第4話 魔法の学校

真新しい青い制服を着た生徒たちが歩いている。

女子の制服は胸に可愛らしいリボン、男子はネクタイが結ばれていた。

立派な門をくぐると、茶色のレンガ建ての建物。

私たちは馬車を降りて、「アルティナ王国魔法学院」へ入っていった。


「皆さま、今日からよろしくお願いしますね。このクラスの担任のロレッタ・リーフです。本日は授業は行わず入学式のみですが…」


教壇で立って話をするロレッタ先生。

灰色のスーツを着用し、緑色の長い髪、眼鏡をかけている。

周りを見渡すと同じくらいの年齢の生徒が座っているようだ。

幸いにもレインと同じクラスになれたので一安心していた。

ちなみに一年のAクラスだ。


「ねえ、あそこの金髪の男子カッコ良くない?」


左隣の女子に話しかけられた。

女子が指し示したのはレインだった。

指定された座席があり、少し離れてしまっていたのだ。

レインは廊下側の後ろの席、私は窓際の後ろの席だった。


「そ、そうね」


初日からもう目を付けられたらしい。

やっぱりレインはカッコ良かったのだ。

よく見ると、ちらちらレインを見ている女子が数名いるみたい。


「わたくし、ジョディー・ハインドですわ。貴方のお名前は?」


青い髪で茶色の瞳の少女が名乗った。


「私は、ローレライ・アルフレッドです。よろしく」

「まあ、あのアルフレッド家なんですね」


ジョディに少し驚かれた。

家名が何だろう?


「姉さん…」


レインが私の所に近寄ってきた。

丁度先生が教室から出た後だった。

これから入学式とかで移動するとか聞いたけど。


「レイン?急にどうしたの?」

「何だか見られているみたいで、落ち着かなくて…」


「仕方ないわね。手繋ぐ?」


(かわいいなぁ)


私は右手を差し出した。

彼は戸惑いながらも私と手を繋いだ。

大勢の人混みに慣れていないのかもしれない。

私は前世の記憶のお陰で人混みは慣れている。


「え?あら?知り合いなの?」

「えっと、まあ。弟なんです」


「まあ、そうだったんですね」


ジョディが目を丸くしていた。

レインの意外な一面を発見してしまった。


「アルフレッド家の方々とお知り合いになれるなんて光栄ですわ。是非仲良くしてくださいね」




   *




入学式に参加したので家に帰る事にした。

レインが私から離れなくなったので、女子の視線が私に集まってくる。

彼は美形だと思っていたけれど、まさかこれ程人気があるなんて。


家名の事で、ジョディに訊いたところ国の中でも由緒ある家名だそうだ。

男爵って貴族で下の方だと思うのだけど。


校庭を歩いていたら、前から白いマントを羽織った金髪の煌びやかな雰囲気の男子が近づいてきた。

隣には騎士っぽい人が付き従っているようだ。

位の高い貴族なのだろうか?


「初めまして、俺はケリー・フォン・ラクシアだ。君はローレライ・アルフレッドで間違いはないか?」


どこかで聞いたことのある名前。

えっとどこだっけ?


「王太子殿下?」


レインが驚き口にする。

お、王子様??


「はい。私で間違いないですが」


王子は私を名前で呼び確認する。

一体私に何の用があるのだろうか?


「お前、ちょっと来い」

「えっ?どこへいくのですか?」


丁寧な口調とは打って変わってぞんざいな言葉使い。

私は王子に強引に手を引かれ、学校敷地内に停まっている馬車の方へと連れて行かれる。


「君に会いたい人が居るので会ってもらいたいのだ」


「「姉さん!」」


レインが慌てて私を追いかけてきた。


「突然の事ですみません。わたしは護衛のシルダと言います。ローレライ様一緒にご同行願えますか?」


銀髪の女騎士シルダさんが、頭を下げ丁寧に言葉をかけてくれる。

王子の護衛に付いている人らしい。


「王子、ローレライ様の弟も一緒でよろしいですか?」

「勝手にするがいい」


王子はレインを一瞥し、返事をする。

レインも一緒の馬車に乗せて貰えるようで良かった。

一人だと不安だけど、一緒だと安心する。




   *




馬車に揺られてしばらく経った。

流石さすが王族専用の馬車、揺れがほとんど無い。

私たちはフカフカの椅子に王子と向かい合わせで座っていた。

レインが不機嫌そうにして黙っている。


王子の第一印象は最悪で、思っていたより失礼な人だった。

私は表面上笑顔で取り繕う事にした。

シルダさんはまともな人ようで良かったわ。

行き先はアルティナ城らしい。

王様には、疑問に思っていたこともあった。

手紙で私たちが学校へ来ることになった事とか、直接理由を訊けるかもしれない。




てっきり玉座の間とかに通されると思っていたのだけど。

城の一室に案内された。

客間なのだろうか。


「しばらく待ってろ。直ぐに来ると思うが…」


私たちは緊張して、ソファに座る。


バタバタバタ…バタン!


廊下から走ってくる音が聞こえ、乱暴にドアが開かれた。


「おお、待っていたぞ」


声のした方へ視線を向けると、金髪の王冠を被った壮年が立っていた。

王様だろうか。

想像していたよりも若々しい。

40代後半くらいだろうか。


私は王様に抱きつかれていた。


「おお!会いたかったぞ!本来ならもっと早くに…」


え?どういうこと?

私は驚き過ぎて、固まっていた。


「王よ、落ち着いてください。先ずはローレライ様に説明を致しませんと…」


シルダさんが進言する。


「おお、そうであったな。単刀直入に言おう。ローレライ、実は其方はワシの娘の子供なのだ。つまり、王家の血を引くものなのだ」


「「え?」」


私とレインは顔を見合わせる。


「親に聞いていなかったか?ワシの娘をたぶらかした兵士が、其方の父親に其方を預けていたのだ。その後兵士は亡くなったがな」


「私、今初めて聞きました」


「まさか預け親のアッシュが亡くなるとは思ってもいなかったが。成人したらいずれ其方を引き取るつもりだった。つまりローレライ、其方は王子のケリーと従兄にあたるのだ。仲良くしてやってくれ」




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