第6話 ダンジョンの闇の中


 小麦アレルギーが判明してから、どんな食べ物でも口にするのが怖くて、あまり食べられない日々が続きました。


 迷宮ダンジョンに入り込んだ気分です。

 アレルギー迷宮ダンジョンをさまよう私の体重は、一気に5キロほど減りました。

 今までなら、どんなダイエットをしても減らなかった体重がそんなにも減ったならよろこぶところですが、その時の私には死へのカウントダウンに思えました。


   *

 

 三カ月たって、病院の受診日になりました。


 私の主治医は、割と若くたくましい感じの女性。赤紫色のスクラブ《白衣》を着たハンナ医師(仮名)です。


 口調もさばさばとしていて、若い割にベテランの雰囲気があります。

 もし、冒険者のランクが適用されるなら神官ヒーラーのSランク昇格間近なAランクくらいでしょうか? 


 頼れる姉貴分というポジションの気がします。



 いろいろこじらせて大変な私の話に、ハンナ先生は熱心に耳を傾けてくれました。


 そして、ひとつの提案をします。 


『ランさん、小麦の除去生活がだいぶつらいでしょう? QOL《生活の質》を上げるために、小麦の許容量キャパを調べる負荷テストをしてみませんか?』


負荷ふかテスト……?」


 テストと名のつくものは、ことごとく苦手なのですが、小麦アレルギーのテストとは今までの血液検査とは違うの??


 と、頭にはてなマークがいっぱい飛びました。

 ハンナ先生の目がキランと光り、自信ありげに宣言します。



『パンの実食です!』






 ――― は、なんですって!? 私を殺す気ですか!?




 かくして、レベルアップのために私の命がけの戦いが火ぶたを切ります。


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