第27話 ケモ耳と尻尾
俺はジリアーヌを抱き上げたまま馬車の中に入り、ジリアーヌの体をベッドの上に落とした。
今まで憩いブースで使っていたカンテラを持ち込んで馬車内に明かりを灯す。
馬車の中はその殆どがベッドに占有されていて、他には物を置くための戸棚と身支度用と思われる少しくすんだ鏡があるくらいだ。壁や天井などには申し訳程度に装飾がされている。
それでも、ジリアーヌの趣味が滲み出いているのか、落ち着いた色気を漂わせている。
ジリアーヌはベッドの上で身動きできずに横たわっている。不安そうに俺を見つめる瞳が欲情を駆り立てる。
ふっふふふ…こんな美人といたせるなんて最高じゃないか。
隣とその隣でいたしていたライーンとシーミルたちが行為を終えたようで、楽しげに笑いながら遠ざかっていく声が聞こえる。
意外と声が通る事に驚き、あまり変な言葉責めは出来ないなと戒める。
貴族謁見用の厳しい衣装を脱ぎ、上半身裸になってベッドに腰掛けると、ジリアーヌの体を後ろから抱き締めるように引き寄せた。
「さて、この
「て、抵抗はしないから、身動きは出来るようにして欲しいわ。」
「ほう、それを信じろと?これはお仕置きだからな。じっくりと調べさせてもらおうか。」
「昨日と全然違う…こ、こんなの…わ、若者らしくない…わ。」
そりゃそうだ。こちとら年季の入った63年ものよ。じっくりじっとりね~~~っとりと楽しませて貰うぜ。
昨日の事は覚えてないが、性欲の赴くままにジリアーヌを襲ってしまったようだし、確かに若者っポイといえばポイな。
このわがままボディも気になるが、先ずはこれだよな。
俺はジリアーヌのキツネ耳を指先でそっと摘んでみた。
「あぅ…」
ジリアーヌの体がピクンと弾けるように震える。
そのままキツネ耳の形に沿って撫でてみる。
「はうぅっ!」
ほう、随分と感度がいいな。その悩ましげな声にゾクリとさせられる。
ジリアーヌのキツネ耳は暖かくて脈打っている。カンテラの明かりを透かしてみると、細い血管が何本も走っているのが見える。頭の地肌からそのまま繋がっているのも見えるし、引っ張ると地肌も伸びていく。
さすがにもう認めるしかないようだ。
このキツネ耳は本物だと!
勿論、尻尾もそうだ。
最初は付け耳や付け尻尾だと思っていたけど、どうにも途中から本物ではないかと疑い始めていた。
シーミルやカルシーを見ている時は、まだよく出来てるなぁと半信半疑だったけど、ジリアーヌと話をしているうちに確信に変わっていった。
とにかく、よく動くのだ。
それもただ動くだけでなく、その時の感情に合わせた動きを自然にするんだよな。
嬉しそうな時はキツネ耳がピンと立って尻尾がふわふわ揺れるし、悲しそうな時にはキツネ耳が垂れて尻尾もだらりとする。また、びっくりした時にはキツネ耳がキュって細くなって尻尾が逆毛になるし、動揺した時にはキツネ耳が忙しなく左右に動き尻尾がピクピク震える。
表情が豊かなんてものじゃない。顔の表情以上に感情が表れる。
どう考えたって、これは本物以外にありえないだろう。
「はひぃ…っ!」
耳の内側に生えたフワフワの毛を指で突くと、キツネ耳をプルプル震わせながらジリアーヌは身を捩って可愛らしい声を上げる。
「いきなりケモ耳はダメぇ…」
ほう、これはケモ耳というのか。
ジリアーヌはケモ耳が弱いらしい。それってケモ耳を持った者は皆んなそうなのか…?
しかし、本来ならあり得ない事だよな。
普通に人間の耳は顔の横にあるのに、獣の耳が頭の上に乗っかっているなんて付け耳だと思うのは当たり前だろう。マンガやアニメじゃあるまいし、人間の女の体に獣の耳と尻尾だけが付いてるなんて、自然では有り得ない事だ。いくらファンタジーと言っても無理がありすぎるだろう。
しかも、耳の中を覗くと穴が無いんだよな。少し盛り上がった地肌があって綿毛のような柔らかい毛が生えているだけだ。実際、何の意味があるんだ?
