白き戦神の冒険譚 ~戦神の魂と経験共有で強くなる~

デクスターvsエーミラティス

アリシアの地震攻撃とアルノアの氷魔法によって敵チームは一時的に混乱状態に陥っている。アルノアはこの隙を見逃さず、チーム全体の安定を崩すため、まずは刀を極めたデクスターを無力化することを決める。

「アリシアさんデクスターを落とします！他のみんなを少しだけ足止めして下さい。」

「無茶なことをお願いしてきますね。でも任されました。聖天の力存分に振るいましょうかね。」

アルノアはデクスターの元へ高速で移動する。

デクスターは無属性ながらも剣術の達人であり、戦況を見極めて的確に動ける存在。彼を倒せば相手が戦術を大きく変更する可能性を減らせる。

アルノアが向かってくるのを察知したデクスターは、即座に刀を構え、迎撃の態勢に入る。地震で揺れる足場すら難なく制御し、冷静な表情を浮かべる。

「俺を狙うとはいい判断だが、甘く見るなよ。」

デクスターの剣技は迅速かつ正確で、近づくアルノアに容赦なく攻撃を仕掛ける。

　デクスターの接近戦能力に対抗するため、アルノアは黒穿に纏わせた氷の属性を駆使する。

氷の壁を即座に形成して斬撃を防ぐが、デクスターは一瞬でそれを砕きながら迫る。

それに対し、アルノアは氷の刃や氷柱を生成して牽制し、距離を保とうとする。しかし、デクスターはそれらを的確にかわし、着実に間合いを詰める。

デクスターの剣の一閃は鋭く、アルノアの防御を切り裂く力を持っている。接近を許せば一撃で不利になるため、アルノアは慎重に間合いを測る。

デクスターは卓越した剣技と冷静な戦況把握少しずつアルノアを圧倒し始めていた。アルノアの氷魔法も十分に対応し、隙を見つけては攻撃を繰り出していく。

「どうした？ お前の魔法じゃ俺の剣には届かないぞ！」

アルノアは懸命に防御しながらも、次第に追い詰められつつある。体力も魔力も消耗が激しく、このままでは敗北が見えていた。

　追い詰められたアルノアの心に、エーミラティスの声が響く。

「主よ、この男は1対1の近接戦闘においてこの場で最も強い。この歳でここまで洗練されてるとは血が騒ぐ。」

「儂が直接相手をする。」

「でも、それじゃお前の力に頼りすぎて……」

「確かにお主はまだ弱いが、相手は刀を極め近接戦闘において叶わん。じゃがお主はまだ強くなり始めたばかりじゃ、その道を極めたものの土俵で今勝てなくてもこれから勝てるようになれば良いのじゃ。」

アルノアは一瞬迷うものの、エーミラティスの言葉を感じ取り、身体を預ける決断をする。

アルノアの姿勢が変わり、目の光が冷たく鋭いものに変化する。黒穿を持つ手には圧倒的な気迫が宿り、まるで別人のようだ。

「さて、始めるぞ。」

デクスターは一瞬で違和感を察知する。その動き、その構え……今までのアルノアとは明らかに異なる。

「お前……誰だ？」

「この体の持ち主ではない。この体に長居すると主への負担が多いのでな、3分だけ稽古をつけてやろう。」

デクスターは構えや纏う雰囲気から格上だと直感する。

デクスターは微かに笑みを浮かべる。「面白い……全力でいかせてもらう。」

エーミラティスは黒穿を刀に変化させ、魔力を纏わせることなく、純粋な体術と剣技で応じる。魔法を使わないと気づいたデクスターも、刀一本で真正面から挑む。

エーミラティスの動きは優雅で洗練されているが、その一撃一撃に圧倒的な重みがあり、デクスターの剣を受け止めるたびに響き渡る衝撃音が会場を包む。

デクスターも一歩も引かず、全力でエーミラティスに応戦する。「お前の剣……重いが、まだ俺は止まらないぞ！」

アルノアが刀でデクスターと相対していることに、実況や観客は大盛り上がりしている。

本人たちは極限の集中に入り全く耳に入っていないが。

エーミラティスは攻撃のリズムを変え、デクスターの間合いを崩そうとする。しかし、デクスターはそれに瞬時に対応し、互角の攻防を繰り広げる。

「なるほど、刀の扱いは一流じゃな。」

エーミラティスはデクスターの実力を改めて認めつつ、彼の動きの隙を探る。

残り時間が少なくなる中、エーミラティスは魔力を使わない範囲で最大限の高速連撃の技量を発揮する。

デクスターの攻撃を受け流しながら、次々と連撃を繰り出す。その速度は人間離れしており、デクスターも防御が精一杯になる。

「クソっ……一つ一つの攻撃の間に隙が見当たらない。」

エーミラティスは歴戦の経験から相手の思考を読み、デクスターの焦りを感じていた。

「ふむ、これでどうかの」

攻撃の合間にわざと間を作り、デクスターの反応を誘い出す。デクスターは待ちに待った隙だと決定打を決めるために技を放つ。

「〈神速一閃〉しんそくいっせん」

　デクスターの最速の一刀が走る。

エーミラティスはデクスターの動きを完全に読み切り、黒穿を刀に絡ませるように攻撃を仕掛ける。その巧妙な技により、デクスターの刀は空中に弾き飛ばされる。

「見事な剣技だった。この体に余裕があれば、もう少し遊んでやれたが……ここまでだ。」

エーミラティスは黒穿の刃先をデクスターの喉元に突きつけ、完全に勝利を収める。デクスターも潔く刀を拾いに行かず、その場で降参の意を示す。

「負けたよ……だが、最高の戦いだった。」

「おおっと！デクスター降参だぁ！！」

「アルノアが勝ちました！これは既に大波乱ですね」

　実況により状況が全体に伝わる。