第21話 劣等感の根
学校生活を通じて感じていた「居場所のなさ」は、私の中に深い劣等感を生み出しました。いつも「自分は周りと違う」「うまく馴染めない」という思いが強く、自分が他の人たちより劣っているように感じていました。その劣等感は、学校を卒業しても消えることなく、むしろ日常のあらゆる場面で自分にまとわりつくように心の中に根を張り続けました。
劣等感の根源は、他人と自分を比べることにありました。友人やクラスメイトが自然にできることが、自分には難しく感じられたり、楽しそうに笑い合う姿を見ると、自分はそれに参加できないという思いが胸を締めつけました。「どうして自分だけがこうなのか」「自分がもっと違う人間だったらよかったのに」という自己否定の感情がどんどん強くなり、自分の価値を見出せなくなっていったのです。
特に辛かったのは、自分に対する期待を持つ家族や先生たちの目があったことです。周りの期待に応えられないと感じるたびに、「自分はダメな人間だ」という思いが増していきました。何をしても自分は他の人には敵わない、努力してもそれは無意味だと感じ、いつしか「何をしても無駄」という諦めが心の中に根づいてしまいました。そのため、挑戦することが怖くなり、何かを始める前から失敗を予想してしまうことが多くなりました。
この劣等感が根づくことで、私は自分の意見や気持ちを素直に表すことができなくなり、他人の意見に合わせることで自分を守ろうとしました。しかし、それでは本当の意味での人間関係を築くことができず、孤独感を深めるだけでした。劣等感が自分の行動や考え方に影響を及ぼし、他人に対しても壁を作り、自分自身を守るために心を閉ざしてしまったのです。
この劣等感とどのように向き合うかは、私にとって大きな課題でした。自分を他人と比べず、自分の価値を見つけることができれば、心が少しは軽くなるのではないかと感じていました。しかし、長い間劣等感に縛られてきた私にとって、それは容易なことではありませんでした。周りの人たちと自分を比較することなく、自分らしさを大切にすることは、言葉にするのは簡単でも、実践するのはとても難しいことでした。
それでも、少しずつ「自分だけの価値」を見出すことが重要だと気づき始めました。自分が他の誰とも違う人間であることが悪いことではなく、それが私の個性であり、私自身の価値でもあるということを認める努力をしました。他人と比べずに自分を見つめ、自分の持っている良さを見つけようとすることで、劣等感から少しずつ解放される瞬間が増えてきました。
劣等感は、まだ完全に消えたわけではありませんが、今ではそれを抱えながらも少しずつ前に進む力をつけています。他人と自分を比べるのではなく、自分の中にある価値や可能性を大切にすることが、私の心の安定に繋がると感じています。劣等感と向き合いながらも、自分を受け入れ、ありのままの自分でいられるように少しずつ成長していくことが、今の私にとっての課題であり、未来への希望でもあります。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます