第2話じゃじゃ馬令嬢は諦めが悪い

ステラがバスティンに突拍子もない愛の告白をした瞬間その場は静まり返った。


(きゃゃゃぁぁぁ〜〜〜!!私ったらなんてこと言ったのよー!これじゃぁ完全に逆プロポーズじゃん。いや将来的にはバスティンの妻になりたいという夢というか願望だけども今私がバスティンに言おうとしたのは『あなたの事が好きです』っていう普通の告白をするつもりだったのに。生バスティンを目の前にして感情が溢れ出しちゃってたから完全に告白の仕方間違ったー!)


ステラは一瞬固まるも自分がバスティンに言った言葉に対して内心頭を混乱させて考えていた。


(それにこの空気何だかあんまりよろしくない空気なのは気のせい?何だかお父様とお兄様の表情がおかしい気もするけど)


ステラは妙な空気が流れているその場の雰囲気を感じ取りながら周りを見渡しダニーとジョシュアの様子が何だか変だなと思っていた。


「もぅ降ろしてもいいですか?」


そんな一人混乱するステラへバスティンは冷静にステラへ声をかけた。


「え?あ、はいっ!だ、大丈夫です」


ステラはバスティンに声をかけられ慌てて言った。


すると、、


バスティンはステラをおろした。


「あの本当に助けて頂きありがとうございまたし。それと、その、、先程言った事なのですが」


おろしてもらったステラはバスティンへお礼を言うと少し気まずそうに言った。


「私は気にしていませんし結婚する気もありませんしはっきり言ってその様な気持ちも迷惑です」


バスティンはステラが最後まで話す前に話を遮りとても冷めた目をしてステラへ言った。


バスティンがそう言った瞬間その場の空気が凍りついた。


「申し訳ありませんでした。そうですよね。突然あの様な事を言われても迷惑ですよね。本当に申し訳ありませんでした」


凍りついた空気の中ステラは下を俯きバスティンへと謝罪した。


(そりぁそうだよね。いきなりあんな事言われたらそりぁ困るよね。私がどんな人間ともわからないのに)


ステラはバスティンへ謝罪しつつそんな事を考えていた。


(それにしてもバスティン。普段の顔もだけど怒った様な冷たい目をしたバスティンも素敵すぎない?ちょっとあまりにも刺激が強すぎて思わず俯いてしまったわ。もぉ生バスティンが目の前にいるってだけで感情がおかしくなってるっていうのに)


ステラは俯いたままニヤついた表情を周りにバレない様にと必死に耐えながら脳内は悶絶していた。


「バスティン!いくら何でもその様な言い方はないだろう!」


ステラが悶絶しているとダニーがバスティンの方へとやってきて強めの口調でバスティンへと言った。


「ですが師匠。変に相手に期待を与えるよりかははっきりと伝えた方が相手の為ではありませんか?」


バスティンは冷静にダニーへと応えた。


「しかし期待を持たせる事はよくないとしてもあそこまではっきり迷惑だと言うのはいくら何でも相手の気持ちをまったく考えなさすぎるぞ!」


ダニーは少し落ち着き冷静にバスティンへと言った。


「昔から中途半端な事や言動は控える様に師匠から教わったのですがね。それなのにその師匠がその様な事を言うとは」


バスティンは淡々と冷静にダニーへ言った。


「バスティンお前!」


ダニーはグッとした表情で言った。


「師匠、この話はここまでにしてもよろしいですか?私は陛下への挨拶がまだ済んでいませんので挨拶を済ませてきたいのです」


バスティンがダニーへ言った。


「はぁ。いいだろう。早く陛下達に挨拶をしてこい。この話はまた後日するとしよう」


ダニーはため息混じりにバスティンへ言った。


「分かりました。では失礼します」


バスティンはそう言う宮殿内へと向かったのだった。


バスティンがその場から去るとすぐにダニーとジョシュアがステラの元へと駆け寄った。


「ステラ。だ、大丈夫か?」


「スー大丈夫?」


下を俯いたままのステラを見た二人はオロオロしながらステラへと声をかけた。


(はぁ。まったく普段は周りから恐れる程の二人がステラの前だとあんなにもか弱い動物みたいになるなんてね)


