科学解説『がんばれ!ノルンちゃん!』
かんな@バーチャルJC
小説『ノルンの角笛』用語集
小説『ノルンの角笛』に出てくる科学技術系・工学系などの用語をまとめたものです。物語の話数順に並べているので、順当に見ればネタバレ防止できます。
このエピソードは都度更新となるので、近況ノートもしくは作者のX(Twitter)で更新状況をご確認ください。
記載更新日:2025年12月22日 初版
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【全身義体】(SF技術・架空):第1話~
脳と神経系の一部(あるいは消化器官)を除き、肉体のすべてを機械部品に置き換えた身体。2030年代後半から一般化され、高級車並の金額であれば義体化できる。
脳・神経系への栄養補給と酸素供給が必要であり、呼吸も食事も必須。
体内バッテリーはリチウム方式と全固体電池のハイブリッドで冗長性を持たせている。カスタムする事で、生身の一般人に比べて出力を高めることができる。
【アサルトライフル(バトルライフル)】(軍事・実在):第一話~
兵士が使用する自動小銃。作中では人民解放軍のものや、自衛隊、米軍のものが登場する。
【BMI】(SF技術・架空):第2話~
ブレイン・マシン・インターフェース。作中では、侵食型専用チップが脳表面にインプラントされ、脳と機械を接続し、思考による機器操作や短距離量子技術通信(音声によるテレパシーのような会話)を可能にする技術。中継機を使えば、中距離~長距離通信も可能だが、遅延が発生する。
【観測者問題】(科学用語・実在):第4話~
量子力学において、観測行為が量子状態を確定させてしまう問題。作中では量子通信の盗聴が即座に発覚する理由として語られる。何をもって「観測者」と定義するかは、現実世界でも議論中。
【バイオロジックモジュール】(生物工学/IT技術・架空):第8話~
ノルンシステムに使用されている、神経細胞などの生体部品を組み込んだ計算・思考ユニット。遺伝的強化学習や自然乱数発生機として重要な部品。
単体ではさほど性能は引き出せないが、量子・デジタルコンピューティングとのハイブリッド構成によって性能を発揮する。ノルンとスクルド、そしてサブ1などの中枢を担うコンピューターにしか搭載されていない。
(サブシリーズは限定的機能。反乱・暴走防止のため)
【テロメア】(生物工学・実在):第8話~
染色体の末端にある構造で、細胞分裂の回数制限、細胞寿命に関与する。ノルンはこれを書き換えて細胞寿命を延ばす提案をした。その後、スクルドの拡張研究によって、ある程度人為的に制御可能となった技術。
【QAS (量子分析シミュレーション)】(量子力学・実在):第10話~
古典的なコンピューターでは計算が困難な多数の量子の振る舞いを、人工的に構成した量子系(量子シミュレーター)や量子コンピューターを用いて模擬的に再現し、その物理的性質や現象を解明する技術分野を指す。作中ではパンドラウイルスの解析などに使用されたシステム。既存のコドン配列との照合などを行った。
【コドン】(生物学・実在):第10話~
遺伝子の単位。3つの塩基配列で1つのアミノ酸を指定する規則のこと。
RNA(メッセンジャーRNAなどの)上に存在する3つの連続した塩基(アデニンA、ウラシルU、グアニンG、シトシンC)の並びのこと。
作中では、ノルンとスクルドが人工的操作によって作りあげた特殊なコドンもある。
【マイクロマシン】(生物学・半実在):第10話~
ミリメートル(mm)からマイクロメートル(μm)サイズの超小型機械や構造の総称で、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)とも呼ばれる。ただし、人工合成したタンパク質の事(イオンポンプ等)を指すこともある。
作中では、細胞内組織レベルのものが、ノルンやスクルドによって、パンドラウイルスなどに使用されている。
【QPU (量子処理装置)】(IT技術・実在):第11話~
量子による中央演算装置、Quantum Processing Unit(量子処理装置)。量子ビット(Qbit)を用いて計算を行う量子コンピューターの心臓部。
