日用(不要)品劇場

根古谷四郎人

プロローグ

「おー綺麗になったな!」

 鳥居の前で落ち葉を掃いていた私は顔を上げる。お父さんがエコバッグ片手にこちらに歩いて来るところだった。我が家は地域の氏神様を祀る神社で、お父さんはその神主。私は学校が休みの日に、掃除やお守りの販売を手伝っている。

「椿の巫女さん姿、皆が来たら驚くだろうなあ。」

「お父さん朝からそればっか……あー!またお酒こんなに!」

「そりゃ久しぶりに友達が来るんだから。おもてなしだよ。」

 お父さんには友達が多く、年に数回、こうして集まる。私も小さいころから可愛がってもらっていて、ほとんど親戚みたいな感覚。お友達は年齢も出身地もバラバラだけど、とっても仲良しだ。共通点は、皆お酒が好きなことと

なら、お酒を飲みすぎないようにする発明とかしたら?」

「椿―。俺は自分の為の発明はしない主義だ。俺の友達もな!」

「なんじゃそりゃ。」

 発明家であることだ。それもって所がポイント。この集まりは、各々が作った自慢の発明を披露する、いわばコンテストでもある。驚いた事に、皆はあらかじめ自分の発明品を誰かに使ってもらっていて、その様子もコンテストで発表するのだ。

「あ、皆来たんじゃない?」

 神社に伸びる一本道の先に、私は十数人のグループを発見する。お父さんが手を振ると、一人がこちらに走って来た。

カナちゃーん!久しぶりデス!」

「おー!トッスィー!来れたんだねー!」

「トッスィー早いって!あ、金山さんご無沙汰してます。」

「あらぁ椿ちゃん可愛い!久しぶりねぇ。もういくつだっけ。」

「18です。皆さん、寒いですから、上がってください。」

 私とお父さんは皆を社務所に案内する。うちに集まると会場はいつもここ。本来は会社で言う所の事務所に当たる場所なんだけど。

「今年は優勝もらったな!」

「あら、それはアタシのセリフ!」

「ふっ、僕の発明には到底及ばないね。」

「青二才が。ワシのを見て腰抜かすなよぉ。」

 皆が部屋の真ん中に置いたテーブルに、持ってきたお菓子やお酒、そして発明品を置き始めた。およそ見た目では、どう使うのか分からないものばかり。それを皆「すごいだろ!」って顔で出している。

「お父さん、私グラスとおつまみ持ってくるね。」

「おっ、ありがとよ!」

「椿チャン、お菓子とジュースも持ってきたカラ、一緒に食べまショウ。」

「はーい!」

「じゃあコンテスト、始めるぞー!」

 お父さんの宣言と、友達の歓声を聞きながら、私はグラスを取りに向かうのだった。

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