そんなダニーとジョシュアを見てミシェルはため息をつきながら半ば呆れた様な表情で考えていた。


心配そうな表情を浮かべてオロオロしているダニーとジョシュアをよそにステラはガバッと顔を上げた。


「お父様、お兄様私は大丈夫です。むしろ私がラスター公爵様に突然あの様な事を言ってご迷惑をおかけしたのですから」


ステラは平然とした表情で二人へ言った。


「だ、だがいくら何でもバスティンのあの物言いは」


平然としたステラに少し戸惑いながらダニーが言った。


「あの様な物言いをされたからと言ってしょんぼりする様な私ではありませんから。それよりお父様もお兄様も次にラスター公爵様に会われても今日の事をこれ以上彼にとやかく言うのはやめてあげてくださいね!絶対ですよ?!もしも言ったならお二人とは当分口を聞きませんからね!」


ステラはドヤっという表情で言うとはっとしなりダニーとジョシュアに釘を刺す様に言った。


「い、今、な、なんと言った?口を聞かないだと?!いくら部下であるバスティンとはいえ私の大切な娘にあの様な物言いをしたというのにこれ以上何も言うなというのか?」


「そうだよ!スーがあの様に言われていくら友であるバスティンとて簡単には許す訳にわいかないよ!」


ダニーとジョシュアはステラの言葉に一瞬ギョッとするもすぐに慌てて言った。


「とにかく!これ以上今回の件をラスター公爵様に言うのはよして下さいね!わかりましたか?!」


ステラはそんな二人の言い分など無視してもう一度念を押すように言った。


「わ、分かったよこの件についてバスティンにはこれ以上は何も言うまい」


「私もわかったよ」


ステラに念を押されたダニーとジョシュアは悲しむ仔犬の様な表情でしょんぼりながら渋々応えた。


「お父様とお兄様の理解に感謝します!」


ステラが二人へにこりと微笑みながら言った。


そんな3人のやりとりを見てミシェルはやれやれという表情を浮かべていたのだった。


「はぁ。一先ず我々も皇宮内に戻ろう。まだパーティーの最中であるしステラの社交デビューの場でもあるのだから」


ダニーがステラへ言った。


「それもそうですね。途中で抜け出してきてしまいましたもんね。この猫はどうしましょう。足を怪我しているみたいなので手当をしてあげた方がいいと思うのですが」


ステラは猫の怪我を心配しながら言った。


「そうだな。一先ず今日の警備担当の騎士団の者へ手当をする様に私からお願いしておくさ。だから…ステラはミシェルとジョシュアと大広間へ先に戻っておきなさい」


ダニーは少し考えてからステラへ言った。


「本当ですか?お父様ありがとうございます。助かります。では私は先に戻っておきますね」


ステラはダニーの言葉を聞き安心した表情でお礼を言った。


「あぁ」


そんなステラを見てダニーは優しく微笑みながら言った。


そして、ステラは猫をダニーへと手渡してミシェルとジョシュアと共に宮殿内の大広間へと戻って言ったのだった。



その頃、、


大広間には皇帝、皇后、皇太子に挨拶を済ませたバスティンが一人お酒を飲んでいた。


(本当に昔からこの様な場は苦手だな。数年ぶりに任務を終えてこの国へ戻ってきたが周りの私に対する目は昔と何も変わらないな。どれだけこの国の為に戦ったとしても私のこの眼帯と左手の手袋、その下に隠された醜い痕、これがある限り私はこれから死ぬまで周りに屈辱を受ける様な目で見られながら過ごす事になるのだろうな。まぁ今更何も望まないがな)


バスティンはお酒を一口飲むと左手手で拳をつくりギュっと拳を握りしめながら考えていた。


(それにしても先程のあれは何だったのだろうか。いきなり木から人が落ちてきたかと思えば訳の分からない告白。それがまさか師匠の娘だったとは驚きだったがな。周りから冷徹だの人殺しだの色々と言われている私にあの様な事を言うなど私をからかっているのか?!だが師匠には申し訳ないがあれだけ冷たくはっきりと言ったのだから今後は私に近づく事はないだろう。私が去る時も俯いたままだったからな。あの様な事を言われて相当堪えたのだろうな)