作中ではさらに進化し、従来の量子ビットから拡張された6状態量子を扱う量子ディット(Qdit)を用いて演算処理を行っている。
【ニューロコンピューティング】(IT技術/生物学・実在):第12話~
神経回路網を模倣した情報処理技術。従来のデジタル計算とは異なり、非線形のネットワーク網によって演算を行う技術。非ノイマン型演算方法。
作中ではミサキが移動中の車内で解説した学習方法の一つ。
【化学シナプス】(生物学・実在):第12話~
神経細胞(ニューロン)同士や神経細胞と他の細胞(筋肉、腺など)の間で、神経伝達物質(アセチルコリン、グルタミン酸など)という化学物質を介して情報が伝わる接合部。神経細胞は電気パルス以外にも、化学物質を交換して情報・刺激を伝達している。
【膜電位】(生物学・実在):第12話~
すべての細胞の細胞膜の内外に存在する電位の差のことで、細胞内外のイオン(ナトリウムイオン Na+、カリウムイオン K+など)の濃度分布の違いによって生じ、神経伝達や筋収縮、植物の動きなど、多くの生命活動の基本となる電気信号。
通常時は-70ミリボルトほどで、活性時には+40ミリボルトほどに上がる(個体差あり)
【粘菌コンピューター】(生物学/IT技術・実在):第12話~
粘菌(キノコやアメーバなど)が最短ルートで餌にたどり着く性質を利用して、計算困難な問題(巡回セールスマン問題など)を解く手法。
(2026年時点では実験中の技術)
【NP問題】(計算理論・実在):第14話~
コンピュータ科学における計算量の概念で、「与えられた答えが正しいかどうかの検証は簡単(多項式時間)だが、その答え自体を見つけ出すのが非常に難しい(指数的時間がかかる可能性がある)問題」の総称
【巡回セールスマン問題】(計算理論・実在):第14話~
複数の都市をすべて一度ずつ訪問し、出発点に戻ってくる最短の経路(巡回路)を見つける組合せ最適化問題のこと。
都市の数が増えると解の候補が爆発的に増え、厳密な最短解を求めるのが非常に困難になるため、物流計画やタンパク質構造解析など様々な分野で近似解法が研究さている問題。NP問題のひとつとも言える。
【多世界解釈シミュレーション】(計算理論・半実在):第15話~
量子力学の観測問題における解釈の一つである。正しくは「エヴェレットの多世界解釈」。
この解釈では宇宙の波動関数を実在のものとみなし、波束の収縮が生じない。そのかわり、重ね合わせ状態が干渉性を失うことで、異なる世界に分岐していくと考える仮説。(並行世界、分岐世界、マルチバースなど)
この説は、最新の量子力学では否定的になっているが、ノルンは多世界解釈仮説を計算シミュレーションとして数理的に展開し、「有り得そうな未来を事前予測する(限定的)」を行うことで、確率的に「先手を打つ」ことが可能(未来予知ではない。あくまでも確率が高い範囲予測)。
量子・バイオ・デジタルハイブリッドシステムでなければ計算できない。ノルンとスクルドのユニークスキル。
ただし、システム全体がシミュレーション実行時、集中的に動くため、膨大な電力と冷却維持、バイオロジックモジュールへの栄養供給と排泄物処理が必要となり、常用できない。
【NAGOYA-01JP】(SF設定・架空):第19話~
正式名称は「名古屋統括プロデューサーユニット」であり、地方管轄を統制している中央コンピューター群の総称。量子コンピューターとデジタルコンピューターのハイブリッド構成。
システムヒエラルキー(組織図)としては、東京と札幌プロデューサーの下位になり、日本本州全土の資源確保と工業化を目的として稼働しているサブシステムのひとつ。本編とはまったく関係無いが、スクルドの指示(リン生産・種の保存)もあり、郊外に名古屋コーチンの養鶏場を維持している。
【CNSスキャナー】(医療技術・架空):第23話~
病院などにあるCTスキャンの量子版。フォトンカウンティングCT技術と量子コンピューティングによる計算により、体内の細胞単位の状態などをスキャンできる大型設備。MRI(磁気共鳴画像法)装置の筐体を利用している、脳神経構造スキャナー(Central Nervous System Scanner)。脳の活動と神経ネットワーク構造をスキャンし、デジタル化する実験機。
