ある喫茶店

沼津平成

ある喫茶店

 その喫茶店の店員である僕は、さっきから一人の客をにらんでいた。さっきまで二人でいた、三十代の男性。話の内容から名前は御供田敏則みくたとしのりである。僕は小星義春こぼしよしはる、十七歳。喫茶店の店長、佐藤さんと、オーナーの鈴木さんに雇われている。

 オーナーといっても、この喫茶店はこの辺りに三店舗しかない。本舗は向こうの歩道橋の曲がり角、あれをさらに曲がった路地裏をさらに曲がったところだ。

 もう一店舗は、うちだ。近くをなぜかチェーン店のファミレスに囲まれている厄介な立地。黒字ギリギリを出しているから、僕のこのバイトの月収は800円。

 もう一店舗は、「角田のおばちゃん」社のビルの一階。あそこがなぜか毎月200円の赤字をぴったり出してくる「謎の店」。

 御供田敏則が動いた。

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ある喫茶店 沼津平成 @Numadu-StickmanNovel

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