第11話 なんか確かめるっぽい
〈ポケットサンド〉が土石術だった場合、師範の言っていた「使えるヤツと使えないヤツがいる」の言葉の説明がつく。
魔法は「資質」持ちにしか扱うことができないからだ。
喧嘩術の弟子達の中でも土石術の資質を持った人物は少なかったはずだろう。
それでは検証の時間だ。
俺が今から土石術師の資質と、このまま初級喧嘩術の心得を同時に「仮決め」したらどうなる。これで〈ポケットサンド〉が使用可能になる可能性は高い。
トン
【手持ちのSPを振り分け、スキルと種族を選択してください。
SP:160
→《スキル一覧》《種族一覧》《決定》
▼初級剣術の心得(120)
▼初級弓術の心得(90)
▼初級槍術の心得(80)
▼初級斧術の心得(80)
▼初級盾術の心得(50)
▼『初級喧嘩術の心得(140)』
◆▼家守術マスタリー(200)
◆火炎術師の資質(100)
◆水溶術師の資質(100)
◆『土石術師の資質(100)』
・・・
・・
・
よっしゃ、行くぞ。
「ムンッ!〈ポケットサンド〉!!」
シーーーーーーーーーン・・・・・
不発。まさかの期待外れ。
ンン~~?どういうことだ?〈ポケットサンド〉イコール土石術、の説は間違いだったのだろか。何か別の要因があって発動ができない?
んあ~、閃いたと思ったんだけどな。もしかしたら簡単そうに見えて本当に〈ポケットサンド〉の習得自体が難しくて、師範はあんなこと言ったのかな。今の俺が発動できないのはやっぱり「砂」が無いから、で・・・
はあ、クッソ。一旦忘れよう。
いや~検証が不発に終わると一抹の寂しさがあるよな・・・今はとりあえず、このまま土石術の検証でもやっちゃうか。切り替えていこ。
まず「資質」系の検証として、出来ることは限られている。要の一つである「恩寵」の検証方法が難しいため、単純に魔法が放てるかどうか。これを確かめてみよう。
土石術で覚えられる魔法は〈落石〉だったか。
「よっしゃ、〈落石〉!!」
シーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン・・・・・
え、マジなのか。
まーたこれかいな。おかしくね?何が原因なんだ。なんで逆に喧嘩術だけ上手くいってんだ?こいつは頭抱えるぜチクショウ。
やはり喧嘩術の〈スラム〉が発動できなかったように、何らかの条件が未達成なのか。魔法が打てない原因ってなんだ?魔法なんて詳しくないんだから分かるわけね~っつうの!
・・・MPか?俺は一般日本人だから体内にMPが存在していないとか。
でも俺の体は転生に備えて作り変えられている。痩せて目も良くなってるからな。
例えば俺が今後の種族選択で「人間」を選んだらこのままの姿で転生が実行されるような気がしている。作り変えられたこの姿で。
その場合、俺の体には既にMPというものが存在していると考えられる。だって「人間」で転生スタートした土石術使いがいたとして、そいつが最序盤に〈落石〉を打てなかったら積んじまうもの。転生直後にせめて一発は魔法が使える程度のMPは持っているべきだろう。
いや、この運営は「剣術使い」に武器を支給しないような奴だった・・・
「べきだろう」なんて甘い考えは通用しないのかもしれない。
じゃあやっぱMPも筋トレで体を鍛えるみたいに、絶対数を増加させていかないと魔法を打てるようにはならない・・・ということでいいのか?最初からMPを多く持ってそうな種族なら話は変わるのか?ウムム・・・
「・・・ここにはマナが無いから、魔法は打てない、よ・・・」
優しい男性の喋り声がした、と思ったが振り返ると部屋には誰もいない。
「あのね、こっち、だよ・・・」
室内のガラス張りになっている面に顔を向けると・・・いつの間にか部屋の外の空間にバ~~~~~~カデカい岩の塊が鎮座していた。デカすぎて端っこまで見えない。
ワーオ。目がついてるし、きっとこのお方が喋っとるんや。
良く見るとあのデカい割れ目が口・・・か。
こええええええええええ~~~・・・・
ハッ。いかんいかん、なんか喋らんと。
「あの、すみません黙っちゃって。きっとその、神様ですよね?」
「そうだね、僕は一応、石の神ってことになっている、よ」
「・・・ターシャに言われて、様子を見に来たんだ、そしたら、土石術、使おうとしてて・・・僕、嬉しくなっちゃって・・・」
「でもね、マナが無いから、あ、さっきも言ったけど、打てないんだよね」
なんかこの神様、体に合わずショタみたいな話し方でかわいいお方だな・・・
いや、それよりマナか!成程、異世界テンプレでよく見るな。大気中のマナというエネルギーを利用して魔法は放たれる、という考え方。酸素があって初めて火が起こる、というようなものだな。足りないピースは「マナ」だったのだ。
合点がいったぜ。つまり〈ポケットサンド〉が魔法であるという説はまだ生きているということになるな!思考がドン詰まりになった時にまさに神が現れた・・・!
「ありがとうございます!石の神様。色々と検証していたんですが、行き詰まっていたもので・・・滅茶苦茶助かりました」
「あ、それならよかった、よ。喋ってみて、よかった・・・」
内気な方なのだろう。喋ってくれて俺も嬉しいです。神様。
「あの、ところで神様。ターシャ、というのはもしかして・・・」
「え、うん。さっき来たと思うんだけど。獣の神、レスターシャって、言うんだよ」
僥倖!!まさに僥倖。ケモ様のお名前を知れたでござるの巻き。
しかも獣の神様ときた。最高。やっぱそうですよね。そうでなくっちゃ。
「ち、ちなみに僕はウォリック。もしよかったら、その、覚えてね」
「覚えましたとも、ウォリック様。もし銅像などお見掛けしましたら、ご挨拶させていただきますね」
ウフフ、ウフフ・・・なんだかほっこりした空気が流れる。良さそうな神様ばかりじゃないか。俺が出会う神様たちは。
「ありがと、ね・・・!ターシャには、その、順調にやっていたよって、言っておくよ・・・頑張って、ね・・・!」
「はい!ありがとうございます!」
「土石術、どっちも、良かったら使って、ね、バイバイ・・・」
消えてしまわれた。
最後に「どっちも」土石術だという、最高の情報を。置き土産を残していきながら・・・
やっぱりそうだったんや!!!イヤッホウ!!!
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