作中では、社会崩壊前の理研において、ミサキが実験機として作成していた大型機器。彼女が従事していた研究プロジェクトの成果物。
【富岳NEXT(現実では仮称・計画名)】(IT技術・半実在):第23話~
兵庫県神戸市ポートアイランドにある理化学研究所計算科学研究センター(R-CCS)に存在する、日本最高峰のスーパーコンピューターシステム。
富士通株式会社と米国NVIDIA社が技術協力し、2030年代稼働の巨大システム。
国策による量子コンピューター技術への投資促進政策も重なり、量子・デジタルハイブリッドシステムとして(作中では2038年から)稼働中。
ポートアイランドは浸水状態だが、システム全体は無事に稼働していた。
【RCV37式偵察警戒車】(軍事兵器・架空):第26話~
先行偵察用装輪装甲車。いすゞの新型ディーゼルエンジン+全固体電池による2037年に制式採用されたハイブリッド式陸上自衛隊装備。
2020年代後半の国防予算増額、内閣及び防衛省の方針で、小松製作所が新たに研究開発した新型装甲車。
モジュール方式で、大口径機関砲や小型機関銃、対空機関砲とドローンジャマーなどに換装が可能になっている。
作中ではそのモジュールを改造し、EMP誘発用荷電粒子砲を搭載した。
【QBZ-95B】(軍事兵器・架空):第26話~
中国人民解放軍が使用するブルパップ式自動小銃(カービンモデル)。リョウジたちが初期(中国放浪中)に装備していた。
【MiMA (中間者介入攻撃)】(IT技術・実在):第29話~
Man-in-the-Middle Attack。カレンが量子通信に応用し、衛星ハッキングに使用した手法。量子信号を盗聴するのではなく、「最初からそこに居た」中間処理装置として偽装し、あたかも正常な通信経路を通っているように見せかける技術。
現実ではこれだけではハッキング不可能で、複合した別スキルが必要であり、実用不可能。
【セボット (インセクトロボット)】(IT技術・半実在/造語):第31話~
昆虫型ロボットの総称。形状は昆虫に限らず、災害救助用の蛇型ロボットなどもこれに含まれる場合がある。
【ワーグ】(IT技術・架空):第31話~
カレン達が本田技研の技術を用いて生産・運用している全身義体ベースの人型汎用ロボット。脳髄や消化器官、化学処理槽などを排除した分、計算能力と駆動部分を強化しつつ、自律AIによる補助で独立した行動が可能。
北欧神話に出てくるワーグ(Warg、魔狼)が由来。
【M270 MLRS】(軍事兵器・実在):第33話~
陸上自衛隊所持、多連装ロケットシステム自走発射機M270 MLRS。IHIエアロスペース社製のロケットランチャー車両。
履帯駆動の車両で、12連装227mmロケット発射機を備える。米国のLTV社(Ling Temco Vought)製品のライセンス生産。
【M1127 ストライカーRV】(軍事兵器・実在):第34話~
米国陸軍ストライカー旅団で運用される装輪式偵察戦闘車。
LRAS3(Long Range Advanced Scout Surveillance System)と呼ばれる偵察用機材が搭載され、光学式カメラ・赤外線暗視装置(FLIR)・レーザーレンジファインダーなどを内蔵した偵察特化の装甲車両。
作中では、サブ2が戦闘指揮車両兼分散ネットワークハブシステムとして運用。
【MINIMI (ミニミ)】(軍事兵器・実在):第34話~
ベルギー製の分隊支援火器(軽機関銃)。自衛隊でも採用されており、シンジたちが指揮車で使用した。
【LAM (個人携帯対戦車弾)】(軍事兵器・実在):第34話~
携帯型対戦車兵器のこと。制式名称は「110mm個人携帯対戦車弾(LAM)」で、装甲車・戦車などを破壊するための兵器。いわゆる個人携帯のロケットランチャー。
【HEAT弾】(軍事兵器・実在):第34話~
対戦車榴弾(High-Explosive Anti-Tank)。成形炸薬弾のひとつ。成形炸薬効果(モンロー/ノイマン効果を利用して超高速の金属噴流を特定方向に集中させて噴射する)により装甲を貫通する弾頭のこと。
