第95話 擁立

マスコミの撃退方法とかの共有もしていく中で、リーシャちゃんを担ぎ上げる派閥が暴走し、現当主を捕らえようとした段階で対立は決定的なものとなった。で、現当主は普通に保身を始めたのでまずは身柄を抑えに行く。


残念なことに、現当主の批判はするものの教会勢力自体が今すぐ大きく動いたり戦力を貸してくれるみたいな展開はなかったので自分達で何とかしないといけないのだけど……ここで役に立ったのが避難民達の中にいる冒険者達。


何だかんだで、実戦経験のある奴らは強い。その上、冒険者達が中心になって避難民の男達に声をかけ回ったのか、リーシャちゃんが寝返った兵士と自分達パーティーメンバーを引き連れて領主の館に迫った頃には合計戦力が1000人を超えていた。何なら温泉宿からも七尾が2名派遣され、朱雀のシュカも参加したので明らかに過剰戦力。


そしてテンカがあの現当主を『思っていたより愚鈍ではない』と判断したのは間違ってなく、軽い衝突があっただけで現当主は潔く当主の座をリーシャに禅譲。ほとんど血を流さずに、リーシャは伯爵家の当主となった。なおヘムライ・ガーネットは逃亡したためこっちは指名手配にした。


『暴力で当主の座を奪えるんだなあ……』

『よほど民主的にならない限りは暴力で転覆するじゃろ。

今回はリーシャの方に正統性があったしの』

『……嘘発見器を使用した結果、リーシャの叔父は事が起こった後で自体を把握したけど周知することはせず、か。まあ予想の範疇だな』

『教会勢力としては犯罪の隠蔽を行ったということで、階位を下げそうじゃが抵抗をしなかったことから減刑はされそうじゃな』


これで戦争が起きて現当主の叔父が討ち死にとかしていたら引き継ぎ作業が面倒だっただろうが、そういうことは起きなかったためスムーズにリーシャちゃんは当主の座を確保し、パイロープの街の領主となる。その後すぐに、パイロープの街の領主の方は自分に禅譲した。


「リーシャちゃんが領主を続ける選択肢もあったというかそっちの方が良い思うけど……譲って良いの?」

「……避難地区での実務で1番力不足だったのは私だったので、イツキさんかテンカさんに任せる方が街の人達にとっても良いはずです。それに、無責任に任せる訳ではありません。私も一緒に街の人達を守ります」


ガーネット家の当主がパイロープの街の領主をずっと請け負っていたからガーネット家の当主=パイロープの街の領主という図式が街の人にまで浸透していたが、実際は別なのでこういう手法も取れる。ガーネット家の収入自体は鉱山からもたらされる金銀財宝による莫大な富がある上、他にも複数の利権を得ているから領主をやる以外にも収入はある。


なので領主を降りたところでガーネット家の財政的にはほとんど変わりない。というか徴税で得られる富が少ないからその他の収益を使ってパイロープの街を開発するのが基本方針だったみたい。これどこまで利権とか細分化したら良いんだろうか。


とにかくこれで、自分達のパーティーがパイロープの街の実質的な支配権を握った。叔父側に加担していたパイロープの街の地区長2人は解任され、テンカが街の南東区域の地区長に、ゆかりが街の北東区域の地区長となる。街の東側の外壁の外に避難地区がある都合上、街の東側は自分達もよく活用していたし、リーシャちゃん自身も避難地区の地区長となったことでこの3地区では色々と無茶も出来そうだ。


……こうなってくると自分達のパーティーで冒険者的な活動は難しくなってくるんだけど、その辺は一応対策を考えている。とりあえず今は逃げ出したヘムライ君を捕まえよう。


『ヘムライ君一番に逃げたそうだけど捕まえられそう?』

『既に教会勢力が大規模に捜索しておるからすぐに捕まるじゃろ。

……もう教会内の裁判で階位が3から0に引き下げられており、奴隷化が決定されているのじゃ。犯罪で階位が下がった場合の犯罪奴隷の扱いはそれなりに悲惨とは聞くのう』

『……それって世俗での裁判とは別だよな?』

『別な上、世俗の方が優先されるからこちらが死刑だと判決を下せば死刑+奴隷化となるのじゃ。

……子は親の階位を引き継ぐため、ヘムライの子は親が殺される上に奴隷になるのじゃ』

『この世界のシステムえげつねえな』


リーシャちゃんはヘムライ君を許す気はないようだけど、死刑にするまでは考えていないようなので悪くて国外追放だろう。……となるとヘムライ君は国外追放+奴隷化ということで異国の地で犯罪奴隷としてこき使われるのか。何というか、スパッと殺してくれる死刑よりも凄惨な気はする。


ヘムライ・ガーネットには息子が1人いるようだけど1歳なので孤児院行き。たぶん親の犯罪の事は知らずに育てられるんじゃないかな。……ヘムライ君、赤ん坊の息子と妻を放置して逃げ出したの控え目に言っても屑過ぎない?自分も人のこと言えないけど、流石に情けないというか自業自得感が強すぎる。

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