まあ、可愛いのは確かだが。
「ジリアーヌ、少し訊いていいか?」
「な、なに…?」
「このケモ耳と尻尾って、本物なんだよね?」
「えっ…⁉」
ジリアーヌの悩ましげだった表情が途端にポカーンとして固まった。
美人が見せる間の抜けた顔って最高にツボるな。
っと、そうじゃなくて、それは置いといてだ。ジリアーヌの顔が何を言ってるのという表情に変わる。
「何でそんな事を訊くの?何か意味があるの?」
「いや、特に意味はなくて、そのままの意味だけど…」
「もちろん本物だけど…???」
ジリアーヌは心底分からないという顔をする。
やっぱりそうだよな…
ジリアーヌたちにとっては有って当たり前のもの。体に手や足があるのと一緒だ。そこに疑問を挟む余地は無い。
本当にどういう事なんだ?どういう進化の過程を辿ればこんな事が起こるんだ?
この星独自の進化なんだろうけど、全く理解に苦しむというか出来ない。
今度は俺が心底分からないという顔をしていると、ジリアーヌが話しかけてきた。
「もしかして、ケモ耳を持った『ケモ耳人』の事を覚えてないの?」
「えっ、あっ、いや、う、うん、そうだな、覚えてないっていうか、初めて見たような気がしてるんだ…」
「そうなの?別に珍しくもないのに…」
ジリアーヌの顔が一瞬だけ疑惑の表情になり、キツネ耳がピクンと震えた。
ケモ耳をした者をケモ耳人(ケモミミビト)というのか。
まあ、確かに珍しくないんだろうな。実際にこの商隊に来て何人ものケモ耳人を見てるしな。
でも、ケモ耳といっても一種類だけじゃなくて、様々な動物のバリエーションがあるみたいだし、そんなこと遺伝的にありえないだろう。それじゃあ異種族交配が可能みたいじゃないか…
あっ…!
待てよ、そういえば、俺が山や森で戦ってきた魔物は地球の動物に似ていながら、何種類かの獣の特徴が混じっているような感じだった。
それは、この惑星上での進化の過程でそういう姿形になったのだと思ったが、あれは異種族交配によって生まれたものなのか?
思い出したくはないが、リュジニィもゴブリンの子どもを孕んでいた。
地球では、異種族交配は基本的に自然な状態では成り立たない。
実際にチンパンジーやオランウータンなどの猿たちと人間との交配を試みた科学者がいたが、どれも成功はしなかった。
ましてや犬や猫などと人間の交配が成り立つわけがない。
だけど、この世界は違うのか?
まさか、ジリアーヌは人間とキツネ…
「なにか、すっごく失礼な事を考えてない?」
俺が恐ろしい考えに陥っていると、ジリアーヌがじろりと睨みつける。
そ、そんな事はないと否定したが、俺の疑惑を晴らすためにジリアーヌはため息をついてから丁寧に説明してくれた。
この世界では人間同士の交配でも普通にケモ耳と尻尾を持ったケモ耳人が産まれるらしく、父親と母親の両方にケモ耳と尻尾が無くても、その子供にケモ耳と尻尾を持って産まれる場合もあるそうだ。
ケモ耳人というのはケモ耳と尻尾が備わった者を指すが、普通の人間である事に変わりはないという。
何故そうなのかは、ジリアーヌたちもよく解っていないようだが、神様の思し召しと考えられているようだ。
ただ、魔物と人間の交配も種族によっては可能ではあるらしいが、その場合生まれてくるのは必ず魔物側の子供という事だ。
ゴブリンやオークといった雄族の魔物やセイレーンなどの雌族が該当するようだ。
成程。不思議だが、この世界ではそれが事実らしい。
しかし、ゴブリンはやはり雄しかいないのか、あっさり謎は解けたな。
なにげに、オークやセイレーンも日本語と同じだ。
星が違うと遺伝の仕方も違うのかも知れない。そう考えるしかないようだが、なにか腑に落ちないな。神様の思し召しかどうかは解らないが、自然発生的なものではないだろうと思う。ディケードの記憶を探っても、ぼんやりしていて今一はっきりとしない。
ふと思い出したようにジリアーヌが訊ねる。
「ディケードって、もしかしたら人間至上主義の国から来たんじゃないの?」
「人間至上主義の国…そんな国があるのか?」
「そんな国があるって聞いた事があるわ。噂ではその国の王太后様がコンプレックスを拗らせてケモ耳と尻尾を持つケモ耳人を奴隷にしているらしいわ。で、ケモ耳人以外を一般市民としているってね。」
「ケモ耳人は生まれながらにして奴隷か、恐ろしい国だな。でも、なんで王太后様はコンプレックスなんて持つに至ったんだ?」
なんでも、王太后様が王妃である時に王様はあらゆるケモ耳のケモ耳人女性を集めてハーレムを作り、それに夢中になった事で王妃様は無下に扱われるようになった。そんな生活が長い事続いたが、王様は腎虚でポックリ逝った。
王妃は王太后となり、王様になった息子と共にケモ耳人を奴隷化する政策を執り行うようになった。女としての時を奪われた積年の恨みが全てのケモ耳人に向いたという訳だ。
女性の嫉妬とはかくも恐ろしい。
ケモ耳人か…
なんだろう?さっきから頭の隅でモヤモヤした感じがする。多分、ディケードの記憶だろうけど、ケモ耳に対して誰かと何かを話してるというか、相談しているようなイメージがチラついている。
う〜ん、はっきりしなくてもどかしい。
しかし、ケモ耳人女性はそれほど魅力的なのかね?