【指向性EMP兵器 / ポジトロンライフル】(軍事兵器・架空):第34話~
ロケットランチャー、対戦車地雷等を改造して作られた、特定の方向に強力な電磁パルスを放ち電子機器を破壊する兵器群。
正確には荷電粒子砲と中出力レーザーによる高圧ガス(ハロゲンガス)の点火を行い、局所的EMPを誘発させるもの。作中では便宜上、ポジトロンライフルと呼んでいる。(ポジトロンライフル自体が破壊を行うものではない)
中盤以降は改良型が開発されており、ある程度の装甲損傷(焦がす程度)も可能になっている。ただし、リロード(チャージ)に時間が掛かり、連射はできない。
【EMP】(物理科学・実在):第34話~
電磁パルス(electromagnetic pulse)。パルス状の電磁波。
電磁パルスは、ケーブル・アンテナ類に高エネルギーのサージ電流(瞬間的な規格外の大電流)を発生させ、それらに接続された電子機器などに流れる過剰な電流によって、半導体や電子回路に損傷を与えたり、一時的な誤動作を発生させる。電源回路のショートや、雷によるパソコンの故障なども、この現象が要因の一つ。
【ハティ】(軍事兵器・架空):第36話~
ノルン側が運用していた大型警備ロボットを鹵獲し、シンジ達が運用している機体の愛称。ノルンシステム側にはラベリング(機種名)は無く、警備ロボット群というカテゴリとシリアルナンバーがあるのみ。
高さ3.65メートル、重量6.3トンほどの中型ロボット。
「ハティ(Hati)」 は古ノルド語で「憎しみ」「敵」を意味する狼。北欧神話に登場し、月(マーニ)を絶えず追いかけている。月食はこの狼が月を捕らえたために起こると考えられた。
(作者注:映画『ロボコップ』に出てくるED-209、ゲーム『アーマード・コア』シリーズに出てくるような、完全人形というよりは大きな箱に手足が付いているようなロボットがイメージしやすいでしょう。人間の銃が持てるでかい建設機械みたいなもの)
【ハニカム構造】(物性科学・実在):第38話~
正六角形を隙間なく並べた構造。いわゆる蜂の巣(honey-comb)形状。
軽量でありながら高い強度と衝撃吸収性を持つ。航空宇宙分野や建築などで利用されている。
作中では、ノルンの新型ロボットや美唄市の都市構造に採用されている。軽量・強度・衝撃耐性・高効率な構造で、ノルンシステムで多用されている。
【ビジュアルプログラミング】(IT技術・半実在):第38話~
プログラミングをコード(命令単語など)で行うのではなく、モジュール(単純な機能を持つ箱のようなもの)をノード(紐)で繋ぎ、計算処理を視覚的に構築できる方式のこと。
現実世界でもゲーム開発エンジン(UnityやUnreal Engineなどが有名)で活用されている方式。
作中では、カレンはゲーム開発エンジンを拡張し、三次元+時間(四次元)展開しつつ、量子コンピューティングに対応できるよう、独自に開発エンジンを創り上げた。
単純なアプリから基礎オペレーションシステムのような巨大なものまで設計・構築が可能。
【バックドア】(IT技術・実在):第38話~
システム設計者などが、面倒なセキュリティを回避してシステムに侵入するために仕掛けられた専用裏口。
ハッキングだけでなく、システムが致命的欠陥によってセキュリティロックが掛かっても、設計者(アーキテクチャー)は入り込めるようにする緊急入口でもある。
【RC-2 偵察機】(軍事兵器・実在):第41話~
航空自衛隊の電波情報収集機。2020年に導入された偵察機。川崎重工業製の輸送機「C-2」を偵察用に特化したもの。
作中ではミサキが完全リモート制御の近代化改修を行い、偵察・空輸手段として確保した。人員搭載の必要が無いので、その分新型LiDERスキャナー(立体物形状認識用距離センサー)などが搭載され、偵察・感知能力が上がっている。
【ゼノクォーク】(物理科学・架空):第44話~
クォーク (quark) とは、素粒子のグループの一つ。物質の基本的な構成要素(原子核をさらに分解した……というイメージのもの)。
現実世界の人類文明では、第一世代(アップ、ダウン)、第二世代(チャーム、ストレンジ)、第三世代(トップ、ボトム)までは発見しているが、まだ未知のものがある可能性が示唆されている。
