃんの価値が決まる運命の分かれ道さ!」

「分かれ、道……」


 少女アンリ―ナは窓から見える目立つ建物を見てゴクリと唾を飲んだ。今後自分がどうなるのか不安です――といった緊張の演技を見せ、顔を俯かせた。


 ——奴隷か、貴族か。この世界はなんって素晴らしい規定を作ってくれたんだ! 素晴らしすぎて反吐が出るわぁ~~~!!!!


 大声で笑ってしまいそうな程の理にアンリ―ナは耐える。

 本当の自分をアンリ―ナは見せてはいけない。あくまで表の彼女は「困っている人を助ける善性のアンリ―ナ」なのだから。その演技だけは崩してはいけない――だって、二度目の人生同じ事をしても面白くないだろう? なんて前世で悪者だった男は考えていた。

 

 女神から提案された二種類の転生儀式。アンリ―ナになる前の男の性格はひねくれていたので煽りながら断った。その結果女神は激怒、強制転生を実行した。

 そうして男が次に目を覚ませば女になっていた。

 

 男は女の己の姿を見て決心した。俺のままってよりかは可愛い可愛い女の子の方が得だし女の子らしい演技でもするかァ~~~面白そうだし、と。

 決心してから男の行動は早かった。前世で見た女性陣、アンリ―ナで見た女性陣の仕草、口調、性格を情報を元に「アンリ―ナ」という人間を作り出した。そんな偽りだらけのアンリ―ナに家族は何も気づかない。


 赤ん坊の頃に決めたお遊びに気づけるものは心を読める存在以外は誰もいない。なので男はアンリ―ナという偽り生活を楽しんでいた。

 


「ここから、私の運命が決まる……」


 馬車から降りたアンリ―ナは不安げに体を抱く。なお内心は「楽しみ~~~~!!!!!!!!!」とテンション爆上げ状態だった。


「行こう。行かなきゃ、私の居場所はない……」


 アンリ―ナは息を何度も吸い、これから過ごす学園へ運命の一歩を踏み出した。

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