第61話 ウルフ
丸一日、違法売春宿の摘発に時間を費やしてしまったので日を改めて仕切り直した2024年12月26日の早朝。自分達の泊まっている宿屋にリーシャちゃんが突撃してきたけど、2回目だったからか遠慮なしに扉を開けたため、自分が着替えている姿を目撃されるとかいう過去1番嬉しくない事件が起きた。ちなみにテンカとゆかりは変化で一瞬で着替えが終わるため、パンイチの姿を見られたのは自分1人である。まだパンツを履いている時で良かったよ。
「それて、朝からどうしたのじゃ?」
「東門からウルフが大量に町内に入り込んでいるんです!冒険者の人はすぐに向かうよう指示が出ていました!」
『あー、単独で街を襲い始めたか。蠱毒派に今このタイミングで攻め入られたら酷い目に合うだろうに、リスクを承知で攻めたか』
『昨夜はオーガのダンジョンマスターが夜遅くまで掲示板で雑談しておったし、生活サイクルを読み切ればこの早朝のタイミングで寝ている事はわかるのじゃ。今仕掛ければ、他ダンジョンを食い物にする内の少なくとも1人は攻めてこないことがわかっておったから突撃したのじゃろう』
「また他の門も攻められたら不味そうだけど、他の門は大丈夫なの?」
「それは……わかりません」
『各門を監視している鵺によると他の門にはモンスターの軍は迫ってないみたいだよ』
『それなら単独犯か。わざわざ逆方向の東側から集団で侵攻してくる辺り、この数日間は全部準備期間で仕込んでいた奴だな』
どうしたのかテンカが聞くと、ウルフのダンジョンマスターが動いた模様。犬系統のモンスターは基本AGIが高いから厄介なんだよな。Eランクのモンスターの中では安いから雄なら1体200DPで召喚できるし。……地味に低ランクのモンスターの中では美味しい部類に入るからモンスターを食べてプラス値を稼ぐ元にもなる。
西門には警戒している兵士も多かったけど、反対側の東側の警戒は薄かったのだろう。ウルフであればよく見かけるモンスターなので、少数に分けて東側の森林地帯に送り込めば、この奇襲は可能だ。
ゆかりの別の門についての質問にはわかりませんとのリーシャちゃんの回答だけど、鵺ネットワークの監視網の情報をゆかりから念話で教えて貰った。大量に戦力が残っているなら、初回の侵攻時にはかなり出し渋っていた奴だな。……最後の勇者が地球に戻っているから仕掛けるタイミングとしてはベスト。
急いで東門の方へと行くと、既に一部の建物には火が付いている。……放火をやりやがったか。人類が最も手軽に、簡単に命を奪える手段と言えば放火だ。ウルフは言葉を喋れないモンスターだけど、指示を聞く知能はあるし……ああ、背に乗せているゴブリンが松明を持っているからあいつらが主犯か。
確かショップでも松明は安値な照明として売られていたはず。嫌韓カルテットや渋谷のやべー奴が略奪した物資の中には当然ライターのようなお手軽な火種が大量に転がっていただろうし、ガソリンのようなものも手軽に手に入る。
「消火活動を手伝うのじゃ!」
「ああ。この付近に井戸ってないか?それか防火用のため池とか?」
「井戸はこの近くなら東門の詰め所の近くに」
「いやこれ、水は不味いと思う。油の匂いがするよ」
『鵺によると、天ぷら用の油を大量に撒いているね。下手に水をかけると危ない状態だよ』
『それは消火剤がないと無理だな。破壊消火の方は文句言われそうだし、とりあえず火の方は後回しにしてモンスターの方をどうにかしよう。こっちを対処しないと延々と放火されるし』
……ガソリンじゃなくて食用油を大量に撒いているのか。もうこれ鎮火は無理だろうな。一応、この異世界側も大規模な火災への対策として区画毎に大通りを作っているけど油で橋渡しされている箇所が大量に見える。
腐ってもダンジョンマスターだ。やり口がえげつない。そしてウルフに乗っているゴブリンから仕留めて行くけどやっぱり低ランクが主体のダンジョンなだけあって数が多い。しかもゴブリンを乗せているウルフを、囲うように護衛のウルフがいるから普通の冒険者でも厄介な集団になっている。
……んー、嬉しくないことに死神勇者も昨日この街を出ていたようでマジで戦える面子が少ない。まあ他国もわりと悲惨な状況だし、王都付近にもダンジョンが出来たようだし。日本から来ていた勇者は日本の現状が心配で戻っただろうから大変だあ。
あ、でも赤剣の勇者がいる。しかも前の侵攻時の時よりずっと戦い慣れている感じだから自分達が性の3日間を過ごしている間も真面目にダンジョン攻略とかしていたのだろうか。これならあいつを中心に戦えるなと思ったところで、上空から剣が降って来て赤剣の勇者は一撃で死に絶えた。ええ……。
『何が起こったの?』
『遥か上空から、剣を落としたのじゃろ。ダンジョンマスターの初期のマップは、平面状の上に敵味方の印だけが表示される。故に、味方の印と敵の印が重なったところで剣を手放すよう空飛ぶモンスターに指示を出したのじゃろう』
『はー。これ本当に単独犯かよ。
まあ空からの支援攻撃は散発的な感じか』
『鵺達が一部の攻撃を防いでしまっているけど大丈夫?』
『俺たちも標的だったんかい。
まあ気付かれてなさそうなら良いけど。そもそも普通の剣なら自分の身体には突き刺さらないだろ』
あまりにも簡単に、さっくりと人が死んだのを見て人々は更にパニックに陥る。あ、リーシャちゃんが精神の回復魔法を自分に使った。メンタル丈夫そうな子だったけど、流石に目の前で同じ勇者が死んだら動揺はするか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます