第18話 なんか分かってきたっぽい③


悪神から受けたクエストの内容が、気になる・・・早く《種族一覧》のページが見てえ。そのためにも、仮決め検証をなるはやで実施していこう。


結局、〈遠視〉も上手くいったのかどうかよく分からんかったな。悪神には見つかったけど。


ではその続き、〈聴き耳〉のテストから行うか。


でも、テストの方法どうすっか。ここには俺の肉体以外に音を発するモノが無い。誰かの話声を盗み聞く、とかがこのスキルの本懐ほんかいなんだろうが・・・



・・・


考えた結果、一つの検証方法を思いついた。

単純に耳が良くなっているかどうかを確かめるテストだ。


まず、指パッチンを検証材料に使用することに決めた。これは検証に必要な「定量」のボリュームを出せる方法を探した際、肉体で出せるほぼ定量のサウンドがこれしか思いつかなかったからだ。


何回やってもほぼ同じボリュームで音が鳴る装置・・・として指パッチンを使い、スキル無しの状態とスキルを仮決めした状態で聴力が過敏になっているか否かを判定する。


なお、どちらも自分の耳元で指を鳴らすので聴覚が過敏になっていればそれだけ「うるせーな」となり不愉快になるんじゃね、と思っている。


それでは行ってみよう。レッツゴウ。



・・・



「だあ!うるせえ!!!!がはは!!」



検証は見事に成功した。普通にうるさくて笑ってしまった。

やはり思惑通り、〈聴き耳〉はパッシブ効果として基本の聴力が良くなっている。一見して便利なスキルだが、指パッチンでこれだけうるさいのだ。例えば獣の咆哮なんかを間近で食らったら、耳を抑えてひるんでしまうかもしれん。


やっぱ、無し寄りのスキルだな・・・しかし、久しぶりに仮決め検証が上手くいったことにより俺はご満悦だった。


いいね、次行ってみよう。


〈野犬の嗅覚〉のテストも俺の肉体を検証材料にするしかない。体臭だ。一番汗臭そうなワキでも嗅いでやるか、と思ったがここでひとつ気がついた。


なんか、代謝が止まってる?っていうか。汗を一滴もかいてない。結構長い時間キャラクリに勤しんでいるこの俺だ。少しくらい汗臭い場所があるだろうと思い全身をくまなく嗅いでみたが、ぜ~んぜん臭くない。


そういえば排便の欲求とか、屁の一発でさえしたいと思わんな。キャラクリのこの待機場所において、俺の肉体の時が止まっているとでも言うのだろうか。腹も減らんし、喉も乾いてねえ・・・眠気とかもねえや。考えてみると異常だな。




え~、じゃあこの検証はダメかもな・・・






・・・



「んあ!!!くっせえ!!!!!だはは!!!!」



流石は犬の嗅覚である。まんまと検証は成功してしまった。人の嗅覚ではなんとも無かったのに、ここまで変わるか・・・エグいな。


これでは〈聴き耳〉と同じ理由で、このスキルに低評価を与えざるを得ない。もう町のスラムを歩いたりしたらニオイで死にそうだもんな。え~、ナシで!!



〈記憶力向上〉については実はもう検証内容を考えてある。

今からこのスキルを付けっぱなしにするのだ。そして、良き所で検証の内容や、合間に読んだスキル詳細文等を後で克明こくめいに思い出せるかどうか確かめる。


このスキルの検証が上手くいった場合、キャラクリの最後までこのスキルは付けっぱなしにしようと思う。あまりにもキャラクリと相性がいいためだ・・・便利すぎる。




次の〈信仰心〉は罠なのでしっかりとパスして行く~う。

はい~無視~。ダメで~す。




〈筋力増強〉のターンだ。これは正直鬼門だと思っている。

何故なら、仮決めを行った瞬間バキバキのマッチョになってしまう可能性が高いからだ。それの何が悪いって?そんなもん皆が仮決めシステムに気付いてしまうからっしょ!!


俺はもはや俺だけの優位性として、この仮決めシステムを守りたい・・・そんなマインドになってしまっている。いや、本来なら皆が気づいて、しっかりとキャラクリを堪能できてしかるべきなんだけどさぁ・・・


ここまで頑張ってやっと気づけたんだもの!こうやって考えてしまうってのが人情ってもんじゃないんですか!?そうですよねえ!!




ん・・・いや、ん?そうじゃないのかもしれない。

そういう理由じゃなくて、本当に皆ができるだけ気付かないほうが全体の利益になるのかもしれない。


だって、「精神汚染」の件があるから。アレに気付けるのは偶然、俺のように2ページ目の存在に気づけた人間だけであって。それに気づかずに仮決め検証に乗り出してしまった人はどこかで「汚染」のトラップに引っかかってしまうのだから。


順番、が重要なのだ。汚染を知ってからの仮決め検証。この順番で検証を行える人間はぶっちゃけ極少数だろう。だからこそ、〈筋力増強〉が分かり易く見た目が変化するスキルだった場合、厄介なのだ。汚染の犠牲者が、増えてしまう・・・


どっちなんだ。バキバキのモリモリなのか、シュッとするくらいなのか。

えいや!!俺は意を決し、仮決めを実行した・・・!




・・・




あ~~~~~、微妙かも~~~~~!!!!

この部屋には鏡など無い。なので自分の上腕や二の腕の具合を確かめてみたのだが・・・バキバキというか、パキッてる・・・ぐらいかも。


あ、でも腹筋割れてるわ。アカンな・・・これは、流石に気づくかもな・・・。

いやでもまあ、当人に仮決め検証の意識なんか初めは無いだろうからなぁ。わざわざ腹筋、見ないかも・・・?微妙なトコやな・・・


え~そんでもってスキルとしての性能は多分、良いですねこれは。

詳細文を眺めていただけの時とは違って、実際にこの肉体を眺めてみると評価が変わってきた自分に驚いたんだよね笑


なんの努力も無くこのレベルの肉体が手に入るというのは、序盤的には結構なアドになるだろうと思う。現代人のひ弱な人間の筋力でスタートした場合、ろくに走ったり戦ったりできないだろうからなあ。


まあ、異種族を選択した場合は違うのかもしれないけど。

その時はその時で、人間だった頃の体格はどう反映されるのだろうな。分からん。

【転生後の年齢や性別は今のあなたの状態のまま】とはTipsにはあったけどなあ。



んで次。〈岩肌〉の検証。


・・・


おおお、これも、いいなあ。

【見た目と質感に変化は起こりません】と文言にあるように一見なんの変化も無いようだが、自分で自分をつねったり引っ掻いてみた際に驚いた。


痛みが全くといって良いほど無かったのである。皮膚が分厚くなっているのか何なのか知らないが、シンプルに防御力が上がっている。ワンチャン防刃性とか、あるんじゃねえのかコレ。〈筋力増強〉と〈岩肌〉ってもしや、マストバイのレベルなのか・・・?



結構感動したが、あまり一つにこだわり過ぎるのも良くない。

オーケー次だ。


続くスキルには・・・なんとなくわかってはいたが、軒並み検証が失敗に終わった。



〈美貌〉、〈盗人の手〉は汚染なのでスルー、

〈スラッシュ〉、〈スピア〉、〈スマッシュ〉。



自分一人では効果が分からなかったり、発動自体ができないものだったり。

まあここらへんは正直、やらなくても分かるくらいには俺も検証のルールに気づいてきている。


なので、これに続く「語学」系はあんまりやる価値はなさそうで、「知識」系は滅茶苦茶やりがいがありそうだな、とは思っている。


それでは★印のスキル検証も、このままやっちゃいますかね。


ふう!と一息入れて、俺はまだまだ検証を続けるのであった・・・



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