色んなケモ耳のケモ耳人女性を集めてみたいというのは、コレクター的思考だとありだと思う。あらゆる動物の耳をした女性が一堂に会せば壮観な眺めだろう。
とはいえ、それだけではないはずだ。
王様は王妃を無下に扱うようになったというくらいだから、ケモ耳人にはノーマルの女性以上に虜にする魅力があるのだろう。
ジリアーヌを見慣れると、少しきつめの顔立ちがキツネ耳によってとても愛らしく思えるし、尻尾も揺れる事で物腰に愛嬌が感じられる。
確かにケモ耳と尻尾は女性の魅力をさらに効果的に高めるようだ。
そういえば、さっきライーンが若い男と馬車に向かいながら「わたし、ケモ耳無いけど大丈夫?」と聞いていたが、つまりそれはケモ耳人の方が女性として人気があるという事なのか?
☆ ☆ ☆
ジリアーヌのキツネ尻尾を摘んで毛並みに沿って撫でてみる。
「あぅっくぅ〜…」
ジリアーヌの体がビクリと震える。
さらに優しく揉むように撫でてみる。
「あっ、あぁ…くふぅ〜…」
尻尾が小刻みにプルプル震える。
キツネ耳にしても尻尾にしても随分と感じるようだ。これが演技だとしたら大したもんだ。
まあ、仮にそうだとしても、娼婦として俺を楽しませてくれようとしてるのだろう。この反応を見てるだけでも面白いが、何よりも手触りが最高だな。
お土産屋なんかでキツネ尻尾のキーホルダーを売っているが、あのフワフワモフモフした柔らかい感触は触っていて気持ちがいい。
しかし、ジリアーヌの活きた尻尾はあの柔らかさに加えてしっとりした滑らかさがある。キツネの太い毛の弾力と滑らかさは、永遠に触っていたいと思わせる魅力に満ちている。
ケモ耳人。確かにヤバいな。この尻尾と耳だけで虜になりそうだ。
「はひぃ〜…うぅ…お、お願い…もう、もう勘弁してぇ〜…はぁはぁ…」
ジリアーヌが荒い息を弾ませながら体をビクビクと震わせている。
っと、いかんいかん。つい夢中になって尻尾を撫で続けていたぜ。
「はあああぁぁぁ〜〜〜…」
撫でるのを止めると、ジリアーヌはクッタリと脱力して俺に体重を預けた。
ジリアーヌの火照った体温がドレス越しに感じられる。
う〜む、これは演技で出来るものじゃないよな。もしかして、ケモ耳人のケモ耳と尻尾は性感帯になってるのか?だとしたら最高すぎるだろう。
王様がケモ耳人女性を集めてハーレムを作ったのも、同じ男として納得できるしメッチャ羨ましいな。
「あ…」
俺は《プレッシャー》と《センス》による拘束を解いた。
自由になったジリアーヌは、腕をさすりながら伺うように俺を見つめる。
「お仕置きはこれくらいにしておこうか。」
「え、もういいの…?」
「これから先はジリアーヌの自由意志にまかせるよ。
その、なんだ…昨日は意識がない状態で無理やり迫ったみたいだけど、本来はそういうの、好きじゃないんでね。クレイゲートの命令も気にしなくていいよ。」
「そう、ディケードは紳士的なのね…」
本当は今、ヤバいくらいに興奮して欲情している。
さっきから放たれるジリアーヌの魅惑的な芳香と、恥態による誘惑が俺の男に火を注いでいる。今すぐに襲ってしまいたい衝動に駆られるが、やはりジリアーヌの気持ちを尊重したい。出来るならお互いに楽しみたいと思う。
ジリアーヌは奴隷としてクレイゲートの命令にしたがっているのだろうが、俺から慰謝料を受け取らなかった時のセリフが気になる。
『あなたとお金を通して繋がりたくない…』
ジリアーヌに訊いても真意は答えないだろうけど、俺も自分なりの誠意を示したいと思う。
金を受け取ってくれたなら、こんな考え方はしないんだけどな。
ジリアーヌは少し困ったような、拗ねたような顔で俺を見る。
「わたしって魅力が無い?」
「まさか、今まで出逢った女性の中では最高に魅力的だよ。」
「もう、嬉しいけど、そこまで言われると嘘くさいわよ。」