バスティンはふと中庭で起きた事を考えていた。


(はぁ。やはりこういう場は居るだけで疲れるな。もう少ししたら帰るとしよう)


バスティンはため息を付きつつそんな事を考えていた。


(それにしても殿下の人気は凄いものだな。殿下の周りにはここの会場にいる全ての令嬢がいるといっても過言ではないな。殿下と私は見た目も中身も評判もすべてが正反対だな)


バスティンは会場の真ん中で令嬢達に囲まれキラキラしているアーノルドを見てそんな事を考えていた。


バスティンがそんな事を考えている頃、、


ステラはミシェルとジョシュアと共に大広間に戻ってきていた。


ジョシュアとミシェルはそれぞれ話す相手がいた為ステラは一人になった。


「ステラ。今日はあなたの記念すべき社交デビューの日だからどなたかにダンスを申し込まれたらきちんとお応えするよ?」


(はぁ。お母様はあぁ言ってたけど気分乗らないわぁ。何で好きでもない相手とダンスを踊らないといけないわけ?こういう時本当に貴族って面倒だなぁって思うわ)


ステラは少し前にミシェルから言われた事を思い出して憂鬱に考えていた。


(そんな事よりバスティンよ。さっきはついつい勢いと感情の溢れ出しであんな事言ってしまってバスティンにあんな事言われたけどあんな事を言われたからって諦めるレベルの想いじゃないのよ。私のバスティンに対する気持ちは!)


ステラは中庭での出来事を思い出しつつ考えていた。


(前世の時からずっとバスティンを幸せにしてあげたいと思ってたのにこんなところで引き下がるなんて出来るわけないもんね!この世界に転生した以上絶対バスティンを私が幸せにするっていう気持ちは変わらない訳だしね!ただここで問題なのが前世での私は年齢=彼氏いない歴だったから正直どんな風にバスティンへ私の気持ちを伝えたらいいのかわからないんだよね)


ステラは少し頭を抱えて悩みながら考えていた。


(ん〜。ん〜。ん〜〜〜。あぁもぉ!考えてもよく分からんないや。こうなったらバスティンに私の気持ちが伝わるまでとにかく諦めず行動するのみね!)


ステラは色々と悩みながら頭がパンクしそうになりつつ考えた末に結論が出た。


(が、まずはどうしたらいいんだろう)


結論が出た矢先からステラはまた頭を悩ませた。


その時、、


令嬢達に囲まれているアーノルドが目に入った。


(あ〜アーノルドったらすごい人気だね。さすがキラキラ主人公だけあるよね。オンラブの中のステラもあの群れの中にいたんだったよね。そしてどの令嬢よりも一番先にアーノルドにダンスを申し込まれて最高の気分で社交デビューを飾ったんだよね。その頃は先に起こる事態なんてステラは知りもしなかったんだもんね)


ステラはアーノルドを見ながら小説の内容を思い出して考えていた。


(でも今のステラ私はアーノルドとダンスだなんて考えられないんだけどね。せっかくの記念すべき社交デビューのダンスの相手が腹黒ペテン師野郎なんて願い下げよ)


ステラはアーノルドを嫌悪するかの様な表情で考えていた。


(はぁダンスか。私がダンスを踊りたいのはただ一人バスティンだけなんだよね。でもバスティンが私をダンスに誘ってくれるなんてある訳がないしな)


ステラは小さなため息をつきながら浮かない表情を浮かべて考えていた。


そんな事を会場の端の方で考えていたステラを見ている人物がいた。


それは沢山の令嬢に囲まれていたアーノルドだった。


(ステラ嬢は何故あの様に端の方にいるのだろう。彼女とは数年ぶりに会ったが数年前よりも遥かに美しくなっていたな。この会場にいる令嬢達いや、この帝国で一番美しい女性になるといっても過言ではない程の美しさだな。あの様に端の方にいるにも関わらず周りの男性陣は彼女の美しさに見入ってる様だしな。彼女も確か今日が社交デビューだったな。ダンスの申込みをしたら彼女はどんな反応をするだろうか…。もしかするとわざと端の方にいて私の関心を引こうとしているのか?)


