第七話:古代遺跡への第一歩
リョウの提案により、俺たちは古代の宝を探すため、遺跡への旅を計画した。リョウは村にしばらく滞在し、遺跡の場所やそこに関する伝承を調べてくれた。村の長老も協力し、過去に伝わる話をいくつか教えてくれた。
「この遺跡は山の奥深くにあり、古くから“森の試練”と呼ばれている。試練を乗り越えた者だけが宝にたどり着けると伝えられているが、どんな試練が待ち受けているかは、誰も知らんのじゃ。」長老は、少し不安げに言った。
俺もアキラも、それを聞いて緊張感を感じたが、リョウは笑顔でこう言った。「大丈夫です。試練に立ち向かう準備はできています。そして、仲間がいれば乗り越えられるでしょう。」
出発の日がやってきた。村の人々に見送られながら、俺たちは遺跡のある山へと向かった。俺、アキラ、そしてリョウの三人の冒険が始まったのだ。
道中、リョウは俺たちに遺跡についての情報を教えてくれた。「遺跡は“精霊の森”と呼ばれる場所に隠されていると言われています。そこでは、普通の森とは違い、自然の力が強く働いているんです。」
「自然の力?」俺は興味津々で聞き返した。
「そうです。植物や動物だけでなく、土や水、風までもが意思を持っていると言われています。精霊の加護を受けることで、自然の力が試練として立ちはだかるのです。」
不思議な話だが、この異世界では何が起こっても不思議ではない。むしろ、自分の農業の力も、その精霊の力に何か共鳴するのではないかと、俺は密かに期待していた。
山道を進んでいくと、森の奥から柔らかい光が差し込み、辺りが少しずつ幻想的な雰囲気に包まれていった。鳥のさえずりもいつもとは違い、どこか神秘的だ。俺たちは言葉少なに、その光景を見つめながら足を進めた。
数時間後、ようやく精霊の森の入口にたどり着いた。そこには、木々が重なり合い、まるで自然が作り出した門のような形をしている。リョウが前に進み、深呼吸をして言った。
「ここが精霊の森の入り口です。この先には、まず“風の試練”が待っていると聞いています。」
「風の試練…?」アキラがつぶやく。
「はい。この森の風は、普通の風とは違うんです。強い意志を持っていて、進む者を拒むこともあるとか。」
俺たちは緊張しながらも、一歩ずつ森の中へ足を踏み入れた。すると、突然、強い風が吹き始め、俺たちの行く手を阻むように木々が揺れ始めた。まるで「ここを通るな」と言わんばかりに風が巻き上がる。
「これは…普通の風じゃないな。」俺は思わず身を縮めた。
リョウは落ち着いた様子で風に向かって語りかけるように言った。「精霊の風よ、我々はただ、この地に伝わる宝を探しに来ただけです。害意はありません。」
だが、風はますます強くなり、俺たちの足元に砂や葉が舞い上がってくる。進むどころか、立っていることさえ難しい状況になっていた。
「リオ! 何か方法はないか?」アキラが叫んだ。
俺は必死に考えた。この風に対抗するためには、自然の力と調和するしかないかもしれない。俺は無意識に土に手を触れ、心を落ち着けた。そして、農作業で培った感覚を研ぎ澄ませるようにして、周囲の自然と一体になろうとした。
すると、土からほんのわずかながら温かい感触が伝わってきた。まるで土が「落ち着いて」と言っているかのように感じられたのだ。その瞬間、風が少し弱まった気がした。
「もしかして、風が俺たちの気持ちを試しているのかもしれない。」俺は静かに言った。「ここで慌てず、自然に身を任せれば、道が開かれるかもしれない。」
リョウは微笑み、俺に頷いた。「その通りかもしれません。精霊の森は、訪れる者が自然と調和することを望んでいるのでしょう。」
俺たちはその場に座り、心を落ち着けた。風に逆らうのではなく、ただ風の流れを感じながら、身を委ねた。そして、次第に風が静まり、森の奥へと続く道が少しずつ見えてきた。
「やった…道が開けた!」アキラが喜びの声を上げた。
俺たちは慎重に立ち上がり、道を進んでいった。風の試練を乗り越えたことで、森が俺たちを受け入れてくれたような気がする。そして、俺たちはその先に待つ未知の試練に胸を躍らせながら、一歩ずつ進んでいった。
こうして、俺たちの冒険はまだ始まったばかりだ。この先にどんな試練が待っているのか、そして宝にたどり着くことができるのか。それでも、仲間たちと共に歩むこの道に、俺は何よりも充実感を感じていた。
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