いじめっ子、刺してみた。

じゃがいもポテト

プロローグ

目の前にはいじめっ子、僕の手にはナイフが1本、やる事は……1つだけだ。




───────


青先 三月あおさき みつきは殺人鬼の子供である。




「生きてる価値ねぇんだよ、ゴミが」


「お前存在してるだけでうぜぇわ、同じ空気吸ってると思うと死にたくなる」


いつものことだ、気にしない。

誰も助けてはくれない、社会はいつだってあいつらの味方だ、多分……あいつらの言う通り僕は生きている価値はないんだろう。


「はぁ、なんで生きてるの?さっさとくたばれよ」


「やっぱり殺人鬼の息子はキモいね〜。何こっち見てんだよ、気色悪りぃな」


「殺人鬼の血が流れてるってことはお前も人殺したことがあるんだろ?な?だって殺人一家だもんなぁ」


生まれたこの方暴言を吐かれ、暴力を振るわれる事に違和感を覚えた事はない。

だが……だが、『三月も殺人鬼である』と言われるのは嫌いだった、昔から。


(やめて欲しいな、注意したらやめてくれるかな)


そう思いガタッと席から立ち上がり、彼らに目を向ける。

三月に怖気付いたのか暴言が止み、一様に三月を見つめてくる。

三月は気づいていなかったが彼らの瞳の奥には少しだけ恐怖の色が浮かんでいた。


「ねぇ、その……」


そう言った瞬間に「キャァァ」とか「殺される」とか叫びながら蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

ぼくを殺人鬼か何かだと思っているんだろう。迷惑な限りだ。



───────


学校の帰り道、1枚のポスターが目に入る。

最近よく名前を聞くようになってきた宗教団体のものだ。

ポスターの中央部分に大きく描かれた『弱者こそ力を持つべき存在である』という言葉を見た瞬間ナニカが頭の中を埋め尽くす、十数年の間良心によって支配されていた彼の心が黒く染まり始まる。

なぜこんな些細な事で彼の心の均衡が崩れたのかはわからない、だが。

両親が死刑になった後、三月を引き取った親戚の家に着く頃には彼の心は曲解された『弱者こそ力を持つべき存在である』という言葉と黒く染まり切った負の感情に支配されていた。

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