アーノルドは浮かない表情のステラを見ながらそんな事を考えていた。


そして、、


アーノルドはステラの方へと向かい歩いていったのだった。


(バスティンに誘ってもらえないなら自分から誘うのは?!いやでも社交場で女性から男性へダンスを誘うのはおかしいか。ん〜でも私から言わないとバスティンと踊れないよね。それに断られたらどうしよう。ん〜ん〜。もぅ!ステラ!そんな弱気は私らしくないわ!そんな弱気じゃバスティンを幸せにする事なんて出来ないよ!よし!決めた!バスティンへダンスのお誘いをする!)


アーノルドが自分の方へ向かってきている事などまったく気づかず考えていたステラは悩んだ末に結論を出して会場内をキョロキョロと見渡した。


ステラは会場内を見渡しながらバスティンを探した。


するとアーノルドがステラのいる所までやってきた。


「ステラ嬢、この様な場所で」


アーノルドがステラの元までやって来てステラにそう言おうとした時…


「あっ!」


ステラはアーノルドの声はおろか存在にも目に入っていないかの様にただ一点だけを見て表情をパァっと輝かせて言うと颯爽にその場を離れて見つめていた場所へと急いだのだった。


そんなステラにアーノルドは唖然とした表情を浮かべていた。


ステラが見ていた一点先にいたのはバスティンだった。


ステラはバスティンを見つけるやいなやすぐにバスティンの元へと向かったのだった。



「あの、ご令嬢もしよろしければ私とダンスを」


ステラがバスティンの元へと向かっている途中に貴族の令息の一人がステラへ声をかけたがステラの耳にその言葉はまったく入っていない様でステラ足早に歩いていった。


それからも数人同じように令息がステラに声をかけたがステラはまったく気づかずバスティンの元へと歩いた。


そして、、


ステラがバスティンの元へと到着した。


「ラスター公爵様!」


ステラはバスティンへと声をかけた。


「ご令嬢?」


声をかけられたバスティンは少し驚いた様な表情でステラへ言った。


「何か私にご用ですか?」


バスティンは淡々とステラへ言った。


「はい。あの、あのよろしければ私とダンスを踊って頂けないでしょうか!」


ステラはバスティンに聞かれると思い切ってバスティンをダンスへ誘った。


「はい?ダンスですか?」


バスティンはあまりにも予想外のステラの言葉に目を点にして言った。


「はい!女性の私から男性にダンスの申込みなどその失礼な事かもしれませんが私今日のパーティーが社交デビューなので初めてのダンスの相手はラスター公爵様がいいのです」


ステラは恥をしのんでバスティンへと言った。


(もう何なら最初だけとは言わずこれから先ずっとバスティンとかしか踊りたくないわ!)


ステラはバスティンへ伝えつつそんな事を考えていた。


(この娘は何を言っているのだ?!私とダンスだと?!正気なのか?!)


バスティンはステラの言葉を聞いて表情を歪ませながら考えていた。



「はぁ。先程迷惑だと伝えたはずだが?!」


バスティンはため息をつきながら呆れた表情でステラへ言った。


「はい。ですがそこを何とかお願いしたいのです!お願いします!」


ステラはバスティンにそう言われても引き下がらず真剣な表情でバスティンへ懇願した。


「っ!?」


バスティンはそんなステラを見てグッと表情を引きつらせた。


「こ、公爵様が頷いてくれるまでここを離れません!」


ステラは更に押して出る様に言った。


(ここで諦めたら女が廃るわ!絶対にバスティンとダンスしてみせるわ!)


