第7話 蛇の群れの逆襲!


 アオクーサを前にして、ベーキウたちがボコボコにした蛇の群れが再び現れた。しかも、今回は何かが違うことをベーキウは察していた。強い奴がいる。そう思ったベーキウは、魔力を解放して蛇が現れるのを待った。


 しばらくして、包帯まみれの蛇たちが姿を現し、上空からとんでもなく大きな蛇が現れ、地面に着地した。


「うっげェェェェェ! でかすぎる、気持ち悪い!」


「確かにあのサイズの蛇となると、嫌悪感が増すのー」


 シアンとクーアは嫌なそうな顔をし、キトリは巨大な蛇を見ないように顔を背けていた。そんな中、巨大な蛇は大きな口を開けた。


「お前たちが俺様の可愛い仲間をボコボコにしやがったのか? とぼけたって無駄だぞ。お前らの話は仲間からちゃーんと聞いたんだぜ」


「うわっ、こいつ喋れるのかよ」


「余計に気持ち悪い」


 ベーキウは驚き、キトリは再び嫌そうな顔をした。巨大な蛇はベーキウたちの反応を見て、怒り出した。


「気持ち悪いとか言うな! とにかく……この森の主、アオタイショー様を怒らせたらどうなるか、分からせてやるぞ!」


 と言って、アオタイショーは近くにいるシアンに襲い掛かった。アオタイショーは大きな体を使い、シアンを縛ろうとした。だが、攻撃を察知したシアンは高く飛び上がり、アオタイショーの頭に向かって魔力の塊を放った。


「これでくたばったでしょ」


 かなり強めの魔力を使い、塊を作ったため、塊としての硬さと爆発した時の威力が高く、これを喰らって一発で倒れるだろうとシアンは思った。だが、発した爆発の煙から現れたアオタイショーの尻尾を見て、シアンは驚いた。