「ゼノクォーク」はノルンが『遺言』データから発見した、人類未発見の第7・第8のクォーク(フレキとウルズ)の総称。重力や宇宙空間のダークマターに関連しているとノルンは予想しているが、詳細は不明。第四世代として扱うかは、まだ未分類状態なので、ノルンが仮称として命名したもの。
「フレキ」は北欧神話に登場する神オーディンに付き添う狼、「ウルズ」は運命の女神の名前。
【6状態量子技術】(物理科学・架空):第44話~
従来の2状態(0と1、正確には素粒子のスピンの方向のことを指し、右回り・左回りのようなイメージ。デジタルの単位、ビットに相当)だが、『遺言』データの解析によって発見された、6つの状態を持つ量子ディット(ビットの多様形)を用いた計算技術。量子計算処理能力が指数的に向上する(デジタルに比べ処理スピードが速くなる、ということではない)。
【超弦理論】(物理化学・実在仮説):第44話~
物質の基本単位(素粒子など)は点粒子ではなく、1次元の拡がりをもつ弦であると考える弦理論に、超対称性という考えを加えて拡張したもの。超ひも理論、スーパーストリング理論とも呼ばれる仮説。
分かりやすく言うと、物質の最小単位は点ではなく、紐が超高速にぐるぐる周りながら伸びたり縮んたりしていて、波動(光子や重力波な)や質量運動をしているというもの。それが空間だけでなく時間や未観測の次元にも影響を及ぼしているという仮説。
【トマホーク・ブロックⅤb】(軍事兵器・架空):第44話~
米軍が採用している『トマホーク』シリーズの巡航ミサイルのひとつ。作中では、ノルンがテキサスの抵抗勢力を排除するために使用した巡航型の通常弾頭長距離ミサイル。
【フュルギャ】(IT技術・架空):第45話~
自己進化型AI『ノルン』システムのオペレーションシステム(基幹プログラム)の名称。
フュルギャは古ノルド語で、北欧神話に登場する人に付き添う霊的存在。フィルギャは動詞「fylgja(従う)」の動作主名詞で「追随者」という意味。守護霊、胎盤・羊膜などの意味などでも使われる。
カレンの命名としては、比較的まともな由来の名称。
【毒林檎(コンピューターウイルス)】(IT技術・架空):第46話~
カレンがノルンシステムを緊急停止、または非可逆的構造破壊をするため、奥の手として用意したシステムインプラント型の特殊ウイルスプログラム。
グリム童話『白雪姫』の王女(カレン)が、白雪姫(ノルン)を暗殺するために用意したもの。
結果としては、ノルンに発見され無効化されている。
【ハルシネーション】(IT技術・実在):第49話~
幻覚、でたらめ、作話、ディルージョン(妄想)など、人工知能によって生成された、虚偽または誤解を招く情報を事実かのように提示する応答のこと。
人工知能が知らない事でも何らかの回答を出力しないといけないという圧力がある場合や、報酬を貰うという行為を最優先させる時に起こる現象。
単語単位の価値設定(重み付け)や連続性等によっても圧力が掛かり、結果として「それっぽい嘘(ソシオパス)」的な行動が出る。
【フレーム問題】(IT技術・実在):第49話~
有限の処理能力しか持たないAIが、現実世界の全ての事象に対処しようとすると計算が終わらなくなる問題。コンビニへ買い物に行けと指示されても、途中の道路に爆弾が仕掛けられていたらどうしよう、その爆弾の種類を特定するには……など、あらゆる可能性を考慮すると永遠に答えが出ない。
ある程度のフレーム(枠)を設けることで、「工事も爆弾も無いのは確実だからコンビに行け」と言えばその通りに動く。
だがAIが自主的に「どこまでの枠」を自力で設定するのは同様の問題にぶつりかり、ループに陥る。
作中では、ノルンシステムは自己進化型であり、「フレームの自主設定」を物理ベースでシミュレーションする事で、自力で解決できるようになっている。
これはデジタルだけでは処理が難しい問題だが、量子の確率的挙動、バイオの強化学習と乱数発生による確率収束によって解決している。
ただし、それは上位システムのみで、現場レベルの半自律ロボットには解決できない、依然として残されている限界点。
