第24話 お見舞い

私は大事を取って、しばらく学校を休むことにした。

マジックポーションを飲んだので、すっかり元気になったのだけど。

大事を取って自宅で療養していた。


レインは、椅子に座って赤い果実の皮を器用にナイフでむいていた。

リンゴによく似た果実だ。

私はベッドで横になっていた。


「はい、食べて。リンの実、栄養があるんだって」

「ありがと。レイン」


私は、切った果実を口に入れてもらった。

口に含むと、甘酸っぱくてしゃりっと音がする。

味もリンゴだわ。




コンコンコン。


「おーい。見舞いに来たぞ」


そんな会話をしていると、カーベルとジョディーが部屋に入ってきた。

お見舞いに来てくれたみたい。


「思っていたよりも、元気そうだわね。良かったですわ」

「ほんと。一時期すっごい心配したんだからな。レインなんて落ち込んで見てられないほどで…」

「ちょ、ちょっとタンマ!」


レインが、カーベルの口を慌てて手で塞いだ。


ペロッ。


「わぁ、手を舌でなめるな。汚い」

「失礼な」


「何やってんの。貴方たち」

「仲良しで良いわよね」


いつ何があるか分からない。

私は、今回の事で嫌というほど思い知ってしまった。




「「お待ちください!!」」


ラルスの叫び声が聞こえ、廊下からドカドカと数人の足音が聞こえた。

どうしたのだろう。


「何やら騒がしいわね。一体どうした…」


バン!


突然ドアが開かれて、見覚えのある金髪の壮年が現れた。

周りには数人の家来が付き従っている。


「「王様?」」


私は驚いて声を上げた。

王冠を被っていないが間違いなく王様だ。


「其方が襲われたと聞いてな。居てもたってもいられなくなり見舞いに来た」


「わたくしは、お待ちくださいと申し上げたのですが。ローレライ様は病人なので大人数では困ります」


ラルスが苦言をていする。


「王様なのですか?」

「初めて本物を見た…」


「ともかく、王様以外は部屋から出て頂きたい。よろしいですね?」


「お前たち、廊下で待っていろ」

「はあ、しかし…」

「仕方ないですな」


渋々しぶしぶ、王様の家来たちは部屋から出て行った。


「おい、レインこれは一体どういう事だ?」

「わたくしにも解るように説明してほしいですわ」

「え、えっと…」


カーベルとジョディーはレインを問い詰めていた。

レインは返答に困ってしまっているみたい。

突然来るなんて、王様にも困ったものだわ。


私は、気持ちを落ち着かせるため深呼吸をする。


「私ね、王女なんだって。今まで隠していてごめんね。お祖父ちゃんが心配してお見舞いに来てくれたみたいで…」


二人は顔を見合わせた。


「ローレライ城に来んか?あそこなら安全だし襲われることも無かろう」


王様は私に優しく話しかける。

確かに安全だとは思うけど。


「レインと離れたくありません。なので以前にも言った通り…」


「ならば一緒に来ると良い。それならば問題なかろう?」




   *




私たちは、馬車で城に向かっていた。

王様がお見舞いに来てから数日が経っていた。

結局、お城にお引越しすることになってしまったのだ。

私は小さい手荷物のみ持参している。


「ん~~~」

「ローレライ、難しい顔をしてる」


「レインは吞気よね」

「僕はローレライと一緒ならどこでもいいもん」


「王様って大げさなのよね」

「そうだね。それだけ心配しているんじゃないかな。いいお祖父ちゃんで良かったじゃない」


レインには肉親がいない。

私の血のつながった親族が、王家とか最初は何の冗談かと思ったけど。


「私も家族だからね」


私はレインの頭を撫でる。


「うん。分かってる。ずっと一緒だもんね」


私たちはぎゅっと手を繋いだ。

これからどうなるのか分からないけれど。

一緒に居ればきっと大丈夫な気がする。



「やあ、いらっしゃい」


城に入ると、ケリー王子が出迎えた。


「まさか、また来るとは思っていなかったわ」


「君の部屋に案内するよ」


ぎゅっとレインが握っていた手に力を込める。

不安なのだろう。


「レイン君は別の部屋が…」


「一緒が良い」


レインはケリーをじっと見つめて言った。


「一緒で良いかしら。初めてのところだし不安なのだと思うわ」


「確かにそりゃそうだな。じゃ、一緒でいいか」



城内は広くて迷ってしまいそうだ。

私たちは長い廊下を歩いて、部屋の前までたどり着いた。


「何か用があったら、部屋に鈴があるから鳴らして。誰か来るから」


「ケリー、案内ありがとう。またね」


「ああ、また」


私とレインは部屋に入り、ドアを閉めた。




***ジョディー視点




今日、ローレライのお見舞いに行った。

街中で襲われてレインが大怪我をしたらしい。

その後、ローレライが回復魔法を使って寝込んでしまったらしい。

しばらく学校は休んでいた。


その後、信じられない人に会った。

「セファース・フォン・ラクシア」王様だ。

想像していた姿よりだいぶ若い印象だった。


王様がお見舞いに?

って思ったけど、どうやらローレライは王女様なんだとか。


急展開で付いて行けない。

ローレライは貴族じゃなくて王族なの?


レインと仲の良いカーベルも詳しくは知らなかったようだった。

彼女は学校へ来るだろうか?

そしたら訊いてみてもいいかもしれない。

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