リヒターとの戦い

リヒターがアルノアを追い詰めようと猛攻を仕掛けている最中、突然アルノアの周囲の空気が変わった。白い光が彼の身体を包み込み、その姿はまるで神秘的な存在のように輝き始める。

「隠していても仕方ないな……全力で行くぞ!」


その言葉とともに、アルノアの魔力が解放される。白いオーラが激しく渦巻き、辺り一面が眩い光で満たされていく。


実況生徒:「な、なんだこれ……!?アルノアが、何かとんでもないことを始めたぞ!」


観客席では驚きの声が広がり、教官たちも立ち上がる。


グレゴール教官:「これは……魔力解放か?しかも、この規模……!」


白い光は木々や地面にまで広がり、全てを純白に染め上げていく。それはただの魔力放出ではなかった。


「領域魔法……!いや、まさか……学生がこんなことを……!」

 他の教官達も騒ぎ始める

 


領域魔法――それは限られた強者だけが使える技であり、空間そのものを支配し、自分の優位な場を作り出す究極の魔法。アルノアの中にいるエーミラティスの領域魔法である。アルノアの魔力が飛躍的に強化される一方で、リヒターのような相手の魔力が著しく阻害される。


リヒターはその異様な光景に一瞬動きを止めた。


「オマエ……そんな力を隠してたのかよ!」


アルノアは内心、重圧に苛まれていた。


「よいか、この試合でこの力を使いすぎれば、次の戦いでは使えなくなるぞ。」


だが、アルノアの心には迷いはなかった。


「今、この試合に全力を出さないでどうする?ここで勝つことが俺にとって何より大事なんだ。」

「リヒターは俺のライバルだ。」


ランドレウス時代のアルノアには、他者に対して闘争心を抱くことはなかった。しかし、この学園での経験やリヒターとの競り合いを通じて、初めて「勝ちたい」という感情が芽生えた。それは単なる闘争心ではなく、自らの成長への強い願いだった。


アルノアの気持ちに応えるように、エーミラティスの魔力が活性化する。

「ふむまだまだ子供じゃのう。しょうがないやつじゃ」


「リヒター、ここで決着をつける!」


アルノアの声が響くと同時に、白い世界の中で彼の力が完全に解放され、勝負は新たな局面を迎えた。

 ――――――――――


「おい、お前ら!アリシアを倒してくれ!」

リヒターの声が仲間に響き渡る。


「リーダーはアリシアだ!あいつを倒せば俺たちの勝ちだ!俺はこいつに全力を尽くす!負けるつもりはないが、勝っても戦える状態にはならないだろう……頼んだぞ!」


仲間たちは即座に反応し、アリシアへ向けて動き出す。一方でリヒターは、アルノアに視線を定め、全身から荒々しい魔力を解き放った。


「隠すのはなしだな、アルノア!俺も本気で行くぞ!」


リヒターが叫ぶと同時に、彼の周囲に荒れ狂う風が渦を巻き始める。その風は嵐となり、彼の体を包み込む。


「暴嵐烈破(ぼうらんれっぱ)!」


嵐のような魔力が一気に高まり、その勢いは領域化された空間にさえ影響を及ぼす。


「領域魔法なのは驚いたが、俺も魔力解放はできる!俺の攻撃力を舐めるなよ!」


彼の荒れ狂う魔力の嵐がアルノアに向かって襲いかかる。風が斬撃のように鋭く、さらに複数の風刃が複雑に絡み合って進む。


「おぉーっと!!?」

「リヒター選手も魔力解放!!学生ながら解放できる生徒が初戦からぶつかり合う」


 グレゴール教官は驚いた声で言う

「これはすごい世代だな」

「ここまで強い奴らが揃うとなるとこの先どうなっていくんだろうな。」


アルノアはリヒターの魔力の圧倒的な力に一瞬目を見張るが、冷静に立ち回りを考える。


「やっぱりお前は強いな、リヒター。でも……俺も負けられない!」


アルノアの領域内で、白い魔力が再び渦を巻く。氷と雷が複雑に絡み合い、アルノアの全身に纏うオーラがさらに輝きを増す。


リヒターはさらに攻撃を畳みかける。


リヒター:「これで終わりだと思うなよ!嵐を超える力があるなら、見せてみろ!」


風が吹き荒れ、アルノアの周囲に木々が倒れるほどの衝撃が走る。しかしアルノアは一歩も引かない。両者の魔力がぶつかり合う。


 リヒターの周囲には嵐が渦巻き、無数の槍が風と魔力で形成されていた。


「嵐槍(らんそう)!」


彼の背後に現れた槍は、次々とアルノアに向かって飛んでいく。鋭い風の刃が絡み合い、まるで空間そのものが狂ったようだった。周囲の木々はへし折れ、その破片すらリヒターの魔法の一部となり、アルノアを襲う。


「俺の攻撃はまだまだ荒れ狂う!俺の元まで来れるか?」


アルノアは槍を前に一瞬立ち止まり、目を細めた。そして静かに微笑む。


「負けられないね……」


その言葉とともに彼は心の中でエーミラティスに呼びかけた。


「エーミラティス、お前をまだ完全には使いたくなかったんだが……俺にお前の経験を貸してくれないか?」


エーミラティスは、アルノアの決意を感じ取りながら答える。


「良いが頼るんならしっかり学べ。次の試合では、この経験をお主が活かして戦うんじゃ。」


「分かっている。顕現せよ!」


その瞬間、アルノアの身体にエーミラティスの力が宿り、戦神としての動きが現れる。アルノアの瞳はより鋭く、全身が完全に戦闘のために最適化されたかのように見えた。


「今回は儂は魔法を多く使わん。武器と武術で攻める。お主は儂の動きに集中しながら、必要に応じて魔法で補助せい。」


アルノアは頷くと、リヒターの嵐槍の嵐に向かって駆け出した。


「正面から走ってくるとは、いい度胸だ!」


槍が次々と放たれるが、アルノアは冷静に必要最低限のものだけを大鎌で弾き、他は体をしなやかに動かしてかわしていく。その動きは、これまでの彼のものとはまるで違った。


「なんだ、その動き……!洗練されすぎてる!まだあいつ、強くなるのか!?」


アルノアは猛然とリヒターに迫る。そして嵐の中でエーミラティスが導く一撃

魔力の穴を正確に見極め、大鎌を振り抜いた。


その一撃がリヒターを吹き飛ばし、嵐は急速に消えていく。


観戦していたモニターの先が一瞬静まり、次の瞬間、大歓声が響き渡る。


実況:「リーダーのリヒターを倒したことで、アリシア&アルノアチームの勝利だァーッ!」


アリシアがゆっくりとアルノアのもとに歩み寄り、軽く笑ってみせる。


「みんな、あなたたちしか見てなかったみたいだけど、こっちもちゃんと3人相手に勝ってるんですけどね。」


アルノアは肩で息をしながら、少し申し訳なさそうに笑った。


「それにしても、近くで見てたから気づいたけど……あなた、憑依のような能力を持ってるわよね?」


その問いにアルノアは目を見開いた。


「わずかだけど、魔力の質が変化してた。いつかその秘密、教えてくれるのよね?」


アルノアは少し驚きつつも深く頷いた。


「時が来たら……ちゃんと話します。」


アリシアはその答えに満足したように微笑み、再び肩を並べて観客の歓声を背に、彼と共にフィールドを後にした。

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