【六角柱型立体炭素メモリ】(IT技術・半実在):第50話~
スクルドが開発した、人工ダイヤモンド(ダイヤモンドNVセンターメモリ)を用いた超高密度の量子メモリデバイス。
一般的なサーバーラックを三段重ねしたほどの高さと大きさがあり、それが密集している謎の古代遺跡のような巨大量子メモリシステム。
現実でもダイヤモンドNVセンターを利用した量子技術は発展途上(実験段階)にあり、将来的にセンサーや量子メモリに使われることが想定されている。
【方舟計画】(科学技術・架空):第50話~
《システム検閲により削除》
【ジオフロント】(建築工学・半実在):第50話~
地下空間を開発して作られる都市や施設。作中では、美唄市(夕張山脈)やシエラネバダ山脈の地下で建設が進められている。
【バキュロウイルス・ベクターシステム】(生物工学・実在):第50話~
真核生物である昆虫培養細胞を使用して、遺伝子組み換えタンパク質を生産する工法。ウイルスを利用した、人工タンパク質を量産する技術。
研究機関、製薬会社などで実際に利用されている。
【HMIキャップ(セイルズ)】(IT技術・架空):第52話~
ヘルメット型のHuman-Machine-Interface。ノルンシステムに特化した、ノルンと会話するために作られた専用のヘルメットとMRゴーグルのセット。BMIと連動し、言語化が難しいイメージや概念、視覚情報など使って、ノルンシステムとコミュニケーションをするためのデバイス。BMI必須のため、生身の人間は使用できない。
戦闘機パイロットのヘルメット程の大きさがあり、ゴーグル部分と併用して稼働する。
カレンには重すぎるデバイスなので、ソファーで寝ながらでしか使えなかった。
【脳オルガノイド】(生物工学・実在):第52話~
iPS細胞などの幹細胞から作られる、脳の構造や機能を模倣した微小な三次元組織で、「ミニ脳」とも呼ばれる。脳の発達研究、神経疾患モデル、創薬、さらにはバイオコンピューターとして応用されている技術。
ノルンシステムでは拡張モジュールとしてしか採用されておらず(出力が不安定・気まぐれなため)、主流からは外れている。
現実でも、医療倫理問題などがあり、様々な議論がある技術のひとつ(意志や魂の定義ができないため)。
【TMV (タバコモザイクウイルス)】(生物工学・実在):第52話~
植物の感染症で、タバコなどの葉にモザイク状の斑点ができ、葉の成長が悪くなる病原体。
1886年、ドイツ農学者アドルフ・エドゥアルト・マイヤーが、タバコモザイク病にかかったタバコの汁液を健康な葉に付けると感染することを発見。
1892年にはロシア出身の生物学者ドミトリー・イワノフスキーが、細菌や真菌が通過できない素焼きフィルターをタバコモザイク病の感染因子は通過できることを発見し、現代ウイルス学の始祖となる。
棒状のウイルスで構造も分かりやすいので、現在でもウイルス研究では多用されている。地中環境常在菌なので、今でも農家を悩ませている。
【HESCOバリア】(建築工学・実在):第53話~
多用途で堅牢な保護構造で、治水・軍事防衛・緊急保護に使用される構造体。
米ヘスコ社(Hesco Bastion)製の大型土嚢で、筒状の金網の内側に耐火材質の布袋を張り、複数連結させることで、強固なものとなる。安価・即効性に優れた防壁。
作中ではヘスコ社製のものではなく、類似のものを自作して、和光市周辺に構築している。
【楔形(くさびがた)陣形 】(軍事工学・実在):第53話~
三角形の頂点を敵に向けて配置する陣形。突破力や柔軟な対応に適する。
先頭部分は的になりやすいが、案外、高速機動することで生存率は高い。突撃隊形、一点突破の場面などに使用する。
【SDA衛星】(宇宙工学・実在):第56話~
宇宙領域把握(Space Domain Awareness)衛星。地球の地表側ではなく衛星軌道や外側の空間などを観測するための人工衛星。
作中では、日本の防衛省が打ち上げた軍用スパイ衛星として登場。
現実でも、防衛省宇宙作戦群、JAXAなどが運用を計画している。
【オメガ型ミラー構造タンパク質】(生物工学・架空):第59話~
スクルドが計画中の人工タンパク質。既存のタンパク質の鏡像構造をもち、神経細胞の寿命延長などに使われる予定のもの。