割とマジなんだけどな。日本人に比べてスタイルは圧倒的だし、男として底辺に居た俺は美人にまともに相手なんてされなかったからな。
「じゃあ、ジリアーヌにとって俺は魅力的かな?」
「ディケードに魅力を感じない女はいないと思うけど。」
ありゃ、随分あっさりと肯定されてしまったな。
「まあ、見た目はわたしには若すぎると思うけど、逆に言動はわたしよりもずっと大人で包容力に溢れてるわ。なんせ、あのクレイゲート様をやり込めたんですもの。それに何より…」
何より、飛竜を単独で仕留めた圧倒的な力は雄に対する雌の魂を揺さぶる、と。そう言いながら熱い眼差しで見つめられてしまった。
う〜む…これって惚れられているっていうか、モテているのかね…
悪い気はしないけど、ディケードのチート能力によるところが大きいからな。見た目の好さもあるだろうしな。俺としては未だに以前の身体の状態の意識の方が強いので、半分他人事のような感覚なんだよな。
とはいっても、美女に熱い眼差しを向けられると気分が浮き立つのは確かだけどな。
「ディケードはまだ青年期に入ったばかりみたいだけど、以前からモテていたんでしょうね。」
「さあ、それはどうなのかな。そんな記憶は無いけどな。」
「それは忘れてしまっただけでしょう。あなたの女性に対する態度は、どうみても若い男の子のものじゃないわよ。」
「そ、そうかな…ははは…」
乾いた笑いしか出ないな。
あの夢のような記憶だと、どうみても本来のディケードはオタクっぽい少年で童貞みたいだったけどな。
俺はモテないまでも、一応恋愛を経験したし、結婚生活もしたからな。結婚する前と離婚後は、それなりに大人のお風呂屋さんにもお世話になったしな。確かに経験値からすると少年とは違うだろうな。
ジリアーヌは俺の胸元に擦り寄るようにしてしなだれ掛かってきた。
「ディケードの初めてを貰えないのはちょっと残念だけど、ケモ耳人を経験した事が無いならわたしで試してみる?
昨日の事は覚えてないんでしょう。少し怖かったけど、ワイルドで素敵だったわよ。」
ディケードの体では昨日が初めてで、その相手はジリアーヌだったんだけどな。
ジリアーヌの甘えた態度での誘惑に、俺の欲望は刺激され激しい炎となっていく。
昨日は俺の攻めに耐えられなくなって泡を吹いて気絶していたと聞いたけど、ジリアーヌ的にはそれも魅力的だったのかね?
女性の場合、性的嗜好において被虐的な情況を好む者も多いからな。
俺にはあまり理解できない嗜好だけど、ジリアーヌが俺との行為を嫌がっていないのは伺える。
ならば、答えは一つだ。
俺はジリアーヌの身体を強く抱き寄せると、顎をつまみ上げて唇を重ねる。
ジリアーヌには予想外だったのか、驚いて目を見開く。
俺はキスしたままジリアーヌの唇を開かせると、舌先を口腔内に差し込んでジリアーヌの舌先に絡ませる。
この世界ではディープキスというのは珍しい行為なのだろうか。ジリアーヌは固まってされるがままになっている。
俺はたっぷりと時間を掛けてジリアーヌの口腔内を貪る。
その間にジリアーヌが着ているベストコルセットの紐を解いて脱がしていく。
ずっとされるがままになっていたジリアーヌだが、呼吸をするタイミングを失ったために、苦しそうにもがいた後、無理やりキスを解いた。
「はあ…はあ…な、なんなの…こんなキッスした事ない…わ…って、いつの間に!」
大きく呼吸を繰り返しながら、自分の胸がはだけているのを知って驚く。
もしかして獣のように乳首が6つとか8つとかあったらどうしようと思ったが、そんな事はなくて人間そのものなので安心した。
昨日はこの胸を曝して俺を誘導したらしいが、素晴らしいの一言だな。
大きさ、形、バランス、全てが完璧だ。特に白人ならではの淡いピンク色の突起が美しすぎる!