変に闘争心が湧いたステラはそんな事を考えていた。


「はぁ。分かった」


バスティンはあまりにも粘り強いステラに対して半ば面倒臭くなり自分が折れたほうが早いと判断してため息をつきながら呆れた表情で応えた。


「ほ、本当ですか?!ありがとうございます。嬉しいです!」


そんなバスティンの表情なんてまったく気にしないかの様にステラは満面の心から喜びを感じている笑みを浮かべてバスティンへと言った。


そんなステラを見てバスティンは少し驚いた表情を浮かべたのだった。


そして、、


ステラとバスティンはダンスを踊り始めた。


そんな二人がダンスを踊り始めると周りがザワつき始めた。


『あれ見てちょうだいよ。冷徹で知られている眼帯公爵よ』


『実の父親である前公爵様をと義理の母親の夫人と義姉を死においやったと噂がありますよね』


『長いこと帝国を離れていたというのにどうして戻ってこられたのでしょうね』


『あの眼帯と左手の手袋の下にはそれはそれは醜い痣があると噂ですがどれほど醜いのでしょうね』


『前公爵様の養子としてラスター公爵家にきた様ですが実は前公爵様が外で作られた隠し子ではないかとも言われてましたよね』


『ダンスの相手はバートン公爵家のご令嬢じゃないの?あの様に美しいご令嬢がどうしてラスター公爵となど?もしやラスター公爵に脅されているのでは?』


周りの貴族達がダンスをしている二人を見てコソコソと話をしていたのだった。


(まったく貴族って本当に噂話が好きね。まぁ、前世でも噂話が好きな人っていたけどさ。バスティンの事を何も知らない癖に言いたい放題言っちゃって本当に許せないわ!)


ステラは踊りながら聞こえてくる周りの貴族達の噂話に対して怒りを覚えながらそんな事を考えていた。


(バスティン。あなたはこんな好き勝手に噂話をされて辛くないの?)


ステラはバスティンが噂話をされている事に酷く胸を傷めながらそんな事を考えながらバスティンを見た。


「その様に哀れみは要らない」


バスティンがとても冷たい表情でステラへ言った。


「哀れんでなどいません!」


ステラはムッとした表情で言った。


「では、何故その様な表情で私を見るのだ?」


バスティンは更に冷たく言い放った。


「どの様な表情か分かりませんが私は悔しいのです!」


ステラは唇を噛みしめる様に言った。


「悔しいだと?!」


バスティンは意味が分からないといった表情で言った。


「はい。だって公爵様の事を何も知りもしないであの様な事を周りの人達が勝手に言っているのですよ?それを悔しいと思わない方がおかしです」


ステラは表情を歪ませて悔しそうな表情で言った。


「そなたに何が分かるというのだ?!」


バスティンは表情を歪ませて言った。


「分かりません!でも私は公爵様があの様に言われるのは嫌なのです!」


ステラは真っ直ぐにバスティンを見て言った。


(前世オンラブを読んでいる時からその事が本当に許せなかった。バスティンがこれまでどんな辛い思いをしてきたかなんて何も知らない癖に噂話ばかり信じて勝手に話を飛躍して言う人達が。小説の内容だって分かってても嫌だった)


ステラはバスティンに言いつつそんな事を考えていた。


「何を訳の分からない事を。そんな事を言っておいて先程は私が迷惑だと言ったら俯いて怯えていたではないか」


バスティンは眉間にしわを寄せながら言った。


「あ、あれは、その、、違います。怯えていたから俯いていた訳ではありません」


ステラはバスティンに言われると慌てて動揺しながら言った。


「その様に慌てて言っておいて何が違うというのだ?!」


バスティンは呆れた様に言った。


「違うのです!あ、あれは、その」


ステラは慌てて言った。


「その、なんだ?!」


バスティンが強めに言った。


「て、ですから、あれは、、公爵様の冷たい視線の表情が素敵すぎて直視出来ずニヤついた自分の表情を隠す為に俯いていたのです!」


ステラは迷いに迷った結果正直に話したのだった。


(きゃぁぁぁぁ〜〜!言ってしまった)


ステラはバスティンに話しつつ顔を真っ赤にして恥しそうに思っていた。


「は?」


バスティンはまたしてもステラの予想外の言葉に目を点にして言った。


「ですからそういう事なのです」


ステラは顔を赤くしたまま恥しそうに言った。


(この娘は何を言っているのだ?私の冷たい視線が素敵だと?は?)