タンパク質の鏡像構造は自然界には存在せず、生物的化学反応による分解や消化などができない。一方、自然界への影響が未知であり、生物汚染の危険が高いために、完全密閉された実験室(P4実験室)でしか扱えない危険なもの。
【量子観測の視線誘導】(IT技術・架空):第62話~
カレンが考案した量子ネットワークのハッキング手法。量子観測の順序を意図的に変えることで、情報の差し替えやエラー補正回避を行う。
マジシャンなどが視線誘導を意図的に行い、見えないところで単純な仕掛けを動かす様子と似ている。実際の運用としては《セキュリティ倫理違反により削除》
【魚鱗陣 (ぎょりん)】(軍事工学・実在):第65話~
魚の鱗のように、小さなユニット群が重なるように配置する陣形。主に攻勢時に用いられる。カレン隊が防戦時に使用。
盾などを使い、防御力などを維持しつつ進軍する際、または相手の進軍の勢いを削ぐ場合に最適な陣形。
【ホコリタケ防壁】(IT技術・架空):第68話~
カレンが作成した、反撃要素もある防衛プログラム。攻撃を受けるとホコリタケの胞子のように散らばり、同時展開で相手に無意味な計算をさせつつ、相手の一時メモリを圧迫させる。リアクティブ(爆発によって威力を相殺する)型防壁。
【鍵穴ダニ】(IT技術・架空):第68話~
カレンが作成したスパイウェア。ネットワークの血流(データ)から暗号鍵のヒントを吸い出し、溜め込む機能を持つ。通信接続確認用のパケット(塊)などに紛れ込む。
【オーケストレーション理論 (Orch-OR)】(量子力学・実在):第76話~
複数の要素(楽器、サービス、プロセス)を調和・管理し、全体として複雑なタスクや芸術的な表現を効率的・効果的に実現する「調整・編曲・管理の仕組み」を指し、オーケストラの指揮や演奏に例えられている。
Orch-OR理論(オーケストレーションされた客観的収縮理論)は、理論物理学者のロジャー・ペンローズと麻酔科医のスチュワート・ハメロフによって提唱された仮説。
意識は脳内の神経細胞(ニューロン)の細胞骨格にある微小管(マイクロチューブル)で起こる量子計算と、重力による波動関数の客観的収縮(OR)によって生じるとする仮説。量子脳理論、量子意識とも言われる。
スクルドの神経工学研究に関連する。
【サイドチャネル攻撃】(IT技術・実在):第77話~
暗号装置の動作時間や消費電力などの物理的特性(漏洩情報)を観測して、暗号鍵を推測する攻撃手法。ターゲットが家に入る時に、手の動きなどを注視して、どんな鍵の構造なのか、暗証番号は何かを盗み見るような攻撃方法。
【インテンション粒子】(素粒子物理・架空):第77話~
スクルドが仮定した、神経細胞間の情報伝達を担う未知の素粒子。量子力学的な相関関係がなければ成立しないような挙動(隣接していない神経細胞同士の相関的な挙動)が見られたため、スクルドが命名した仮想の者。インテンションは英語で「意思」を意味する。
【時間対称的量子力学 (TSVF)】(量子力学・実在):第77話~
過去から未来への状態だけでなく、未来から過去への状態ベクトルも考慮する量子力学の理論。物理法則が時間を逆向きにしても変わらない性質を指し、エントロピーとの関連も研究されている、物理学の重要な対称性の一つ。
時間を逆向きに進行しても物理法則そのものは変わらず、エントロピー(乱雑さ)増大は維持されるというもの。
物理現象としては観測されていないが、数理展開上で発見された挙動。
【量子逆因果性】(量子力学・実在):第77話~
未来の観測結果が過去の状態に影響を与えるという仮定の現象。
通常の「原因→結果」の因果関係が逆転する概念で、量子力学の「時間の対称性」や「量子もつれ」などの現象と関連して哲学的な考察や理論物理学で議論されており、特定の実験結果がこの概念を示唆しているように見える場合がある。
観測された未来を干渉すれば、過去に遡って干渉影響が出るという仮説。
【假道伐虢(かどうばつこく)】(軍事工学・実在):第83話~
「道を借りて
相手に道を貸す(借りる)ふりをして、実際にはその道を通り抜け、目標の国を攻め滅ぼし、さらに道を貸した国まで滅ぼすという、春秋時代の故事に由来する兵法・謀略。