「油断しすぎじゃ、経験がないからこうなるのじゃ!」


 呆れたようにクーアがシアンの前に立ち、風の刃を放った。


「フン。この程度の風の刃で俺の尻尾は斬り落とせないぜ!」


 クーアの風の刃を受けたアオタイショーの尻尾だったが、言葉通りに斬り落とすことはできなかった。一度引くしかないと考えたクーアは、シアンを連れて後ろに下がった。


「結構タフな奴だね。魔力による攻撃を受けてもダメージがない」


「予想外の強敵に会うとはのー。ベーキウのクレイモアで叩いてもびくともしなさそうじゃ」


 クーアはそう言って、ベーキウとキトリの方を見た。ベーキウはクレイモアを構え、キトリは闇の魔力で武器を作っていた。


「キトリ、俺が前に出る。闇の魔力の武器であのデカ蛇を叩いてくれ」


「分かった。気を付けてベーキウ。あの蛇、かなりタフだから」


「ああ。分かってるさ!」


 ベーキウは魔力を解放し、クレイモアを手にしてジグザグに走り出した。


「フン! 俺の目をごまかすつもりか? そんな手に引っかかる俺様ではない!」


 アオタイショーは尻尾を高く振り上げ、地面に叩きつけた。その衝撃でベーキウの周りに土や小石が舞った。


「グッ! 目にゴミが!」


 周囲に舞う土や小石を目から守るため、ベーキウは目をつぶって両腕を目の前に動かした。その隙に、アオタイショーはベーキウの腹に向かって頭突きを放った。


「ガハッ!」


「まだ戦士としては未熟だなぁ! 坊主!」


 アオタイショーの頭突きを受けたベーキウは、勢いよく後ろへ吹き飛び、後ろの木に激突した。


「ベーキウ!」


「俺は大丈夫だキトリ、闇の武器であいつを叩け!」


 ベーキウの言葉を聞き、キトリは一安心した。その後、アオタイショーの方を向いて闇で作った大剣を構えた。


「よくも私の好きな人を……絶対に許せない!」


「ここで告白か? 戦いの最中、意中の異性に告白すると死亡フラグが立っちまうぜ!」


「死亡フラグが立ってんのは」


「お前じゃボケェェェェェ!」


 アオタイショーの頭上から、シアンとクーアの声が響いた。シアンは剣を構え、クーアは魔力で作った剣を周囲に浮かばせていた。


「オイオイ、経験の浅い小娘たちが勢いで攻撃を仕掛けてもなぁ……無意味なんだよぉ!」


 アオタイショーは偉そうにこう言って、とぐろ状に体を動かした。


「何なのそれ? ウンコのものまね? 汚いわねー」


 嫌そうな顔をしてクーアがこう言ったため、アオタイショーは大声で言葉を返した。


「そんなことするかボケ! 今から放つのは俺様の必殺技、スネークタイフーンだ!」


 と言って、アオタイショーは勢いを付けて体を回した。物凄く早く動くため、周囲に風が舞い、竜巻を起こした。


「おおっ! アオタイショーさんの必殺技、スネークタイフーンだ! あの技を見るのは久しぶりだ!」


「ここ何年かは使ってないぜ。アオタイショーさんは、強敵だと思った敵にしかこの技を使わないからな」


「これであいつらもノックアウトってわけよ!」


 試合を見ていた蛇たちは、嬉しそうにこう言った。


 一方、竜巻の中にいるシアンたちは、打開策がないか辺りを見回していた。竜巻が発しているおかげで、土や石、周りの木々も浮き上がっているのだ。しばらくすると、シアンの近くに大きな枝が飛んで来た。


 あれを使えば、あいつに大ダメージを与えられるかも!


 そう思ったシアンは大きな枝を手にし、下で動いているアオタイショーを睨んだ。シアンは大きな枝を矢のようにして飛ばし、アオタイショーに一撃を与えようと考えたのだ。しかし、アオタイショーが作った竜巻で体が大きく動くため、なかなか狙いが定まらない。早く戦いを終わらせたいのにと思ったシアンだったが、なかなかそうはいかなかった。


「ああもう、これだけ動いたら狙いが定まらないじゃない!」


「仕方ないのう。わらわが手伝ってやる」


「一人でやるよりも、皆でやった方が効率はいいわ」


 と、クーアとキトリがシアンの元へ近づき、動きを鈍らせるために魔力を解放し、風よけを作ってくれたのだ。


「ありがとう。お礼は言っとくよ」


「そんなことより早くあの気持ち悪い蛇を倒せ」


「私たちが魔力を解放していると察したら、より強い竜巻を作るかもしれない。叩くのは今しかない」


 クーアとキトリの言葉を聞き、シアンは大きな枝に魔力を込め、勢いを込めて大きな枝をアオタイショーに向かって放った。


「ん? 何じゃい?」


 アオタイショーは激しく動きながら上を向いた。すると、シアンが放った大きな枝がアオタイショーの額に突き刺さった。


「イッギャァァァァァ! 何か飛んできた、何か突き刺さった。痛いィィィィィ!」


 大きなダメージを受けたアオタイショーは激しく暴れだした。このおかげで、アオタイショーが作っていた竜巻は消えた。


「ゲエッ! スネークタイフーンが破られた!」


「そんな、あいつらアオタイショーの技を!」


「まさか……あの人が負けるのか?」


 スネークタイフーンが消え、傷付いた姿のアオタイショーの姿を見た蛇たちは驚いていた。そんな中、上空にいたシアンたちが地面に着地し、ダメージを受けてよろついているアオタイショーを見た。


「さてと。あとの仕上げはベーキウに任せるか」


「そうじゃの」


「そうだね」


 シアンたちが話を終えると、クレイモアを担いだベーキウが猛スピードでアオタイショーの元へ接近していた。


「これで終わりだ! デカ蛇野郎!」


 そう言ってベーキウは高く飛び上がり、上空からクレイモアをアオタイショーの頭に向かって振り下ろした。強烈な一撃を受けたアオタイショーは悲鳴を上げ、そのまま倒れた。


「そんな……アオタイショーさんが……」


「人間ごときに倒されるなんて……」


 蛇たちは驚いた表情でベーキウたちを見た。そんな中、戦いを終えたベーキウたちは蛇たちを見た。今度は俺たちだと思った蛇たちは、急いでその場から逃げた。




 アオタイショー率いる蛇たちとの戦いを終えた後、ベーキウたちはアオクーサの元へ向かった。また何か現れるのではないかとベーキウは思ったが、シアンは何も考えずにアオクーサを引っこ抜いた。


「これで素材の一つはゲットしたね」


「ああ……何も起きないな」


 アオクーサを手に入れても、何も起きないことを察したベーキウは安堵の息を吐いた。クーアはベーキウの肩を叩き、こう言った。


「何かあると思ってびくびくしていたのじゃろう。でもま、そこまで恐れることはないぞ。そんなことが起きるのはゲームの中だけじゃ」


「そう……だよな」


 ベーキウは少し笑いながら、森の中を見回した。とりあえず目的は果たしたし、一度戻ろうと思ったベーキウは、シアンたちに戻ろうと言った。

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