第30話 冒険者ギルドのお仕事

久しぶりに冒険者ギルドへやってきた。

5年経つけど、見た目は変わっていないみたい。

様子をうががっていると、髭面の酒臭い中年男性に声をかけられた。


「よう、お姉ちゃん。ひとりかい?見かけねえ顔だが冒険者じゃねえよな」


あら?何処かで見たことがあるわ。

どこだっけ?

首を傾げていると、肩に手を回される。

少しなれなれしいわね。

私は男の手を振り払った。


「意外と気が強そうじゃねえか。嫌いじゃないぜ」


「ローレライ久しぶりね。随分大人びたじゃない」


赤い髪のフィリアさんが駆け寄ってきた。


「フィリアさん。お久しぶりです」


私は頭を下げる。


「あれ、フィリアの知り合いか?」


「ロイド、何言ってんの。前に会ったことあるでしょ?レインくんのお姉さんよ」


「あーあのガキンチョか!スッカリ見違ちまったなー色っぽくなっちまって。良かったら一緒に酒でもどうだ?」


赤ら顔のロイドが、誘ってくる。


「ローレライ、お待たせ」


長身で金髪のレインが手を上げて、私に近づいてきた。


「ごめんなさい。約束があるので、また今度」


チュッ。


「レ、レインもう~こんな所で恥ずかしいわ」


突然、頬にキスをされてしまった。

最近スキンシップが激しいのよね。


「今の男ナンパだろ?気を付けないと」

「ま、まあ、いいわ。今日はカーベルが言っていたギルドの求人を見に来たのよ。もし採用されて顔を覚えられていたら…恥ずかしいじゃないの」


「ローレライなら大丈夫だよ」


見ると受付カウンターの下に、求人の紙が貼りつけてあった。

確かに「回復魔法を使える人」を募集しているみたいだった。




   *




「じゃあ、明日からよろしくお願いしますね」


私は即採用されて、ギルド職員の人に言われた。

本当に回復魔法を使える人が少ないみたい。

「お仕事直ぐにお願いします」って言われてしまった。


「明日から仕事するの?」

「良いじゃない。退屈なんだもの」

「別に働く必要ないのに」


確かに働かなくても、レインの収入だけでやっていける。

というか、まだ働かなくても屋敷にはお金が残っているのだ。


「家にずっと居るのも暇なのよ。それに人助けにもなるじゃない?」


仕事内容は、怪我した冒険者の治療をするらしい。

冒険者は怪我をした時の為、薬草などを持ち歩いているらしいのだけど。

それでも治せない人もいるのだ。

緊急時のお医者さんみたいなものだろうか?


「じゃあ、僕が怪我したら治してもらおうかな?」

「怪我しないでよ。こっちの身にもなって」


以前死にかけた事もあり、レインが怪我すると落ち着いていられない。

ちょっとしたトラウマになっていた。


「冗談だよ。怪我しない程度に頑張るから」


城の仕事があるというのに、冒険者のお仕事もしているみたい。

どうやら頼まれてやっているらしいのだけど。




   *




冒険者ギルドの一室で、女性冒険者に回復魔法をかける。

城で散々練習していたから手慣れたものだ。

ランさんには感謝しなければ。


回復魔法ヒール


淡いオレンジの光が、杖から冒険者の足を包み込んだ。


「はい、終わりましたよ」


「え?もう?ホントだ。痛くないわ」


簡単な回復魔法で直ぐに治ってしまった。

最初の頃よりヒールの威力が増しているみたいで、ひどい怪我でも治せるようになっていた。

治療した人はギルドの受付でお金を支払っていく。

治療費は他のところよりも安めに設定してあるらしい。


「ありがとうございました」


冒険者は会釈をして帰っていった。


「初日は、10人だったわね」

「思っていたよりも好評ですね。喜んでいいのか悪いのか」


私と一緒に居たのは、緑の髪のギルド職員のセシア。

ベテランの職員らしくて、新人の私にずっと付いていてくれたのだ。

ブラウスの胸元が開いており、赤い口紅を付けている。


「なるべく誰か一緒にいるようにするけど、変な客いたら断って良いからね。何かあったらアタシに直ぐいいなよ?」


「ありがとうございます」


まだ初日だけど、変な人いなかったし大丈夫かな?

勤務時間は昼間の5時間のみ。

患者が来なくてもお金が支給される。


「ローレライさん、アンタ魔力って今どのくらいなんだい」

「確か500くらいですね」

「えっ?それ大神官レベルじゃない。こんなところにいても良いのかい?」

「そういうの興味ないですし」


実はランにも言われたことがある。

かつて居たとされる聖女と同じレベルなのでないかと。

流石にそれは大げさだろうって言ったのだけど。


「ローレライ、お疲れ様」


仕事が終わる時間に、レインがギルドへ顔を出した。


「最近よく見る良い男だと思ってたけど、知り合いかい?」

「えっと…」

「恋人です」

「何だ、残念。早く結婚しなよ」


あ、結婚忘れてた。

忘れてはいなかったけど最近忙しかったから。

城を出て自由を満喫していたからね。


「結婚式いつにする?」


私たちは腕を組んで歩きながら、屋敷へと帰っていった。



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