ジリアーヌは咄嗟に胸を隠して後退るが、俺はそれを許さずにジリアーヌをベッドの上に押し倒す。
「あ、あなた、もしかしてテクニックも凄いの⁉」
「さあ、どうだろうね。それは自分の体で体験してみてくれ。」
「はひぃ〜…」
俺はジリアーヌに覆い被さって再び唇を重ねる。
昨日は性欲のままに若さを爆発させたみたいだが、今日はオッサンならではのネットリしたテクニックを披露してみせよう。
なんとなくだが、ジリアーヌの反応を見る限り、この世界の男女のやり取りは本能のままに繋がるだけのようだ。ディープキスのテクニックさえ無さそうだしな。
その点、日本は風俗産業が異常なまでに発展した国だ。ノーマルな遊びからイメクラやエスエムといった変態的嗜好のものまで何でもある。
オッサンはそんな国の国民だ。
その知識と経験を生かして、ジリアーヌと楽しんでみようじゃないか。
あっはっはっはっはっはっはっはっ………
☆ ☆ ☆
ふう~~~…
さて、結果からいうと、ジリアーヌは素晴らしかった。
元々請負人をしていただけあって、よく鍛えられた
「も、もうダメ…」などと何度か弱音を吐いていたが、俺の探究心は止まる事を知らずにケモ耳人であるジリアーヌの
耳や尻尾の他にも獣的要素があるのかと密かに期待したが、残念ながら他は人間の女性と全く同じだった。
ただ稀に、手足の先に獣の毛が生えている者もいるそうで、それはレアな存在として希少性があるらしい。
それはともかく、ケモ耳と尻尾が素晴らしすぎるのは確かだ。
ジリアーヌが切なげに声を漏らす時、キツネ耳がプルプル震えながら折れ曲がったりピンと立ったりして、悩ましげに左右に揺れ動いたりする。
それを見ているだけでも愉しいのに、尻尾はさらに凄くて、ビクンビクン震えながら俺の体に絡みついてくる。
あのモッフモフでシットリしたキツネ尻尾で震えながら体を撫でられると、もうヘブン状態になってしまう。何処までも何処までも果てしないヘブンが拡がる。
王様が虜になった訳を、俺は身を持って体験した。
が、しかし、二人で楽しんだのはここまでだった。
俺が頂上に上り詰めた時、突然記憶のシャワーが降り注いだ。
本来のディケードが体験した記憶がフラッシュバックのように頭の中を駆け巡り、様々なイメージが乱舞した。
俺の意識とディケードの記憶が重なり合って混じり合い、飽和状態となったところで一気に弾けた。
後は昨日の焼き直しだ。
正気を失った俺は暴走して、本能の赴くままにジリアーヌを攻め立てた。
体力が尽きたジリアーヌは気を失ったが、俺の攻めは続いたらしい。それに気付いたバーバダーは、カルシーを投入してジリアーヌと入れ替えたようだ。
☆ ☆ ☆
朝になって気が付くと、俺は馬車の中の狭いベッドの上で、ジリアーヌとカルシーの三人で絡み合うように裸で横たわっていた。
俺はまたもや激しく落ち込んだ。
昨日のシーミルに続いてカルシーまで抱いてしまったのだ。
覚えてないとはいえ、十代半ばの少女と致してしまうなんて、本当に死んでしまいたくなるような罪悪感を覚えた。
「はあ〜…きつかったぁ〜…ディケード様って、話に聞いていた以上に凄かったよ。凄いスタミナだよね。初めからわたしが相手をしていたら、ジリアーヌ姉さまと同じになったか、もっと酷い事になったよね。」
目の覚めたカルシーが疲れを滲ませながらも、あっけらかんと言い放った。が、何の慰めにもなりはしない。
俺がせめてもの償いにと金貨を差し出すと、カルシーはネコ耳と尻尾を真っ直ぐに突き立てて喜んだ。
「ニャハーーーーーっっっ!!!」
現金な物で、金貨を受け取ったカルシーはもう一戦する?と訊いてきたが、丁寧にお断りした。
意識のある状態でカルシーとしてしまったら、俺は自分を許せないだろう。
「ありがとう、ディケード様!またね〜♪」
スキップしながら去っていくカルシーを見送りながら、俺は自分がどうしようもなく汚いオッサンに思えて仕方なかった。
俺は居た堪れなくなり、眠り続けるジリアーヌに毛布を掛けると馬車から出た。
幸い、カルシーが投入された時に俺用の普通の服をバーバダーが用意してくれていて、貴族謁見用の厳めしい衣装を着なくて済んだのはありがたかった。
外に出ると、食事をしたり出発の準備をする人で賑わっていた。
まだ出発までには時間があるようなので、俺は用を足しに草むらに向かった。
朝の眩しい明るさの中、俺は出来るだけ日光を浴びて自分の罪深さを浄化できるように願った。
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