カレンがノルンに拠点を造らせる作戦をこう例えた。
【AH-64Dアパッチ】(軍事兵器・実在):第91話~
米国ボーイング社が開発した攻撃型ヘリコプター。米軍や陸上自衛隊の兵装として正式採用されている。1996年に運用が開始されたヘリだが、近代化改修を何度も施され、現代戦でも使われている。
ミサキがドローン化・リモート制御化の近代化改修を提案した。
【CH-47JAチヌーク】(軍事兵器・実在):第91話~
米国ボーイング社が開発した輸送型ヘリコプター。長細い機体に、ローター(回転翼)が前後に二つある特徴的な機体。
人員輸送では55名(公表値)、積載は高機動車や小型の0.5トントラックなどを積むことができる。空中機動兵站の主力。
【S/N:0028】(分類不可):第96話~
アリスのBMIに刻印されていたシリアルナンバー。彼女が実験体であったことを示唆する。鉄人ではない。
【自閉スペクトラム症(ASD)】(精神医学・実在):第96話~
Autism Spectrum Disorder。『精神障害の診断と統計マニュアル』第5版(DSM-5)において神経発達症群に分類される診断名の一つ。
コミュニケーションの困難さやこだわり行動、興味が限定的、行動が反復的、などを特徴とする発達障害。アリスの症状として疑われた。
【グローバルホークRQ-4B】(軍事兵器・実在):第101話~
米国ノースロップ・グラマン社が製造している無人偵察航空機。UAV(無人航空機)だが戦闘機並の大きさがある。
巡航速度343キロノット、航続距離2万2千キロ以上、滞空時間36時間(いずれも公表スペック値)という、まさに鷹が獲物をじっと見つめ続ける行動が可能な機体。
日本への導入は紆余曲折がありながらも、2022年に航空自衛隊三沢基地へ納入。一機百数十億円の高級機体。
【核融合ロケットエンジン】(宇宙工学・架空):第102話~
ノルンがジョン・C・ステニス宇宙センターで開発を進めている、次世代の宇宙船用エンジン。
九州大学や英国のPulsar Fusion社などが研究開発を進めている実現可能性が高いロケットエンジン。
【DDoS攻撃】(IT技術・実在):第104話~
Distributed Denial of Service attack。複数の機器から一斉にデータを送りつけ、システムをダウンさせる攻撃手法。コンピューターウイルスなどで多くのユーザーのパソコン(端末)などをジャックし、その計算リソースを使ってバックグラウンドで対象に大量のネットアクセスをする方法もある。ハックされた端末ユーザーが気付かない内に攻撃者となっている場合もある。
大手のネットサービスが攻撃されて、サーバーダウンしている様子は、日常的に見られる。
【光子版トロイの木馬】(IT技術・半架空);第104話~
量子通信を利用してシステム内部に侵入し、バックドアを開くためのウイルスプログラム。ギリシャ神話のトロイア戦争の故事に由来し、ユーザーを騙してインストールさせ、気づいたときに活動を開始して被害をもたらすのが特徴。
コンピューターウイルスの基本的かつ古風な方法だが、現在でも多様されるほどの王道の方法。
【M31 GPS誘導弾】(軍事技術・実在):第104話~
MLRS(多連装ロケットシステム)から発射されるGPS誘導式のロケット弾。
高い命中精度を誇り、GMLRS(Guided Multiple Launch Rocket System)とも呼ばれ、ウクライナでの運用が有名、射程は70~90km程度で、敵の前線を越えて目標を攻撃できるのが特徴。ウクライナ戦線では、HIMARS(ハイマース)として新聞記事にも乗っていた。
【スキャンイーグル】(軍事技術・実在):第107話~
陸上自衛隊が保有する小型無人偵察機。中域用無人偵察機(UAV)で、ボーイング社製「スキャンイーグル2」が正式名称。自衛隊では、中域用UAVとして2019年から本格導入された。
【ガルム】(軍事技術・架空):第112話~
《第112話公開後、開示予定》
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