バスティンは豆鉄砲でも食らった様な表情で考えていた。


「ぷっ。ふふふふ」


バスティンが考えていると急にステラが笑い始めた。


「な、なんだ?!」


バスティンはステラの笑い声にハッとなりすぐにしかめっ面になり言った。


「ふふ。笑ってしまい申し訳ありまりません。冷たい視線の公爵様も素敵ですが豆鉄砲を食らった様なお顔も可愛くて素敵だなと思ったらつい笑いが」


ステラは笑いを堪えようとするもやはり笑いを溢して言った。


(オンラブを読んでいた時のバスティンは死ぬ間際まで豆鉄砲を食らった様な表情をするなんてなかったから間近でバスティンのこんな表情が見れるなんて。嬉しくてつい笑ってしまったわ)


ステラはバスティンに言いながらそんな事を考えていた。


「なっ。か、可愛いとは。大の男に失礼だぞ!」


バスティンはステラの言葉に思わず慌てて言った。


「ふふ。申し訳ありません」


ステラはそれでも笑みを溢しながらバスティンへ謝った。


そうこうしているとダンスの曲が終わったのだった。


「公爵様、私の無理なお願いでダンスを踊って頂きありがとうございました。公爵様のお陰で社交デビューがとても楽しく素敵で幸せなものになりました」


ステラはダンスが終わるとカーテシーをしながらバスティンへと満面の笑みでお礼を言った。


「それは何よりだ。しかし今後はこの様な事をするつもりはない。今回は私の師匠の娘だったから華を持たせただけに過ぎないからな」


バスティンは元通りの冷たい表情でステラへ言った。


「はい。承知しております。ですが今後も私は公爵様へ気持ちを伝えていきたいと思っておりますのでその事はお伝えしておきますね」


ステラはにこりと微笑みながらバスティンへ言った。


「は?そなた何を」


バスティンはステラの言葉にあっけらかんとした表情で言おうとした。


「ではそういう事ですので。私はきちんとお伝えしましたからね?では私はここで失礼致しますね」


しかし、ステラはバスティンの言葉をあえて遮って笑顔でバスティンへと言って礼をするとその場を後にしたのだった。


「お、おい!待っ!」


バスティンがそういうもステラは颯爽にその場を離れたのだった。


(一体何なのだ?!)


バスティンは去っていくステラの後ろ姿を見て頭を抱えながら言った。


(ふふ。バスティンったら私があんな事を言ったから焦ってたわね。でも私がバスティンを幸せにすると決めた以上これからも全力でいくわよ〜!)


ステラはルンルンでそんな事を考えながら歩いていた。


(それにバスティンの表情がどれも最高だったわ。どの表情も…特にあの豆鉄砲を食らった様な表情は写真におさめるレベルだったよね。可愛かったな〜。あの表情の写真を拡大して額縁に入れて部屋に飾りたいくらいだもんね〜)


ステラは幸せそうな笑みを浮かべながらそんな事を考えていた。


そんなステラの笑顔に周りの貴族の令息達は見惚れていたのだった。


アーノルドもまたステラの笑顔を遠くからじっと見ていたのだった。


当の本人はそん視線などまったく気づかずに歩いていったのだった。


(さぁ〜オンラブの小説の始まりのシナリオ無視は出だし好調ってとこかなぁ。このまま無視し続けてバスティンを幸せにしてみせるわ〜)


ステラは更にルンルン気分で考えながら歩いていたのだった。


その後ステラは、、


バスティンとダンスを踊っているのを見ていたダニーとジョシュアにステラのダンスの最初の相手は自分が良かったと拗ねられていた。


しかし、ステラが二人とダンスをすると先程まで拗ねていたのが嘘みたいに上機嫌になったのは言うまでもなかった。


そんな様子をミシェルはやれやれといった表情で見ていたのも言うまでもなかった。


こうしてステラの記念すべき社交デビューは終わりを迎えたのだった。


この日、、


ステラは生バスティンに出会えた事の喜びを噛みしめながら枕をバスティンだと思い抱きしめて幸せな気持ちで眠りについたのだった。

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私が悪役令嬢?!…ならばシナリオ無視して全力で推しを守り愛し共に幸せになる所存です!! 〜じゃじゃ馬令嬢は異世界でも推し活に励む〜 ☆乙女図☆ @otomezu

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